第33話「あれから数ヶ月」
ほぼ毎日通っていたあのコンビニ。
中に入れなくて他のコンビニに寄ってしまう。
竜太はきっと拗ねるんだろうな。
でも中に入らなければまだそこに竜太が居る気がして。
竜太がいなくなったあの日からコンビニの前のポスターや
こんなにも季節は色の無い物だったのか。
楽しくない。
ただ辛い。
誰とも話したくない。
何もしたくない。
全て休みたい。
でも今までと何も変わらない日常を、何もなかったみたいな顔をして過ごす。
微笑む事は出来るけど、痛みはずっと消えない。
周りは普通に戻っていくし私もいつも通りを装って生きている。
友達とたわいも無い会話の最中「運命の人とか現れて欲しいよね」と言われた時、ああこうやって取り残されていくんだなと思った。
周りからしたら婚約してた幼なじみが死んだのは何ヶ月も前で、きっともう記憶にもないのかもしれない。
でも私はまだ渦中にいて何ヶ月も前から止まったまま、私の心は今も壊れたまま。
今でも毎朝、目を覚ますと竜太のいない世界なのかと思い、竜太のいない世界に実感がないまま夜は眠る。
そして私の周りから竜太の面影が少しずつ消えていく。
竜太が契約してた駐車場には知らない車が止まっていて。
泣きながら遺品整理をしたマンションにはもう新しい人が住んでいて。
風化されていく現実に違和感しかなくて誰にも何も言えなくなった。
【やる事があって良かった。忙しくしていれば思い出さないから】なんてのは全員に当てはまるわけじゃないんだなと思う。
やる事があろうが忙しくしてようが何をしていても竜太が死んだ事が自分の視界にシールドみたいにあって、それを通していつも世界を見ている。そんな感覚がある。
もっと早くお互いに関係を進めていれば良かったのか、もうそれすら分からない。
私が最後に竜太に触れた手のひらは温かかった。
そして次に触れた竜太の頬は冷たかった。
きっと一生この気持ちを持ったまま生きていくだろう。
私は今まで生きてきてあんなに真っ直ぐ堂々と生きた人を見た事がないし、きっとこれから先出会う事もないと思う。
人として、男性としても尊敬していたし生きている姿がとってもかっこよかった。
けど、もっともっとやりたい事もあっただろうし、もっともっと生きたかったはず。
竜太は線香花火みたいな生き方だった。
小さくて、
最後の最後まで力強く生きた。
私は生きているから竜太に恥じないように精一杯生きないと、そう思っている。
でもそれはもう少し先がいい。
「もし、いつか竜太が先に死んじゃったら、私は悲しくて寂しくて、めちゃくちゃ泣くよ。きっと何年も何年もずっと、」
私、竜太にそう言ったよね。
今はまだ受け止められない。
でも、きっと、多分、次のバレンタイン。
手作りチョコレートを作る頃には前を向けるように頑張るから。
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