破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

空月そらら

第1話 死後の世界? 悪役としての再出発

 目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは意外にも重厚な造りの天井だった。


 木造で、細かな装飾が施されている。

 

 ――どこだ、ここは?

 

 確か俺は……現代の日本で、病院のベッドに横になっていたはずだ。


 長年患っていた病がついに悪化し、医者から「長くはないでしょう」と宣告されて――それからどうなった?

 

 記憶をたどる。


 ゆっくり目を閉じ、鼻から空気を取り込む。


 ここは消毒液の匂いもしないし、ベッドの硬さもあの病院のものではない。


 いや、そもそも横たわっていない。


 どうやら俺は起き上がっているようだ。


 座席……? 揺れている。

 

 ……と、ここでようやく気づく。


 車輪のきしむ音。


 どうやら馬車に揺られているらしい。

 

 なんだこのファンタジー感。


 夢を見ているのか?


 そう思って周囲を見回すと、やたら可愛らしいメイド服を着た少女が目に入った。


 赤髪のショートヘア。


 小柄で華奢な体つきに、ちょっとそそられる。


 いや、こんな感想を抱いている場合じゃない。


 服装は明らかにヨーロッパ風というか、そんな雰囲気を漂わせている。

 

「お、お目覚めになりましたか? レオン様」

 

 レオン様……? 誰だそれは。

 

 でも、どうやらこの可愛いメイドは俺にそう呼びかけている。


 ということは、俺が「レオン」なのか?


 しかし、どうにも俺が知っている“俺”の名前ではない。


 そもそも日本人である“俺”とは全く違う。

 

 ただ、不思議とその名前を呼ばれても違和感がない自分がいる。


 まるで「それこそが俺の名前」という認識を、脳が勝手に受け入れつつあるような感覚。

 

 思わず、俺は目の前のメイド――赤髪ショートの少女をまじまじと見つめた。

 

「どうなさいましたか? 顔色が少し優れないように見えますが……。体調が悪いのでしょうか」

 

 たどたどしくも心配そうに問いかけてくる。

 

「……いや、大丈夫。ちょっと寝ぼけていただけだ」

 

 そう言うと、彼女は安堵した様子で微笑む。


 すると俺は、そのメイドの名前がふっと頭に浮かんできた。


 “ミオ”。


 え? なんで知ってるんだ? 初めて会ったはずなのに。

 

 だけど、この名前には聞き覚えがある。


 俺が生前好きだったRPGゲームに登場する、悪役貴族の専属メイド……それがミオだったような……?

 

「そろそろお屋敷に到着いたしますね。ご自宅に戻られたら、ゆっくり休まれるとよろしいかと」

 

 彼女の言葉を受け、馬車の窓の外を覗く。


 見渡す限り、広がるのは壮麗な庭園と、その先に続く大きな屋敷――。

 

 ――ああ、思い出してきた。


 どうやら、俺はゲームの世界に転生したらしい。


 そして、このレオンは、作中でも「悪役貴族」として酷い扱いを受けるキャラクターだったはず。

 

 その上、破滅ルートが確定していた。


 確か、ゲーム内の重要人物である“勇者”に執着心を抱き、最終的には破滅してしまうようなストーリー展開じゃなかったか?

 

 ――でもちょっと待って。


 それってバッドエンド一直線じゃん。


 馬車は、屋敷の正門を通過する。


 大きく開かれた鉄のゲート。


 両脇には甲冑姿の兵士が立っている。


 彼らは俺の姿を見ると敬礼するように頭を下げた。

 

 その光景を見て、俺の胸には複雑な思いが芽生える。


 「俺はこいつらの主なんだ」という実感が、じわじわと湧いてくる一方、ゲームの中では家族すらも俺を見捨てる展開だった。

 

 原作だと、このメイド、ミオにも見放されるんだよな。


 最後には「レオン様にはついていけません」みたいな台詞を吐かれて……。

 

 わかっていても、今こうして隣にいるミオはとても優しげだ。


 そして馬車が止まり、ミオが先に降りてから俺を促す。

 

「さあ、どうぞ。お怪我のないよう、手をお貸しいたします」

 

「……あ、ああ、ありがとう」

 

 差し出された手を借りて、俺は馬車から降り立つ。


 途端に見上げることになるのは、俺の“家”――というか、転生後の自宅。


 絢爛豪華と言って差し支えないほどの巨大な邸宅だ。


 石造りの外壁には彫刻があしらわれ、バルコニーには花が飾られている。

 

 厳かな雰囲気の玄関扉が開かれると、中からメイドたちがずらりと整列しているのが見えた。


 彼女たちは一斉に礼をして、俺を出迎える。

 

「お帰りなさいませ、レオン様」

 

 場違い感に圧倒されながらも、俺は軽く頷いてみせる。


 どう振る舞うべきか悩むが、悪役貴族とはいえ、ここでいきなり変な行動を取るわけにもいかないだろう。


 まだ状況をきちんと把握していないのだから。


 屋敷の中へ進むと、これまた豪華な内装。


 赤い絨毯が床一面に敷かれ、重々しいシャンデリアがきらめいている。


 壁には先祖代々の肖像画が飾られている……のだろうか。


 まさしく西洋の貴族の館といった雰囲気が漂う。

 

 何度も見回していると、ミオが一歩前に出て、控えめに言った。

 

「お部屋にご案内いたしますね。今夜は早めに休まれたほうがよろしいかと……」

 

「……そうだな。ちょっと頭の中が混乱してる。助かるよ」

 

 俺はそう答えながら、一旦は自室へ向かうことにする。


―――



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