君の声が、僕を呼ぶ
輝人
ただ、君の声だけが、僕を呼ぶ。
電車の窓に映る景色が流れていく。朝の通学ラッシュ、いつもと変わらないはずなのに、今日は少しだけ違う。
「おはよう」
スマホの画面には、華乃のメッセージが光っていた。
俺は思わず微笑んでしまう。昨日の夜、通話しているうちに寝落ちしてしまったけれど、華乃はそれを責めることなく、むしろ「私も眠くなってたよ」と優しく言ってくれた。
電車を降りて、学校に向かう途中、ふと考える。
『俺は、華乃のことをどれくらい好きなんだろう。』
昔から意識していた。気づけば、目で追っていた。
でも、高校が違う。電車も違う。普通なら、そこで終わっていたはずだ。
なのに、俺たちはまた繋がった。
あの日、華乃が学校で俺を待っていたこと。
「高中にいた時からずっと、深堀のことが好きだったの。」
その言葉を聞いた瞬間、時間が止まった気がした。
俺も、ずっと好きだった。
それなのに、俺はまだ伝えられていない。
「輝人?」
不意に聞こえた声に、心臓が跳ねる。
顔を上げると、そこに華乃がいた。
「え…なんで?」
「ふふ、ちょっとね。」
少し頬を染めながら笑う華乃に、胸が締めつけられる。
「会いたかった。」
その言葉が、気づけば口をついて出ていた。
華乃は、一瞬驚いたような顔をして、それから――
「私も。」
小さく、でも確かに微笑んだ。
電車が通り過ぎる音も、行き交う人の声も、今はもう聞こえない。
ただ、君の声だけが、僕を呼ぶ。
君の声が、僕を呼ぶ 輝人 @nog1_love
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