**「……ここは、どこだ？」**

目を覚ますと、そこは見たこともない美しい草原が広がっていた。青い空、柔らかな風、遠くには緑の森が広がっている。高橋ヒカルは呆然としながらも、すぐに状況を理解した。

「まさか……異世界転生？」

ヒカルは現実世界では引きこもりのニートだった。アニメやゲーム、ラノベに没頭し、現実での失敗や人間関係のストレスから完全に外界を遮断していた。そんな彼が、寝ている間に異世界に転生してしまったらしい。

「でも、なんで俺が……？」

彼は自分の体を確認する。現実世界でのぽっちゃりした体ではなく、引き締まった体になっている。肌もきれいで、髪もサラサラだ。

「まあ、とりあえず……ステータス画面を開け！」

彼はラノベやゲームの知識を活かし、心の中で叫んでみる。すると、目の前に半透明の画面が現れた。

---

**【ステータス画面】**

名前: 高橋ヒカル

年齢: 22歳

職業: 無職（元・引きこもり）

スキル: 楽園創造スキル（Lv.1）

能力値: すべて平均的

---

「楽園創造スキル……？ なんだそれ？」

ヒカルはスキルの説明を読む。

**【楽園創造スキル】**

自分の理想とする「楽園」を作り出すことができる。レベルが上がるほど、広範囲で複雑な創造が可能になる。

「……つまり、俺だけの理想郷を作れるってことか」

ヒカルは少し興奮する。現実世界では何もできなかったが、ここでは特別な力を持っている。彼は早速、スキルを使ってみることにした。

「よし、まずは家を作ろう」

彼は草原の一角を選び、心の中でイメージする。小さな木造の家、庭には畑、そして小さな池。現実世界では叶わなかった「のんびりとした生活」をイメージする。

すると、目の前の空間が歪み、彼のイメージした家が現れた。

「すげえ……！ 本当にできた！」

ヒカルは家の中に入る。中はシンプルだが、必要なものはすべて揃っている。ベッド、キッチン、テーブル……すべてが彼の理想通りだ。

「これなら、ここでの生活も悪くないな」

彼は外に出て、畑を耕し始める。楽園創造スキルを使えば、作物もすぐに育つ。彼はトマトやジャガイモを植え、池では魚を育てる。

「これで、食料には困らない」

ヒカルは満足そうに笑う。彼は現実世界でのストレスから解放され、異世界でのんびりとした生活を楽しみ始める。

---

**数日後**

ヒカルの生活は平和そのものだった。朝は畑仕事をし、昼は釣りをして、夜は家でゆっくりと過ごす。彼は現実世界では味わえなかった「充実感」を感じていた。

「まさか、俺がこんな風にのんびりできる日が来るとは……」

彼は池のそばに座り、釣り竿を手にしながらつぶやく。

しかし、その平和は長くは続かなかった。

---

**「助けて……！」**

突然、悲鳴のような声が聞こえる。ヒカルは驚いて立ち上がり、声の方向を見る。森の中から、エルフの少女が走ってくるのが見えた。彼女は傷つき、必死に逃げている。

「えっ、なに？ なにが起こってるの？」

ヒカルはパニックになるが、すぐに彼女を助けようと決意する。

「よし、とりあえず家に連れて行こう」

彼はエルフの少女を家に連れ込み、傷の手当てをする。彼女は疲れ果てており、すぐに眠りについた。

「……これからどうしよう」

ヒカルは戸惑いながらも、自分が異世界での冒険に巻き込まれたことを悟る。

「まあ、のんびりやってくか」

彼はそう言いながら、エルフの少女を見守るのだった。