時を売る男

マッスルアップだいすきマン

第1話 1時間の代償

佐藤亮は、深夜のコンビニの駐車場で車に乗り込んだ。今日も終電を逃し、タクシー代を節約するためにレンタカーを借りた。彼のスマホには、妻からの未読メッセージが10件以上並んでいる。

「また遅いね。子供が泣いてるよ。」

「いつまでこんな生活続けるの?」

「もう限界だよ、亮。」


亮はため息をつき、メッセージを読まずにスマホをポケットにしまった。彼は中小企業の営業マンで、毎日のように残業を強いられていた。給料は安く、ボーナスもカットされ、家賃と子供の教育費で貯金は底をついていた。


「どうすればいいんだ…」

彼はハンドルを握りながら、ぼんやりと前方を見つめた。その時、突然、助手席の窓がコンコンと叩かれた。


驚いて振り向くと、そこには黒いコートを着た痩せた男が立っていた。男は無表情で、暗い目をしていた。

「佐藤亮さんですね?」

男は亮の名前を呼び、窓越しに小さなスマホのようなデバイスを差し出した。


「これをどうぞ。あなたにぴったりのアプリです。」

亮は戸惑いながらも、なぜかそのデバイスを受け取ってしまった。

「えっ、待ってください!これは何ですか?」

しかし、男は何も答えず、暗闇に消えていった。


家に帰り、亮はそのデバイスをいじってみた。画面にはシンプルなアプリが一つだけインストールされていた。

**「Time Trader」**

アプリを開くと、次のようなメッセージが表示された。


**「あなたの時間を売りますか? 1時間=10,000円。」**


「冗談だろう…」

亮は苦笑したが、生活に追われていた彼は、つい「売る」をタップしてしまった。

すると、画面が赤く光り、次のメッセージが表示された。


**「取引完了。1時間を売却しました。代金は指定口座に振り込みました。」**


次の瞬間、亮のスマホに通知が届いた。

**「〇〇銀行より10,000円のお振り込みがありました。」**


「えっ…まさか…本当に?」

亮は驚きながらも、少しだけ希望を感じた。しかし、その直後、彼は急激な疲労感に襲われた。まるで1時間分の体力が一瞬で奪われたかのように。


「なんだこれ…」

彼は鏡を見た。目の下にはクマができ、髪の毛が少し白くなっているように見えた。


「これは…ただの偶然だよな?」

しかし、亮はそのアプリを消すことができなかった。生活が苦しい彼にとって、1時間で10,000円はあまりにも魅力的だった。


翌日、亮は再びアプリを開いた。

**「今日も時間を売りますか?」**

彼は迷わず「売る」をタップした。

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