第4話:砂漠に緑を! 畑作りへの第一歩

「領主さま、畑……ですか?」


 村人たちはまたしても困惑の表情を浮かべた。いや、無理もない。ここは砂漠、まともな土壌すらない土地なのだから。


「そうだ。水があるなら、草木だって育つはずだ」


 アルトはそう断言し、湖のほとりに立った。湖の誕生によって湿度がわずかに上がり、以前よりも風が柔らかくなっている。だが、それだけでは作物を育てるには不十分だ。


(問題は、土の質……このままじゃ植物は根を張れない)


 村の畑跡を見てみると、やせ細った砂と岩混じりの土が広がっている。これでは水を撒いても、作物どころか雑草すら生えないだろう。


「うーん……やっぱり土壌改良から始めるか」


 アルトは腕を組みながら考え込む。


 ◆◇◆


「なあ、村長。この辺りで昔、木が生えてた場所ってあるか?」


「む、昔ですか……? そういえば、北の岩場には、昔は少しだけ木々が生えていたと聞いたことがあります」


「よし、行ってみるか!」


 アルトは村の若者たちを引き連れ、北の岩場へ向かった。すると、そこにはわずかながら枯れた木の幹や、黒ずんだ土が残っていた。


「やっぱりな……昔はここに森があったんだ」


 アルトはその土を指でつまみ、確かめる。


「まだいける……この土、湖の水と混ぜれば使えそうだ」


 ◆◇◆


 村へ戻ったアルトは、さっそく土壌改良の作業を始めた。


「まずは、この岩場の土を湖の周辺に運ぶ!」


 村人たちがスコップや袋を使って土を運び、湖の近くに敷き詰める。そしてアルトが《水操作》で適度に湿らせ、微生物が繁殖しやすい環境を整える。


 さらに、近くに生えていたわずかな草を集めて腐らせ、肥料として混ぜ込む。


「これを繰り返せば……徐々に作物を育てられる土になるはずだ!」


 村人たちは最初こそ半信半疑だったが、次第に作業に熱中し始めた。


「領主さま、本当に植物が育つんですかね?」


「試しに、この種を蒔いてみよう」


 アルトが取り出したのは、持参していた干し果実の種だった。水を撒き、土に埋める。


「……さあ、どうなるか楽しみだな!」


 こうして、バルハ砂漠の大地に、初めて作物が植えられたのだった——。

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