第2話:砂漠に湖を作る!?

「うおおおおおっ! 本当に水が湧いたぞ!」


「信じられん……領主さまは奇跡を起こしたのか!?」


 村人たちは地面から染み出す水を見て歓声を上げた。乾ききった砂に染み込むことなく、しっかりと水たまりができている。


 アルトは額の汗を拭いながら、ゆっくりと立ち上がった。


(ふぅ……思ったより疲れるな。でも、これができるなら——)


 彼のスキル《水操作》は、単なる水の浄化ではなく、水を自由に操ることができる。さらに、水源を探知し、地中深くの水を引き上げることも可能だと分かった。


「領主さま! この水……飲んでもよろしいのでしょうか?」


 老人が恐る恐る尋ねる。村人たちは喉がカラカラなはずだが、恐れ多くて手を出せない様子だった。


 アルトは自信たっぷりに頷く。


「当然だ。俺が出した水なんだから、絶対に綺麗だぞ」


 そう言うと、アルト自身がまず手ですくって一口飲んでみせた。


「……うん。うまい!」


 その言葉を聞いて、村人たちは一斉に水に手を伸ばし、思い思いに飲み始めた。


「……ああっ! こんなに冷たくて、澄んだ水……!」


「まるで泉の水みたいだ!」


「本当に、こんな奇跡が……!」


 涙を流しながら水を飲む者、顔を洗う者、子どもを抱きしめながら笑う母親——その光景を見て、アルトは心の中でガッツポーズを取った。


(よし……! まずは第一歩だ)


 だが、ただ水を湧かせただけではダメだ。安定した水源を作り、土地を潤し、作物を育てなければいけない。


(そうなると……もっと大規模にやる必要があるな)


 アルトは地面に手をかざし、再び《水操作》のスキルを発動させる。


「次は……湖を作るぞ!」


「な、なんじゃと!?」


 村人たちが目を丸くする。


 ◆◇◆


 アルトはバルハ砂漠の地形をじっくり観察し、水が溜まりやすい窪地を探した。


(よし、あそこならいける)


 村から少し離れた場所に、自然のくぼみがあった。そこを利用すれば、水を溜めて湖を作ることができるかもしれない。


 アルトはその場に立ち、両手を広げた。


「《水操作》——解放!」


 彼の周囲の空気が震え、地下の水脈に繋がる感覚が広がる。そして——地面から水が勢いよく吹き出した!


「うおおおおおおおっ!?」


「す、すごい水の量じゃ!」


 まるで噴水のように水が湧き出し、くぼみに流れ込んでいく。透明な水はみるみるうちに溜まり、小さな池となった。


 アルトは満足そうに頷いた。


「うん、これを繰り返せば、ちゃんとした湖になるぞ!」


「り、領主さま……本当に湖を作るおつもりなのですか?」


「もちろんさ。水さえあれば、ここは砂漠じゃなくなる。草木を育て、食料を増やすこともできる。……それに、魚を飼うことだってな!」


「魚……?」


 村人たちはぽかんとした表情を浮かべる。


「そうだ。湖があれば魚を養殖できる。そうすれば食糧問題も解決できるし、交易の手段にもなる」


 このバルハ砂漠には海がない。当然、魚も手に入らない。だが——だからこそ、価値がある!


「俺はここを、魚が取れる砂漠のオアシスにする!」


 その宣言に、村人たちは息を呑んだ。


「……まさか、本当にそんなことが……?」


「いや、領主さまならやれるかもしれん!」


「うおおおおおっ!」


 村人たちの歓声が響く。


 アルトの挑戦は、まだ始まったばかりだ——。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る