おれたち柑橘系

おみそ

おれたち柑橘系

俺は蜜柑が好きで、蜜柑は俺を嫌っていた。


「お前、今俺を見てたよな?」

「あ? テメェこそ見てただろ?」


蜜柑は檸檬を嫌う、柑橘系同士当たり前なこと。

決まって殴り合いの喧嘩に発展、互いに無傷じゃ済まない。

同族嫌悪・共喰い、そんなもの人間なら当たり前だと思っていた。


──だが、例えばの話。

檸檬が林檎に化けたらどうだ?


「お前、今俺を見てたよな?」

「……あ、うん。見てたけど、気付いたのか?」


林檎が蜜柑を押し潰すだろう。

キュンっと甘酸っぱいミックスジュースみたいな青春がはじまる。

そして、3日後にはきっとこうだ。


「あいつら今日も一緒だな」

「ああ。そのせいか、段々と慣れてきたっていうか」

「凄味がなくなったっていうか」

「……良い具合に混ざってるというか」


──ミックスジュース! みてぇだろ?


だが、現実は──


「毎日、俺の事見てんじゃねぇ!」

「誰が見てっかよ! テメェの顔通り越して、そっちを見てたんだよ!」


所詮、柑橘系同士。

しかも──


「あ? 俺の事、見てたって? 何か付いてっか? ああ?」


夏蜜柑並みのヤツがそこにいるってな……


──俺は蜜柑が好きで蜜柑は俺を嫌い、その先にいた夏蜜柑に檸檬は好かれる……




(終)


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