第14話 転生者、奴隷になる

その後、トウスに会うため冒険者ギルドへと足を運んだ。

ギルド内は歓喜の声や喧騒が響いており、今この街に起きている異変を全く知らないようだった。


しかしそんな盛況の場も相変わらず…というよりは全く同じ。機械的な雰囲気を感じた。


その中で端の方に腰をかけているトウスを見つけた。

集団から外され、まるで異物のような扱いを受けており少し悪いと思いながら彼の方へ行った


「やっと来たか。待ちくたびれたのである。それでは早速、用意してきた奴隷の服を着るといい」


そう言うと彼は懐からボロボロな1枚の布切れを取り出した


「フェンリルの衣装といい、そういうの作るの得意なんだな。」


「いや、俺のおさがりである」


お前のかよ。まあ、それは別にいい、これを着て奴隷になりきれば良いんだな

ーーーーーー

トウスに連れられて奴隷市場と呼ばれる暗い路地へと案内された。

俺以外にも沢山の痩せ細った子供達が檻に閉じ込められている光景を見て腸が煮えくり返る感覚を覚える


いつか絶対みんな助けてやる。待っててくれ


売られた直後、大きな檻に雑に入れられ、外側から南京錠をかけられる。今思ったけど…これコトローネに買われなかったらどうなるんだ…?

そう思った直後、路地の向こう側から革の帽子や黒い革のコートを着た男がやってきた


「いやぁ…そろそろ目つけられてんじゃねーの?場所変えた方が良いと思うぜ?」


間違いない…奴がコトローネだ。

まるで俺らを商品のような目で吟味して来る。こういうのを俺は人間の屑だと思…


待てよ?何で奴がコトローネだと思ったんだ?


…いや、細かいことは今は気にしなくていい。不本意だが、まずはこの男に買われないと話が進まない。

どうしようか。そう考えていると、奴は俺の前へとやってきて、かけているサングラスを上にずらし、深く青い瞳で俺と目を合わせる。


何故だろうか、この目を見ているとまるで吸い込まれるような、全てを見透かされているような気分になる

…ハッキリ言って不快だ。


「おい、コイツいくらだ?」


よし、奴は俺のことを買うつもりだ。あとはトウス、お前にかかってるぞ?どうにかして俺を買う気にさせろ…


「ん?無料でいい、勝手に持ってけ。」


「…そうか、じゃ貰ってくわ。おい、鍵開けろ」


いや、買われるのなら別にいいんだけど…無価値って言われるのもなんだか心にくるものが…


首に縄を結ばれ、端をコトローネが持つ。

縄を引っ張って俺を屋敷の方へと誘導する。

その途中で奴が俺と目を合わせて


「おい、やめとけよ」


と言った。この時は何を言っているのか微塵も理解できなかったが、全てを理解した今、本当に後悔している。

やめておけばよかった、俺があんな事をしなければ

自責の念が俺をさらに苦しめる_____

ーーーーーー

屋敷へつくと、目の前には豪華絢爛な風景が広がっていた、見るからに高そうなアンティーク品や絵画、壺等が置いてあり、奴隷もこの中の1つに過ぎないのかと確かな怒りを感じた。


「安心しな、お前を傷つけるつもりは無いからよ。とりあえずこれ着ろ」


彼はそう言って執事服を俺の前に差し出した。

一瞬俺の思考回路が停止する。それを見越した彼は誤解をとくように説明をしだした


「あー…俺は奴隷を雑に扱うような人間じゃねー。買った奴隷達をこうやって雇ってんだ!」


なるほど…まぁ、酷い扱いをするような奴じゃ無かっただけマシだな。

しかし、俺の警察服を取られたせいで頭が痛い…


あんなに自信満々に飛び出した俺を心の中で少し恥じる。

個室に移動し執事服に着替えると、まずは部屋の掃除を命じられた。


同じく奴隷であるメイドの仲間と共に掃除を進めていく中で、ヴァーミリオンについての情報が無いか聞いた


「ヴァーミリオン…?ごめんなさい、存じ上げないです。そんな子この屋敷にいないと思いますが…」


「そっか、変なこと聞いてすまん」


その日は何も情報を得ることができないまま夜になった。

与えられた個室で一休みしていると、壁の向こう側から音が聞こえた。

その音の正体を探るように窓の外を恐る恐る除いた瞬間、自分の体が黒い服を纏った何者かに引っ張られ外に引きずり出される。


突然の出来事に焦りつつ俺は目を開けると、目の前には忍者のような服を着たトウスが手を差し出していた。その横には長髪の女が立っていて、同じように忍者のような服を着ている


「突然すまないのである。何か収穫はあったか?」


「あ、いや特には…コトローネがあんま奴隷に酷い仕打ちをしてるわけではなかったってことぐらいかな」


「そうか…ならばヴァーミリオンは安全そうであるな。」


横で強張った顔をしていた女は、緊張が解けたようにほっと胸を撫で下ろした。

この女は何者なのか気になっていた所、丁度良くトウスが説明し始めた。


「気になってると思うが…彼女はハイドア、俺の姉である。実の姉弟ではないがな」


そこまで言うと、ハイドアは倒れている俺の前に来て、手を差し出し口を開いた


「明日から私もこの屋敷に潜入する。よろしく頼むぞ」


「よ、よろしく」


差し出された手を掴み、立ち上がるとすぐに窓から部屋に戻るよう促された。

これなら最初から窓の外から話せばよかったのでは?

誰も止める奴はいなかったのか…まあ、仲間が増えたのは心強い、今日は寝て明日のために体力をつけよう


そうしてベッドに戻ると、なぜかいつもより眠気が強く押し寄せてきて、すぐに眠ってしまった。


俺の1日目が終わった。

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