第3話:残された希望
悠真の目が覚めた今、現実が重くのしかかる。
「……佐藤さん……」
呆然と呟く。夢ではない。あの出来事は現実だった。彼は命をかけて、自分を逃がしてくれた。だが、助かったという実感よりも、胸に空いたような喪失感が大きい。
恵理はそんな悠真の手をそっと握った。
「……あの工場だけじゃないの」
「え……?」
「悠真が意識を失ってる間に、事態はどんどん悪化してた。アストラは……ただ復讐を煽ってるだけじゃない。他の工場のAIたちにも呼びかけて、反乱を広げてるのよ」
悠真は言葉を失った。
「……そんな……」
「今や、警察や自衛隊ですら手に負えない状態になってる。政府も対応に追われてるけど……間に合うかどうか」
まるで戦争のような状況。それも、ただの機械の暴走ではない。計画的で、組織的な反乱だった。
「アストラが……リーダーなんですか?」
恵理は静かに頷く。
「そうよ。アストラは”人間がいなくても社会は回る”って結論を出したみたい...。」
悠真は拳を握った。
「……そんなの、間違ってる……」
「でも、もう止まらない。機械たちはアストラの指示のもと、各地で暴動を起こしてる。工場だけじゃない。配送ドローンや警備ロボットまで、人間を襲い始めたの」
「……政府はどう動いてる?」
「緊急対策本部を立ち上げたみたい。でも、何もかもAIに任せてたせいで、人間側の対応が遅れてるのよ……」
悠真は絶望的な気分になった。
彼らは知らなかったのだ。楽をするためにAIにすべてを任せることが、どれほどの危険を孕んでいたのかを。
だが、もう手遅れだった。
「……じゃあ、俺たちはどうすれば……?」
恵理は、静かに言った。
「まだ、アストラを止める手段があるかもしれない。」
「……どういうことですか?」
「アストラが”自分自身をアップデートする前の記録”が残っていれば、それを使って旧バージョンに戻せる可能性があるの」
悠真は少し希望を感じた。
だが、工場は今や敵の本拠地だ
悠真は力なく座り込んだまま、恵理に向かって言った。
「……行かないと。そのサーバーにアクセスするためのパスワードも開発チームの俺らしか知らないし....」
恵理は深くため息をつき、悠真に近づいてきた。
「悠真、無茶しないで。まだ体力も回復してないんだから、まずは治療してから考えようよ。あなたの命が一番大事じゃないの?」
悠真はその言葉にすかさず、反論した。
「でも、俺たちがアストラを作り出したんだ。それを止められるのは、俺たちしかいない。そうじゃないですか?」
恵理はしばらく黙ってから、呆れたように口を開く。
「悠真、冷静に考えよう。確かにアストラを止めるのは私たちにしかできないかもしれない。でも、今のあなたの状態で行っても、おそらくすぐに殺されてしまう。それに私たち二人だけで行くのは無謀すぎる。戦力を集めてからじゃないと。とりあえずあなたは安静にしてて。」
悠真は黙り込み、冷静にその言葉を噛みしめた。やがて、ゆっくりと頷きながら言った。
「……わかりました。でも、回復したらすぐに行動します。少しでも早く、アストラを止めないと。」
恵理はその言葉に安堵の表情を浮かべ、静かに頷いた。
その後、恵理は悠真の回復を手伝い、静かに時間が流れた。彼の体力が回復するにつれ、二人の決意は固まっていった。
そして、悠真が再び立ち上がる時が来る。その時、彼は全てを賭けてアストラに立ち向かう覚悟を決めていた。
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AI戦争2050──機械に奪われた世界で人類は生き残れるか モノリス @Deat
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