第25話 常世に逢瀬を重ねては
「もしもし。」レイちゃんが電話を始める。私たち三人は静かにレイちゃんの電話に耳を傾ける。
「もしもし、どうかなさいましたかな。」電話口の向こう側からは
「捜索届についてなんですが、少々お時間を貰っても?」
「そうか。ああ構わん。こんな老いぼれの時間なんざ腐るほどあるんだ、好きなだけ聞きたいことを聞くといい。」
「そうですか、では遠慮なく。まずあなたと、
「
そう答える声にはどこかもの悲しさを感じた...、気がする。
「ではなぜあなたがこのような捜索届を?」
「向こうの家がな、騒いでいたんだ。
「それはあなたの返答次第です。それで、いつごろからその
「そうだなぁ。大体、あっちの奴らが表立って騒ぎ始めたのが昨日あたりからだったが、それよりも前からそう言う噂はあった。大体1,2週間前だったかそんぐらいだ。そんで、儂の方でもできることがないかと言うことで捜索届を用意した。」
「そうですか。失礼を承知で申し上げますが、そのような不確定な情報を元に動くことはたとえ警察だとしても難しいです。」
「・・・それじゃあ捜索はしてくれないっつぅことか...。」その言葉は、電話口からでも落胆が垣間見える。
そして、レイちゃんが追撃するように言葉を放とうとしたその時、
「誰がそんなことを言いましたか?」と、レイちゃんから携帯を取り上げて、
「たとえ可能性だとしても、0%でないのならその行為に意味がないとは思いません。今はただの行方不明だとしても、一歩遅いだけで死すら可能性があります。俺たちができる範囲で、
その言葉を遮ろうとするレイちゃんを
「
「さすがに私も今回に関しては
「ぐぬう。」とついに観念したようで、首こそ縦に振らなかったものの死んだ目をしていた。ちゃんと自分の発言に責任を持たないとね。まあ今回でいい勉強になったでしょ。
「そう言ってくれるとは、ありがとう。感謝をしてもしつくせないな。ただまあ、特に情報もないままじゃあどうしようもできないだろう。儂もただでやってくれとは言わん。この街の中であれば、儂の名前で色々幅が聞くだろう。それに、街中の交通機関や施設も自由に使える。いいか、合言葉は『
「いいんですか、そんな。」
「ああ、構わんさ。大切な孫娘だからな。それに、うちの家も自由に使ってくれ。資料もあまりないが有るにはあるからな。
「・・・ご厚意に、感謝します。」
「いいさ。むしろこっちから感謝を述べさせてくれ。本当に、ありがとう。そう言えば、まだ名前すら申し上げていなかったか。私の名前は
「俺は
「
そう言って向こう側から電話が切られた。スマートフォンを半分放心状態のような
「それで、どうだったの。」と
「全面的に支援してくれるらしい。合言葉は『
「そうなのね。それにしても、いつもより生き生きしてないかしら?」
「・・・さあな。ただ、可能性って言うのに惹かれたかもな。」
「それで、これからどうします?まったくと言って情報がありませんが。」と
「そうだな。無作為に街中を探すのは効率が悪い。であれば、一旦は情報収集をしてみてもいいかもな。」と答える。すると、
「だったら、
「まあ、それ以外にはあまり情報収取もできなさそうだしな。図書館に行くにしろ何かしらのアタリは欲しいところだな。」と答えを返す。
「それは構わないが、どうやって行くんだい。調べた限り山間に家があるみたいだが、まさか歩きなんて言わないよな。」と嫌そうな目で訴えかけながら言ってきたので、
「まさか。ナビさえしてくれれば車を出そう。」と答えてやると少し目に生気を取り戻した。
「そうかそうか。であれば行こうじゃないか
「面白そうなものがあっても持って帰っちゃいけないよ、レイちゃん?」と威圧的に言う。もしかして過去火事場泥棒のようなことをしていたのか...?
「さすがにしないさ。持ち帰るのは脳に記録した情報だけで十分だよ。」と少ししょぼくれて答えたのを見て、小動物みたいだと思ってしまって内心ちょっと笑った。
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