梓佐
「ふあああ……ッ♡」「アッアぁ! あっっ♡」「二人共――イイわ――」三人の女が絡み合う。ビアンバーワルキューレ店長氷鷹小夜と澄川女学院生徒澄川静華と八坂庵の三人だ。
七瀬真理愛と山元桜が交際を始めた事であぶれた三人は、傷心した心を癒すべく性行為に及んでいた。
静華と庵がお互いをまさぐり合う。小夜はそれを励ましながら、二人の敏感な所を攻める。
「ンッ――あッ――ああっ!」「ああンッ!」二人が頂きに上り詰める――小夜の意識に静華と庵の意識が流れ込む。小夜の意識は飛びかけた。
静華は真理愛を、庵は桜を恋人にしたがっている。何かその助けになりそうな記憶は無いか――川の字になって寝る中で小夜は快楽の波に揺られながらも考えをまとめようとした。
両隣に並ぶ静華と庵は快楽に負け切った――はずだった。しかし小夜は見込み違いをしていた。二人は協力して小夜を弄び始めたのだ。
小夜は攻める方が得意だ――攻められるのは苦手だった。
「駄目よ――駄目――っ!!」一際激しく身体が痙攣する。
今度こそ小夜の意識は飛んだ。
* * *
「桜先輩をどうにかしてものにしたいっスねえ」
「私だって真理愛をどうにかしたいわ」
庵と静華は溜息をつきながら今後の事を話し合う。小夜と情事に溺れた一週間後、ビアンバーワルキューレでの事だ。
「庵ちゃん誰か良い人知らない?」
「真理愛先輩じゃなく他を当たろうって魂胆っスか? 静華先輩は恋多き人だと思ってたけど余りに節操がないんじゃ」
「違うわよ。真理愛と桜さんの両方に顔が効いて私たちの仲間になってくれそうな人よ。二人の共通の友人とか」
「いるっス! 梓佐先輩――西東梓佐先輩。――でも、どうするんスか?」
「共犯になってもらおうかなって。そう、それも良いわね。小夜さんにヒントを貰ったんだけど」言いながら静華にはおぼろげな計画が見えてくる。
「上手くいくかは五分五分だけど、やってみる価値は有るわ。庵ちゃんの願いもかなえられるかも」
「ウチは何をすれば良いんスか」
「桜さんの動画、撮ったって言ってたわよね。中等部のボスの件で」
「エグイやつっスけど。まさか公開しろって言うんじゃ――」
「そんなことしないわよ。でもボスの顔――中島直美は映ってるんでしょ? 脅しをかけれるかも知れない」
「何をひそひそ話してるの? 悪い企みでもしてる?」二人の声を聞き付けた小夜がやって来る。
「どうせ真理愛ちゃんと桜ちゃんをどうにかしたいって話でしょ」
「悪いですか? そんな事言うと注文してあげないですよ」
「それは困るなあ」さほど困った様子も見せずに小夜は言う。
「本当に注文しなくて良いんですか?」静華は揺さぶりをかけた。
「して下さい」小夜は真面目な顔になる。
「私たちを鼓舞してくれるようなのでお願いするっス」
「今の気分にあったお酒――いやノンアルコールカクテルね。ちょっとカクテル言葉の意味はずれるけど、ピンクレディなんかどう? 柔らかくて甘い味よ。モクテル――ノンアルで作るの大変だったんだから」
「じゃあそれで」
小夜はアルコールを飛ばしてハーブと香辛料をいれたドライジンを80ml、小瓶からグレナデンシロップを20ml、レモンジュースをティースプーン2杯、卵白を一個分、それに氷をシェイカーに入れて十分に振る。
二つのカクテルグラスに分けて注ぐとピンクレディが出来上がった。
赤い色が店の照明の中で映える。
「ピンクレディのカクテル言葉って何なんスか?」口を付けてその味に満足した庵が尋ねる。
「〝いつも美しく〟とか〝幸せをあなたに〟って意味よ」
「幸せを、ですか。これから幸運が訪れるみたいな意味ならあってますね。小夜さん流石」静華が納得したように言う。
「それで愛しのお姫様方をかっさらう方法は思いついたの?」
「言い方引っかかるけど、無い訳じゃないですよ。上手くいかなかったら慰めて下さいね、小夜さん」
「ハイハイ」
「二回言わなくて良いっス」庵が茶々を入れた。
「はい」小夜は一見しおらしく言った。
三人は笑う。カクテルグラスが照明を反射して輝いた。
* * *
「だから、真理愛の恋人の私を抱くと、どうして恋人の恋人だから真理愛も恋人って話になるんですか? 静華さま?」真理愛の恋人、山元桜は冷めきった目線で静華を睨む。
桜は澄川女学院の旧校舎で静華に押し倒されていた。バスケ特待生の桜の力でも押し返せないほど静華の力は強かった。静華は剣道部の部長でテストでも毎回学年1、2位を争う、学業も運動もトップクラスという、桜に言わせれば化け物だった。おまけに桜は中等部三年、静華は高等部二年、思春期の三歳差は大きかった。身長は桜が165cm、静華が168cm、体重も静華の方が3キロは重い。桜に勝ち目は無かった――だからといって唯々諾々と身体を許す気も無い。
「余裕でいられるのも今の内よ、桜」冷たい視線も意に介さず静華は桜の身体をまさぐり始める。制服の上着を脱がせると、ネクタイで桜の両手を縛った。
「前に同性愛は不毛って言ってたわね。その認識、改めさせてあげる」
真理愛とだってまだなのに――桜は無言で凌辱を受け入れる――何も感じなかった。ただ身体の上を機械の様に手が蠢いただけだ――。
しかし、少し経つと様子が変わってきた――くすぐったい、それが最初に感じた変化だった。静華に唇を奪われ、思わず胸が高鳴る。身体の奥に火が灯った様な熱がある。自覚するとそれは一揆の身体中に燃え広がった。静華の顔が桜の下半身に移動する。
女の部分に息を吹き掛けられ、桜は思わず鼻にかかった声を漏らしてしまった。
――やだ、まるで――桜は抵抗しようとしたが、静華は意に介さない。
静華の舌が桜の敏感な部分を捉えた。身体が跳ねる。
「桜、可愛いわ。私のものにしてあげる」足の間から上気した顔をのぞかせて静華が言う。桜は心臓が高鳴るのを感じた。
股間に顔をうずめると静華は桜を攻める。
桜は何度も絶頂に導かれた。頭が真っ白になる。初心な桜が経験豊かな静華に敵うはずも無かった。
仕上げとばかりに静華は桜の蜜で濡れた口でディープキスをしてくる。
快楽に呆然とした頭で、桜はそれを受け入れてしまっていた。
桜は敗けた。完全な敗北だった。
* * *
「で、私に中等部の聖母様と桜の間を引き裂けと言うんですか? 静華様」西東梓佐――桜の幼馴染みで、庵とも真理愛とも友人だった。背は156cm程、緩い癖の有る髪を肩まで伸ばし、クラスでも目立つ存在だった。校舎裏で二人は話す。
「そういう訳じゃないわよ、梓佐さん。むしろ二人の関係を深めて欲しいのだけれど」
「何を企んでるんですか」
「貴女にとっても良い事よ」
「庵の為に桜を諦めるんですか? 桜は私だけの――」梓佐は最後まで口にできなかった。目を見開く。梓佐の唇を静香が奪っていた。舌が差し込まれてくる。両手は抑えられていた。
頭がぼうっとしてくる。もっと味わっていたい――思わずそう思った時、唇は離れていた。
「可愛いわ。梓佐――桜さんとも、もっとこういうことしたいでしょう。言う事聞いてくれたら手伝ってあげる」静華はくっつきそうな位近い位置で、耳を犯してくる。
梓佐は混乱した。静華の考えが読めない。
「桜さんは真理愛を庇ってまずい状況になっているんでしょう。中島直美に脅されてる。私はそれを避けたい。庵さんの撮った動画で逆に直美を退かせる。桜さんにそれを納得させて欲しいのよ。梓佐さんから庵さんに頼んだ事にすれば、桜さんに貸しを作れるわ。それを生かせばいい」
「静香様は真理愛だけでなく桜も私もものにしたい――そういう事ですね」梓佐は呆れた。
「その代わり、貴女もみんなをものにできる。悪い話じゃないでしょう」
「私には荷が勝ちすぎますよ――眩暈がしそう」
「でも魅力的な提案でしょ」静華は屈託なく笑う。「貴女は桜さんを篭絡して庵さんを受け入れさせて。その上で真理愛と桜さんの中が進展しても、真理愛だけのものにはならない。独り占めできないのは嫌かもしれないけど」
「分かりましたよ――手に入れる事はできる。手が届かないよりはマシって事ですね」梓佐は言葉を区切る。
「でも桜を篭絡した時点で私が裏切って、逃げ出すかも知れない。その時はどうするんですか?」
「どうもできないわね。貴女を信じるしかないわ」
「穴だらけですね」
「私や庵ちゃんには魅力を感じない?」
「それは――」
「なら大丈夫ね」
「その自信が羨ましいです」
「上手くいったらこれ以上無いくらい可愛がってあげる。五人一緒に楽しみましょう」
「静華様が性欲お化けなのは分かりました。でも期待しないで下さいね」梓佐は身を振りほどくと、静華の横を駆け去った。胸の動悸が煩わしかった。
* * *
「真理愛――私、私――」山元桜は同級生で恋人の七瀬真理愛に膝を落として抱きついた。真理愛は慈愛に満ちた目で桜を愛おしむ。桜は身を挺して自分を中等部のボス中島直美から護ってくれたのだ。身も心も捧げるのは当然の事だと真理愛は思っていた。
「真理愛は私が汚れていても、私を受け入れてくれる?」
「言うまでも無いわ――桜」
桜は真理愛の胸元に顔をうずめていた。頭に当たる控え目な胸が愛しい。静華には同性愛は悪だと言ったが、本当は自分も真理愛とそういう仲になりたかったのだ。真理愛の部屋――澄川女学院の寮は相部屋だったが真理愛は一人だった――で抱き合っていた。
うん、抱き合ってるだけ――なにも問題ない。私は静華とは違う――桜は自分を納得させようとしたが、唇が真理愛の胸に伸びかけて、ハッと我に返った。真理愛の顔を見る。頬が赤く染まっていて、思わず食べてしまいたくなる。目を閉じている彼女を見ると、気付かれない様に口付けしたい衝動が沸き上がってきた。必死に自分にイケない事だと言い聞かせる。
「良いよ、桜――」真理愛の声に欲望を掻き立てられる。
「真理愛――」伸び上がってとうとう真理愛の唇を奪ってしまう。真理愛の口内に舌を侵入させる。脳が痺れる様な感覚に桜は酔った。このまま彼女を滅茶苦茶にしてしまいたい。犯してしまいたい。膝立ちから立ち上がった桜は腕の中にいる真理愛を壊れそうな位に力を入れて抱き締める。真理愛が身じろぐのも許さない。もどかしく制服に手を入れると、胸を掴んだ――真理愛がびくりと身を震わせた。興奮した桜は胸を思いきり揉んだ。左手は真理愛を抱き抱え、口付けしながら右手で真理愛の胸を乱暴する。
たっぷり胸を嬲った後、スカートの中に手を入れた。太腿を撫で上げる。奥の女の園を目がけて手を滑らせる、奥まった下着に触れると湿った感触に思わず吐息を漏らす。本格的に攻めようと中指を頂きに押し当てた――柔らかい感触の中に細い窪みを見つけ、押し込む。真理愛が鼻にかかった吐息を漏らす。もっと――桜が本格的に真理愛を蹂躙しようとした時、夕食の合図の鐘がなった。真理愛がびくりと身体を震わせた。思わず桜は身体を離してしまう。
「真理愛――行きましょ」真理愛と桜は制服を整える。桜は真理愛の手を握ると自分の恋路を邪魔した鐘の音に、思わず神様なんて大嫌いと呟く。神への呪いと真理愛を汚さずにすんだ安堵半分に二人は食堂へと歩き出した。
* * *
その日は結局それ以上の進展は無かった――桜は自分の部屋に戻るのがためらわれた。真理愛の事もだが、同室の西東梓佐に迫られたのが原因だった。自室での自慰行為を見られてから梓佐は桜に迫るようになっていた――梓佐が嫌いな訳では無いが、そういう目で彼女を見た事が無い。友人というだけで、恋愛対象じゃないと頭から思っている。真理愛に夢中な桜には彼女の思いは重荷だった。しかし部屋に帰らない訳にはいかない。しかし梓佐は桜の予想を超える展開を用意して待っていたのだった。
* * *
「何――これ」夜十時の就寝時間の鐘が鳴った後部屋に帰った桜は、思わず声を上げた――真理愛が居た――それだけでなく、梓佐、庵、静華までもが部屋に居た。
部屋の真ん中にテーブルが置かれ、菓子やジュースが並んでいる。
「梓佐、何なのこれ」
「パーティよ。皆で喜びを分かち合う為の。今日はその前祝」梓佐が言った。
「桜、貴女中島直美に脅されてるでしょう。それをどうにかできる事になったの。詳しい事は落ち着くまで伏せるけど、もう直美の件は心配しなくて良いわ」
「それを祝うんですか? この五人で。それにどうして脅されてるって――」
「ウチの情報網を舐めてもらったら困るっス。女学院のパパラッチを甘く見ないで欲しいっスね」庵が薄い胸に手を当てて自慢する。一眼レフカメラが揺れた。
「梓佐にも庵にも感謝しないとね――。それに桜、貴女の頑張りが無ければ真理愛も助けられなかったわ――」後ろから桜の肩に手を置いて静華が言った。
「静香先輩――」その手の優しさに、桜は感激した。
――静華の〝策〟が嵌まった瞬間だった。
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