【完結】転生林黛玉の憂鬱:死ぬ運命は変えられる?
栗パン
序章:紅楼夢、バグ発生!
第1話 林黛玉に転生!?
天から美しき少女が舞い降りた、
まるで、軽やかな雲が山から流れ出るように――
この歌、聞いたことあるような、ないような……
いや、そもそもこれって歌?それとも戯曲?
でも、そんなことはどうでもいい!
現実の問題は――
私、一晩寝たら、
どうやってわかったの?
簡単な話。
今、私は
目の前には「
「林のお嬢様、もうすぐ賈府に着きますよ。」
――え、私のこと林のお嬢様って呼んだ?!
ってことは、ここは『
私、
『紅楼夢』、細かく読んだことはないけど、授業で習ったことくらいはある。
確か……
え、ちょっと待って。7年後に死ぬ?!
17歳って、高校すら卒業してない年齢じゃん!?!?!?!?
いやいやいや、ちょっと待って、そんなのあまりにも可哀想すぎる!
突然、轎子の
「お嬢様、奥様が先ほどまでお待ちかねでした。ちょうどいいところにいらっしゃいましたね!」
――この展開、知ってる!
服の色からして、彼女たちは二等侍女。
つまり、これから登場する侍女たちこそ、本命!
ここから先、ちゃんと観察しなきゃ。
何せ、この世界は「身分社会」。侍女との関係次第で、生活の質が決まる!
そう考えていたその時、目の前に、一人の白髪の老婦人が現れた。
――来た!これは絶対に賈のご隠居様!つまり、林黛玉のお祖母様!
次の瞬間――
「まあ、なんとまあ、愛しき孫よ!」
と言いながら、おばあ様が私を抱きしめ、号泣し始めた。
……え、近い近い!!
「おぉぉぉお黛玉よ!母親が亡くなってさぞ寂しかったでしょう!あぁぁ、可哀想に!」
ちょっと待って、私、こういう場面で泣く演技できないんだけど!?
作り泣き?いや、どうしよう……
うん、決めた!
賈府、ぶっ壊してやる!
「お祖母様、ずっとお会いしたかったです!母も、最後までお祖母様のことを気にかけていました……
今、こうしてお会いできて、涙が止まりません!」
そう言って、私はご隠居様に思い切り抱きつき、エイエイと泣きまくった。
(戦況報告:名台詞を奪取!嬉しい!)
ご隠居様の涙はさらに加速し、後ろにいた3人のお嬢様たちは何も言えず待機状態になった。
よし、開幕戦は大成功!
私はそっとハンカチを取り出し、顔を覆いながら言った。
「お祖母様、もう泣かないで……うぅぅ……っ、ゴホッゴホッ……」
言い終わる前に、咳き込んでしまった。
OMG、このお嬢様、身体弱すぎでしょ!?
ただの演技泣きでここまで体調崩すなんて……
こうなったら、陰謀やら策略やらより、まずは体力づくりが最優先!
生き抜くために、健康第一!!!
「ハハハ!遅くなっちゃったわね、遠方からのお客様をお迎えできず申し訳ないわ!」突然、後院から銀鈴のような笑い声が響き渡った。
――来た!!!
我が推し!賈府の風云人物・
賈府の内務を完全掌握し、まるで天女のような美貌と、卓越した才覚を持つ女傑。
荣国府・宁国府を一手に仕切り、家中の誰もが彼女に一目置いている。
その上、抜群の社交術と鋭い洞察力、圧倒的な経営センスまで兼ね備えた最強の女性。
――美貌、才知、カリスマ、そして商才を兼ね備えた絶対的な風雲人物!
まさに、賈府の内政を仕切る女帝!この人に嫌われたら、私は確実に生きていけない……
いや、むしろ彼女を味方につければ、私、最強じゃない!?無敵!!!
……だが、彼女も若くして死ぬ運命。
はぁぁぁぁ、なんでこの作者は女性キャラの寿命をこんなに短く設定するのよ!?
でも、彼女と手を組めば、もしかして……一緒に死亡フラグを折れるかもしれない!?
賈のご隠居様は、笑いながら私を紹介した。
「こちらが
彼女は堂々と笑いながら、私をじっと見つめていた。
まるで、一目で相手の価値を見抜くかのように。
私は慎重に立ち上がり、両手を合わせ、深々と礼をした。
「お姉さま、お初にお目にかかります。どうぞよろしくお願いいたします。」
「まぁ、なんて美しい子なのかしら……やっと、噂の林のお嬢様に会えたわ!」
――えっ!?
えっ!?!?
え、今、褒められた??
褒められたよね??
内心、くるくると舞い踊るテンションMAXの私。
でも待て……
これは「私」じゃない、「
いやいやいや、今の私は
ああああああああ……
でも私、まだ自分の顔、見てない。
轎子の中で目覚めてから、一度も鏡を見てない!
私、今、どんな顔してるの!?
「どうりでご隠居様が愛しき孫なんて可愛がるわけね。でも、我が妹は本当に薄命で……こんなに若くして逝ってしまうなんて……」
――ちょ、縁起でもないこと言わないで!
「私は元気です!だから泣かないでください!」
私はご隠居様をすぐに慰めるように言った。
「そうだね、お前も泣かせるようなことを言わないの!」
「はいはい、ごめんなさいね、ご隠居様。」
「それで、妹はおいくつ?学校に通ったことは?普段どんな薬を飲んでるの?食べ物や服は足りてる?気に入らない侍女や婆やがいたら、私に言ってちょうだい。」
――おっと、これは重要な質問!
彼女は今、
ここで「特に困っていません」と答えるのは完全な機会損失!
ここは、ぐいっと懐に入り込むしかない!!!
私は反撃開始!
「お姉様がいてくださるなら、私は何も困りません!」
そう言って、私は思い切って
「お姉様、本当に綺麗ですね!」
「お姉様、すごくいい香りがします!」
「お姉様、お肌がすごくきれい!何を食べたらこんなに美しくなれるの!?黛玉も欲しいです!!」
――あら?
もしかして、今まで誰もこんな態度を取らなかった?
でも、今の私は違う!
私は「病弱キャラ」を捨てて、「愛嬌キャラ」に転生したのだ!!!
「あらまぁ、こんなに可愛い子だったなんて!」
「私の心までとろけそうだわ。こんなにお世辞を言われたのは初めてよ!明日、あなたのために特別なお菓子を用意してあげる!」
――やった!!
「本当ですか?やったぁ!じゃあ、明日もお姉様に会えますね?」
私があえて嬉しそうに言うと、
(戦況報告:計画通り。どうやらストーリーの流れが少し変わったみたい!)
次に待ち受けているのは……男主との対面!
原作の流れなら、ここから私は賈府の人々に順番に挨拶して回ることになる。
そして、王夫人からの食事の招待が来る頃、ついに男主が登場する――!
そして予想通り、登場したのは……
紫金の冠を頭に乗せた、超派手な美少年。
――いや、なにこのキャラ!?
こんなにキラッキラな出で立ちで登場する男主、今どきいる!?
私だったら、恥ずかしくて地面に穴掘って隠れるレベルなんですけど!
とりあえず、黙って観察することにした。
そして、
「このお嬢様、どこかで見たことがあるような……」
「ばかばかしい!いつお前が見たって言うのよ。」
「なんとなく親しみを感じる……まるで、長年の旧友と再会したような……」
賈のご隠居様、大喜び。
「あらまぁ、まぁまぁ、縁があるものねぇ!」
――いや、何このクッサい台詞!!!
どうしてこんなに典型的な「運命論」を堂々と言えるの!?!?!?
聞いてるこっちが恥ずかしいわ!!!
でも、まだまだ続く。
「あなたは、書は読めるのか?」
「少しだけ読んだことがあります。」
「あなたは、玉を持っているか?」
そう言って、宝玉は自分のペンダント――透き通った美しい玉を取り出して見せた。
――あ、来た、この場面!!!
ここで
すると、
まさかの衝撃行動!!
その結果、
――私は、絶対にこんな展開には進まない!
計画変更!私が進む道はこうだ――
「黛玉と名乗る以上、玉を持っていないはずがありません。でも、母が亡くなったとき、一緒に埋めましたわ。」
そう言って、私はそっとハンカチで顔を覆った。
――よし、完璧!
これなら、賈宝玉が暴走することもない!
そもそも、こいつ、私が一番嫌いなタイプの男主だし!
もう、神経すり減らすこと間違いなしの最悪なタイプ!!
私は絶対に彼のヒロインにはならない。
……というわけで。
私は自分の頬をつねってみた。
痛い。つまり、これは夢じゃない。
なら、ここで生き抜くしかない――
しっかり休んで、明日からは体力作りだ!
「お兄様、大事な玉、ちゃんと持っててね。さぁ、お祖母様と一緒にご飯を食べましょう~!」
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本作の執筆に込めた想いや今後の展開について、Noteにまとめました。
https://kakuyomu.jp/users/kuripumpkin/news/16818093094508748022
よろしければ、ぜひご覧ください!
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①『紅楼夢』について
『
物語には、美しくも儚い女性たちの運命、華やかな宴、詩作の喜び、家庭内の葛藤、世代間の対立といった多様な要素が織り込まれ、一つの壮大な絵巻を形成している。また、『紅楼夢』は「中国伝統文化の百科事典」とも称され、習俗・礼儀、階級制度、詩歌など、当時の社会文化が緻密に描写されている。中国文学の最高傑作の一つとして評価され、世界的にも広く知られる作品である。
しかし、本作に登場する女性たちの多くは、悲劇的な運命を辿ることになる。主人公・林黛玉もまた、その例外ではなかった。
②二等侍女の服装について
賈府は貴族の家系であり、多くの侍女が仕えていた。彼女たちの服装は、清朝の一般女性の服飾文化を反映しており、さらに厳格な等級制度に基づいて区別されていた。
例えば、二等侍女の衣装について、
また、清代において「紅(赤)」は富裕層が好んで用いる色であり、庶民が日常的に身に着けることはほとんどなかった。一般的には、正月などの特別な機会にのみ使用される色であった。そのため、賈府の侍女が赤い衣服を身に着けていたことは、彼女たちが高貴な家柄に仕える者であることを示す、一種の身分的象徴でもあった。
このため、主人公が『紅楼夢』の世界に転生した際、相手の姓名を知らずとも、服装を見るだけで侍女の身分を即座に判断することができたのである。
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後書き(04.08):
この作品、本日より「ドラゴンノベルス小説コンテスト」にエントリーさせていただきました🐉
応援の☆や♡、そして感想コメント・文字ありレビューなど、いただけたら飛び上がるほど嬉しいです!
無名の書き手ゆえ、「読者選考ランキング」が本当に命綱なんです!(切実)
皆さんのひと押しひとことが、何よりの力になります。
これからも楽しんでもらえるように全力で書いていきますので、どうか応援よろしくお願いします!
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