第6話 運命をこえて君と生きる
目の前の桜は、震えていた。
「私たち……本当に100年前に生きていたんだね……」
「……ああ」
俺たちは歴史資料館で見つけた写真と、記憶の断片をもとに、前世の悲劇を思い出した。
俺たちは100年前に出会い、愛し合い、そして――炎の中で死んだ。
桜の手をぎゅっと握る。
「今度こそ……俺はお前を失わない」
「……陽向くん」
桜の目に涙が溜まる。
「でも……もしまた、運命が同じように私たちを引き裂こうとしたら……?」
「そんなもの、ぶっ壊してやる」
俺は強く言い切った。
「100年前の俺たちは、運命に従うしかなかった。でも、今の俺たちは違う。俺たちは今を生きてるんだ。だから、何が起こっても、今度こそ一緒に未来を掴む」
桜はしばらく俺を見つめ、それから泣き笑いの表情で頷いた。
「……うん」
それから数日。
俺たちは普通の高校生として、何気ない日常を過ごしていた。
だけど、どこか胸の奥に不安があった。
100年前、俺たちは春に出会い、春に再会し、そして春に命を落とした。
もしまた、この春に何かが起こるとしたら――?
そんな不安を胸に抱えながらも、俺たちはお互いの存在を確かめるように、一緒に過ごしていた。
3. 「君の命が、危ないかもしれない」
春休みが近づいたある日。
俺は町の古い新聞記事を探していた。
100年前に起きた火災について、詳しく知るために。
そして、ある記事を見つけた。
「1931年3月15日、未明に起きた大火災で、多くの命が失われた。」
その中に、俺と桜の名前があった。
だが、そこに書かれていたのは――。
「この火災は偶然ではなく、ある放火事件が原因だった可能性が高い」
放火――?
ただの事故じゃなかった?
嫌な予感がして、俺はさらに調べる。
すると、もう一つの記事を見つけた。
「火災で命を落としたのは、若い男女二人――町を出ようとしていた二人だった。」
俺たちは、100年前――意図的に殺されたのか?
そんな疑問が浮かぶ中、スマホが震えた。
桜からだった。
「陽向くん、今どこ? ちょっと話したいことがあるの」
俺は胸騒ぎを覚えながら、すぐに桜の元へ向かった。
待ち合わせ場所の公園。
桜は、静かに佇んでいた。
「……陽向くん」
「どうした?」
桜は少し迷った後、こう言った。
「……最近、誰かに見られてる気がするの」
「……!」
「気のせいかなって思ったんだけど、家の近くとか、帰り道とか……誰かの視線を感じるの」
俺の背筋が寒くなった。
100年前の火災は、ただの事故じゃなかった。
もし、今も俺たちを狙う何かがあるとしたら――?
「桜、しばらく一人にならないでくれ」
「え?」
「どこに行くにも俺が一緒にいる。何があっても、お前を守る」
「……陽向くん」
桜は不安げに俺の手を握りしめた。
「……怖いよ」
俺は、強く抱きしめた。
「大丈夫。今度こそ、何も奪わせない」
100年前の悲劇を、絶対に繰り返させない。
この春を乗り越えて、俺たちは生きる。
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