第32話 お風呂と成績の関係?

「私は勉強してるよ!」


 そう宣言して、舞白は一人でお風呂へと向かわせた。必ず二人で入らなきゃいけないわけじゃないし。舞白は素直に言うことを聞いてくれたように見えたが、一度戻ってきて捨て台詞を言ってきた。



「千鶴のケチ! フケツ! 良い匂いさせやがって、どこの誰とお風呂に入ってきたんだかっ!!」


 舞白はドスンドスンと音を立てて、風呂へと歩いていった。


 ……ケチってなんだろうな。

 一緒にお風呂に入ったら、太っ腹って呼ばれたりするのかな?


 別になにかをあげるわけでもないから、ケチっていうのは心外だな。お風呂に入っているわけだから不潔でも無いし。どこの誰って、一番の友達だから怒られるいわれも無いのだけれども。


 そんなことを言い返す前に、舞白はお風呂に行っちゃうし。まぁいいか。



 この前までは別々にお風呂入ってたくせに、なんだかいきなり懐いたというか。好かれたというか……?


 それはとても嬉しいことなんだけれども、今日は早く勉強がしたいのだ。

 せっかく彩芽がやってくれたが効くのかどうかも確かめたいし。私は友達を信じてるから。


 机に向かって教科書を開く。

 何か変わって欲しいって願うけれども、あまり変化は見られなさそう。


 いや、教科書を見てると、なんだか直接頭に入ってくる気がする。……かも?

 なんだか頭の動きが良い。……かも?


 いや、やっぱり、お風呂入っただけじゃ、なにも変わらないだろう。そのあとの勉強がやっぱり重要なわけで。そのあたりを彩芽に確認しないと、私の成績は良くならないぞ……。


 もう少し勉強方法を彩芽に教えてもらいたかったんだけれども、それはまた明日かな?

 また、彩芽とお風呂に入らないといけないと思うと、少し憂鬱な気もするけれども。しょうがないかー。


 それにしても、なんであんなに必要に洗いっこをしようって言ってきたんだろうな。

 私の身体を洗いたかったのか……?


 なんて。

 そんなことはあるわけないし。寮の決まりとか言ってた気がするけれども……。


 彩芽の身体は、舞白と違って女の子らしくて。洗いっこをするっていうことで考えれば、舞白とお風呂に入るよりも、彩芽とお風呂に入る方が楽しいのかもしれない。凹凸がある方が洗い甲斐が出てくる気もするし……。


 良い身体だったなー……。



 ぼーっと考えていると、舞白がすぐにお風呂から上がったようだった。


「お姉ちゃん! なにぼーっとしてるのっ! 私とのお風呂を断ったわけなんだから、ちゃんと勉強しててよっ!」


 舞白は身体にバスタオルを巻き付けた状態で走ってやってきた。身体もろくに拭かないで、すぐに来たのだろう。身体からは水滴がこぼれて、床に滴り落ちている。髪もビシャビシャで、水滴の落ち方がひどい。


「舞白っ! ちゃんと拭きなさいよっ! 床ビシャビシャになるでしょっ!」


「だって、お姉ちゃんが一緒にお風呂入ってくれないんだもん!!」


 駄々をこねる舞白。一緒にお風呂に入るって、そんなに大事なのだろうか……?

 舞白も成績が良いわけだし、彩芽と共通してお風呂を大事にしているということは、もしかすると本当に成績上昇に効果があるのかもしれない?

 私は、舞白に駆け寄って、身体に巻いてあるバスタオルをスルリと取る。



「なっ! なにするのよっ!! エッチ!!」


「舞白、お風呂って効果あるのかな? ちょっと、教えて欲しい!」


 舞白は、身体をくねらせて大事な部分を隠しているようだった。別に今更な感じはあるけれども、なんで隠すんだろ?


「なにそれ、お風呂が勉強に効果があるかって?! なによそれっ!?」


「そうそう。気になっちゃったの! 今聞かないと、私すぐ忘れちゃうから、今すぐ教えて欲しいの!」



 舞白は私の手からバスタオルを取ろうとするけれども、私がそれを阻止する。


「そんな話、身体拭いてからで、いいじゃん!?」


「もう床ビショビショだから、関係ないよ! お風呂入って成績上がる秘密が何かあるんでしょ!? 隠さないで教えてよ!」


 なおも、舞白はバスタオルを引っ張ってくる。


「隠すよ! 恥ずかしいじゃん!」


「隠さないでよ! 私と舞白の中でしょ!?」


「えっ……と、うん……」


 急に舞白が大人しくなって、バスタオルを取るのをやめ、身体も隠すのをやめた。


「お姉ちゃんと、私の仲だからね。隠さないよ……」


 舞白はやっと教えてくれる気になったらしい。

 これで私の成績も上がること間違いなし!



「ちょっと恥ずかしいけど……、お姉ちゃんなら、全部見て良いよ……」


 舞白は、手を広げてこちらへ身体を向けてきた。

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