第30話 洗いっこ
彩芽の部屋にて、二人でお風呂に入っている。
ただそれだけなんだけれども。彩芽の様子が終始オカシイ気がするんだよね。
「まだ全然洗っていないですよ、千鶴さん。身体を綺麗にしないとですよ?」
私の腕に絡みついてきて、自分の身体を擦り付けてくる。
身体を洗うためのタオルはないと言われたけれども、手で洗うとかではなくて身体を使って洗ってくるのだ。使っているボディソープが良いのか、彩芽の肌質が良いのか。ヌルヌルと私の腕を摩擦なく滑っていく。
「どうですか?」
「んー……。どうですかって、言われても……」
彩芽は恥ずかしそうにはにかみながら、洗う腕をを持ち替える。まずは腕から重点的にということなのだろう。私を綺麗にすることが、そんなに楽しいのだろうか……?
「腕が綺麗になったら、今度は胸周り、お腹周りを洗いましょう!」
「さすがに自分で洗えますわ?……と言いますか、そんなに熱心に洗う必要があるんでしたっけ?」
「もちろんですよ! 綺麗にならないと、お勉強に身が入りませんわ!」
「本当に、そうなんです……?」
勉強ができる彩芽に言われてしまったら、信じるしかないのだけれども。
今まで、部屋に帰ってからこんなに熱心に身体を洗ったことは無いわけだし。これが重要なのかもしれないけど……。本当に効果があるのかな……。
相変わらずノリノリな彩芽は、私の後ろに回り込んで来る。
「それじゃあ、背中の方から洗っていきますね」
ヌルヌルした手で背中をさすってくる。なんだかくすぐったいし。うぅー……。
「もう少し、大胆に行きましょうか?」
彩芽はヌルヌルと手を前の方へと回しくるとともに、背中に身体をピタッと着けてくる。
柔らかな胸が背中に当たる。舞白のそれとは比べ物にならないくらいの大きさだ。隠れ巨乳っていうやつだろう。
そのままギュッと抱き着いてくる。
「いやいや、彩芽さん。どうしてそんなに絡んで来るのですか……?」
「千鶴さんは、おそらく洗い方が雑なのですわ。もう少しお淑やかに洗わないとですわよ? ゆっくりと丁寧に……」
そう言いながら私の身体を隅から隅まで、ゆっくりと撫でていく。まるで、ナメクジが這いまわるような。そんな感触がする気がする。
「いいっ! どこに手をやってるんですかっ!?」
「しっかり全部洗わないとですわよ? 身体全体を洗ってこそ、ですわ……。綺麗にすればするほど……。盛り上がりますわよね……」
彩芽は、私の肩に顔を置いて耳元で囁いてくる。
「いい身体ですわ……。もっと……」
うぅー、くすぐったいー……。なんで私ばっかりー……。
もう少し、舞白とお風呂に入っているときには、楽しい雰囲気だったと思うんだけどな。
あっ。そうか。
舞白といるときは、あっちもやり返してきてたから、良かったのかもしれない。
やっぱり、一方的にやられているのは、私の性には合わないのよね。
彩芽には、お嬢様として接してきたけれども、お風呂の中でくらいは羽目を外しても良いですよね。
肩に乗る彩芽の顔。首を回して耳の近くに口を近付けて、私も言い返す。
「彩芽さん。洗いっこをすると言っていましたよね? そろそろ私が洗って差し上げますわ……」
私の提案に、彩芽はハッとした顔をした。
「いえいえ、私が千鶴さんを洗いたいですわ。千鶴さんの身体を綺麗にしないと……」
「綺麗にするのが良いのであれば、彩芽さんもしないとですわ! さぁ、遠慮なさらず!」
抱きつかれ腕をすり抜けて、すぐさま後ろへと回り込み、彩芽がやっていたようにギュッと抱きしめる。少し汗をかいているのか、ヌルりと滑って肌が触れあった。
私の冷えた身体が、彩芽の背中に吸い付く。
「……ひゃいっ」
「ふふふ、彩芽さん。綺麗好きな彩芽さんのことだから、自分が綺麗にされることも好きでしょう?戻難信してね?」
今から教えを乞う相手なのだけれども、多少の無礼はご愛敬でしょ。
「彩芽さん、タオルなんてなくてもいいですわよね? 手で洗う方が隅々まで洗えるんでわよね?」
私はボディソープで、ヌルヌルにした手を彩芽の身体に這わせる。
散々やられたから、やり返してやるんだから。ゆっくりと、隅から隅まで手を這わせる。ヌルヌルと。
大きな胸も、その膨らみが身体と接する部分。そこにも汚れが溜まるもの。……私には無縁だけれども。
肉付きの良い太ももにも。その間にも汚れが溜まるもの。見えない内側こそ、良く洗う必要があるというもの。ふふふー。
「……うぅーー」
彩芽がらしくない声を出している。
私にやっていたように、妹を洗うっていうことしかしていないのかもしれない。やり返されたことがないんだろうな。
彩芽は打たれ弱いんだな。ふふ。
これで頭がすっきりして、勉強ができるようになるはず。
もしかすると、彩芽がやっていたように、洗ってあげる側になる方が勉強できるようになるかもだしね。
もっともっと洗ってあげよう。
「……ちょ、ちょっと、そんなところまでーっ!」
「うふふふ、これも勉強のためですわ!」
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