春系女騎士と冬系騎士の400字

もも@はりか

花冠

 ルーガンは生まれたときからある予言を受けている。


 ――お前はいずれ、父である国王を裏切るだろう。


 国王が愛人に産ませた子であるルーガンは、その予言もあってか国王に疎まれて育った。だから、感情を押し殺し、表情に乏しく不必要なことは何も話さない。


 文字通り空に浮かぶ空中庭園。ルーガンは名前も知らない美しい白い花をその蒼い瞳で静かに見つめていた。自然の美しさだけは自分を癒やしてくれる。

 すると、


「ルーガン様!」


 空から鈴を転がしたような声が聞こえた。


 顔をあげると、白金の髪を振り乱して、飛竜に乗った女騎士が笑顔でこちらの方へ降りてくるのを見た。


「ここにいらしたんですね!」


 王国第一の騎士の娘、シスカ。王に選ばれた女騎士でもある。ルーガンは無表情に彼女を見て脇にずれた。

 女騎士と飛竜は無事着地する。白い花がシスカの周りに舞い散った。彼女は懐から何かを取り出した。


「いいものあげます」


 白い花でできた花冠。戸惑っていると、シスカはルーガンの黒い髪に花冠を被せた。


「かわいい!」

「……何をやってるんだ」


 シスカはルーガンの調子を崩す。本当に困った娘だ。

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