第9話 3年10組の教室2

ガラッ

私はいったん出た教室に戻った。


「平松!」

「愛里ちゃん」

「愛里ちゃん」

3人が私の方に振り向いた。

「平松、帰れって言ったよな!」

高橋先輩が冷たく言った。

「まって、私、愛里ちゃんにいて欲しい。」

湖桃先輩そう言ってくれたから、私も残る事が出来た。

「平松、残ってても気持ちのいい話じゃないぞ。」

私は黙ってうなずいた。


「梶、おまえ湖桃のこと守れないなら、別れろよ。」

高橋先輩の衝撃の一言だった。

でも...

「私もそう思います。梶先輩が湖桃先輩を悲しませてるように見えます。」

「ん?おまえ梶と湖桃別れさして自分が梶と付き合おうとか思ってないか?」

「高橋先輩。私、怒りますよ!」

「愛里ちゃん、それでも私は浩平が好きなの。」

湖桃先輩が祈るようにつぶやいた。

「湖桃先輩...」

「どうして、梶先輩は、湖桃先輩を守らないんですか?!」

梶先輩は黙ってうつむくだけだった。

「こいつ、自分が傷つきたくないだけなんだよ。」

「誰にも、嫌われたくないんだよ。」

友達とは思えない冷たい言葉だった。

「だから、誰に対しても怒れないんだよ。」

高橋先輩の言葉に湖桃先輩は必死に反論した。

「でも、私の机に落書きされたとき、落書きした人を怒鳴ってくれました!」

「あれで、怒鳴るのが怖くなったんだよな?梶は。」

「僕は...大地や愛里ちゃんのように人を怒鳴れないんだ。」

「怒鳴らない...それは、梶先輩のいいところだと思っています。」

「そんな梶先輩だから私も好きになりました。」

「でも、違うよな。」

高橋先輩はこれでもかっていうほど、梶先輩を追い詰める...

「湖桃をかばうと、さらに湖桃がいじめられる。」

「だからって、湖桃をいじめてる奴と、なかよくするか?!」

「高橋先輩、もしかして湖桃先輩のこと好きなんですか?」

「恋愛感情はないけど、ほっとけないだろ!」

胡桃先輩は、泣きながら、

「今のままでいいんです。二人でいる時の浩平は、本当に優しいんです。」

「湖桃...別れよう...」

梶先輩がぼそっと言った。

「浩平!どうして?私は今のままでいいのよ!」

湖桃先輩は半狂乱していた。

「悪い...そういうことだから、もう、送ってやれない。」

梶先輩は湖桃先輩に背をむけた。

「大地、湖桃の事、頼んでいいか?」

「わかった。」

「平松、帰るぞ!」

高橋先輩が私のことを呼んだけど、

「私、梶先輩といます。」

「そうか。平松、梶の事、頼んだぞ。」

高橋先輩は湖桃先輩を連れて帰っていった。


教室には、私と梶先輩だけになった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る