君の香りに溺れて
青藍
「先輩は、僕のすべて」
「悠真くん、今日もいい匂いがするねぇ…♡」
耳元で囁かれた瞬間、背筋にゾクリとした感覚が走る。
僕、浅倉悠真は、ごく普通の高校二年生だ。どこにでもいるような、目立たない男子生徒。そんな僕には、とんでもなく美人で、スタイル抜群で、おまけにヤンデレ気質な先輩彼女がいる。
彼女の名前は篠宮葵。
三年生で、生徒会の副会長。大人びた雰囲気を持ち、学校中の男子が憧れるような女性だ。長い黒髪に、整った顔立ち。誰にでも優しく、気品に満ちたお姉さん系。
……ただし、僕にだけは別の顔を見せる。
「もう、今日は全然会えなかったんだから…ねぇ、ちょっとだけいいでしょ?」
廊下の隅、誰もいない場所で、彼女はふわりと僕を抱きしめた。ほんのり甘い香水と、彼女自身の香りが混ざった匂いが僕を包み込む。
「ちょ、ちょっと、先輩!学校でそんな…!」
「んふふ、悠真くんが悪いんだよ?こんなにいい匂いするから…我慢できなくなっちゃうじゃない♡」
僕の首筋に顔をうずめ、スンスンと深く息を吸う。
「ん~…やっぱり好き…悠真くんの匂い、大好き…♡」
うっとりとした目で僕を見上げながら、指を絡め取るように僕の手を握る。
「ねぇ…今日、うちに来ない?」
「えっ…」
「悠真くんの匂い、もっといっぱい感じたいなぁ…♡」
甘く囁く声が耳をくすぐる。こんなの、逃げられるはずがない。
篠宮先輩の家は、学校から少し離れた高級マンションの最上階にある。
「ね、もっとこっち来て?」
僕は、彼女の部屋のソファに座らされていた。だけど、その横には先輩がぴったりとくっついて離れない。
「そんなに怖がらなくていいんだよ? ほら、お姉さんが優しくしてあげるから…♡」
耳元で囁かれながら、彼女の指が僕の頬をなぞる。
「悠真くんのこと、誰よりも好きだよ。誰にも渡さないからね。」
その言葉に、背筋が凍る。甘いのに、どこか狂気じみた響きがある。
「ねぇ、悠真くん……」
先輩は僕の首筋にそっと鼻を寄せ、また深く息を吸い込む。
「ん~…♡ 幸せ……♡ もう、このままずっと一緒にいたいなぁ。」
「……。」
「ねぇ、悠真くん? ずっと、一緒にいようね?」
ゆっくりと僕の顎を持ち上げ、その瞳が僕を逃がさないように絡め取る。
「もし…悠真くんが、どこかに行こうとしたら…?」
先輩の手が、僕の肩をそっと撫でる。
「私、きっと耐えられないなぁ……」
その声が、あまりにも甘くて、そして、怖い。
「だからね、悠真くん。どこにも行かないで?」
僕の耳元で、彼女はゆっくりと囁いた。
「ずっと、ずっと…私のものでいてね?」
そして、先輩は微笑んだ。
まるで、僕が逃げることなんて最初から許されていないかのように。
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