2025/2/26 上り坂のダブル幽霊と自由への渇望

 本日の夢はどういうわけか、自分の体ではなかった。

 私は会社の先輩らしき人物が運転する車で山道を上っているのだが、視点である「私」は普段の自分と違う男性の姿であったのだ。

 運転している人物も、私の勤め先の先輩や上司ではなかったはずである。イマイチ顔も声もよく覚えてはないが、夢の中の私は彼を確かに「先輩」だと認識していた。

 話を戻そう。

 とにかく、私は彼と一緒に蛇行しまくる山道を車で上っていた。忘年会で使用する旅館だったかホテルだったかが山の上にあるから、その下調べと挨拶に向かうためである。

 山道といってもちゃんとセンターラインのあるかなり大きい道で、どこぞの自動車メーカーがCMで使っても不思議ではないくらいには景色も良い。窓外の緑が明るかったので、時間は真昼間だったはずである。

 夢ゆえにどういう話の流れだったかは定かではないが、道中で件の先輩とこの山道は死亡事故がやたら多いという話になった。

 見通しも良いのに不思議だなぁ、と二人して話していると急に車が大きくバランスを崩して対向車線にまではみ出した。

 幸い車の少ない平日(?)だったので、特に他の車とぶつかることもなかったが、事故まっしぐらの軌道である。

 ギョッとした私は、そこで窓の外に女性が一人歩いているのに気がついた。空を見上げ、山肌ギリギリのところを足も上げずにスゥッと滑るように進んでいるのである。

 後姿しか見えなかったし一瞬で通りすぎてしまったが、一目見て私はその人が「生きている人ではない」と気がついた。そして、夢の中の私はその人が「自分の頭を探している」と感じたのである。ちゃんと彼女に頭はあったはずなのに、不思議なこともあるものだ。そう感じた理由はわからない。夢の中なので、何か天啓的なものが降って来たのかもしれない。


 夢ゆえ車内での詳しい会話は覚えていないが、特にその女性については私も先輩も触れず、さらに車は山道を進んでいく。

 すると、しばらくして再びさっきと同じことが起こった。

 すなわち、車が大きくバランスを崩し、同じような女性が同じポーズで歩いているのである。

 この時はさすがに先輩と、「さっきもあの女の人いましたよね」「そうだなー」みたいな会話を交わしていたと思う。でも詳細は覚えていない。だって夢だから。

 とにもかくにも山の上の旅館に着いたら、可愛い女中さんに出迎えられた。

 そして、ここでシーンが飛ぶ。


 次のシーンでは、私が一人で同じ山道を運転していた。時刻は同じく昼である。

 しばらく山道をグネグネと上っていくと、突然ハンドルがグイッと勝手に動いた。衝突回避装置を五倍くらいにしたような強い力で、とてもでは逆らえなかったのを覚えている。

 ヒヤッとして窓の外を見ると、やはり前の時と同じ女性が同じような格好で山道を進んでいた。

 夢の中の私は気味悪がるでもなく「あー、だから前に先輩も運転やばかったのか。確かにこんな力でハンドル動かされたら、女性と会う位置によってはカーブ避けきれないし、死亡事故も多くなるわけだ」と妙に冷静に考えていた。

 なお、女性は前回同様にもう少し先の山頂付近にもいて、やはり私は二回目のヒヤリハットを経験した末に旅館に着いた。


 ――という夢が今回の内容である。


 例によって隣の席の同僚にこのことを話してみると、どうも「事故を回避する夢」は「ピンチをチャンスに変える前触れ」、もしくは「ストレスを感じており、抑圧からの解放を望んでいる」という深層心理があるらしい。


 そもそもピンチに陥りたくないし、ストレスということなら労働が一番の原因である。

 という、ごく平凡な結論に落ち着いた。

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