三人の勇者と砂漠の町

路地猫みのる

老女ラーマのおはなし会

 アルカンレーブ王国は、虹の女神様の結界により守られた人間の国です。女神様は王国の外周に9つの『虹の神殿』を作り、結界を張り巡らせることで、獰猛どうもうな魔獣が国内に入り込むことを防いでいます。

 そんな『虹の神殿』も、建国から千年以上が経過し、劣化してきました。修繕のためには、『虹の貴石エリストル』という希少な材料を探すために、結界の外側の世界――恐ろしい魔獣たちの巣窟へ旅立たなくてはいけません。

 これは、『虹の貴石エリストル』を探す旅をしている勇者一行が、砂漠を守る『虹の神殿』を訪れた時のお話です。


***


 ここは神殿に併設された孤児院。責任者である聖侍者ラーマが語り始めると、幼い子どもたちは目をキラキラさせて続きをせがんだ。

 老女ラーマのほかに、数名の女性が子どもたちの世話をしている。ピンク色の髪を結い上げた若い女性は、体を動かしたくてうずうずしている子どもたちをタカイタカイする。空高く放り投げられた子はキャッキャッと笑う。

 短く髪を切りそろえた小柄な少女は、眠い目をこすっている子どもたちを左右に抱きかかえて、ゆったりと体をゆすっていた。

 そんな様子を微笑ましく見守るラーマの肩には、一羽の小鳥。白いふわふわのボディ、青いくちばしと脚、つぶらな瞳。小鳥は見た目より可憐さに欠ける声で「ピギャー! ピーピー、ピョ!」と鳴く。

「ほほほ、さぁ、物語の続きです。みなさん、勇者たちを応援しながら聞いて下さいね」

「はぁい!」

 という子どもたちの甲高く可愛い声に、世話をしている女性たちの声もまじる。

「どんなお話か楽しみね!」

 と、小柄な少女は紫暗の瞳に期待をにじませた。

「じっくり聞かせてもらおうじゃないの」

 と、腕組しながら見下ろすのはピンク色の髪の女性。その金色の瞳に危険な気配を感じたのか、今までまとわりついていた子どもたちが、ズザァっと一斉に離れた。彼女はそれに気付くと気配を穏やかにならし、「大丈夫、あんたたちのことは踏んづけたりしないから」とひとりひとりの頭を撫でてやった。

「ピーピピピピ、ピョー!」

 小鳥が叫び、子どもたちが拍手する。


 勇者たちの冒険の、始まり始まり。

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