第7話
聡美は自分のベッドで目を覚ました。
土曜の朝帰りで、昼過ぎまで惰眠を貪っていたのだ。
昨夜の出来事は、もちろん覚えている。
尾高と関係を持ってしまった……
その事が、少なからずショックだった。
(そんなつもりじゃなかったのに……)
なぜあの時、さっさと帰宅しなかったのだろう?
なぜ何も言わずついて行ってしまったのだろう?
酒の勢いで?
流れに身を任せて――結局、男女の関係を持ってしまったのだ。
自分の意志の弱さに嫌気がさして、聡美は寝そべったままスマホを掴んだ。
お気に入り登録しているブログが、更新されたという通知が入っている。
いつもの猫のブログだが、昨日の投稿の中に例の【今日の出来事】の通知がない。
毎日欠かさず更新していたのに、昨日は未更新だったようだ。
まぁ、彼女も正規雇用になって忙しくなったんだろう。
書けない日だってある。
もしかしたら今日は更新されるかも……
そう思い、1日過ごしていたが。
結局深夜を回っても、彼女から更新のお知らせはないまま、1日が終わってしまった。
週が明けて、会社で尾高と顔を合わすと、向こうも多少気まずさを感じるのか、少し照れたように頭を下げてきた。
聡美も、極力普段通りに接しようと思うのだが、何となく不自然な視線を送ってしまう。
付き合っている――という事が分かれば、何を言われるか分かったものではない。
社内恋愛は良い事ばかりではない。
もちろん、喜んでくれる人の方が多いが、ありもしない噂話でからかう連中もいる。
僻んでやっかむ女もいる。
恋人宣言をするタイミングが難しいのだ。
なので、社内で付き合っている者は、結婚の意思が決まった時点で公表する事が多い。
社内で大っぴらに仲良くすることはないが、それでもメールを通じて尾高とはやり取りをしていた。
休みの日に会い、デートをすることも増えた。
なるべく知り合いに会わない場所を選んで。
こっそり付き合っている――ということが、2人の気分を盛り上げていた。
何度目かの逢瀬が終わり、自宅に戻ってベッドに横になる。
久しぶりにブログの更新に気づいて、聡美はスマホを見た。
【今日の出来事】がひと月ぶりに更新されていた。
(あ。まだ続けてたんだ……)
もうてっきり、書くのを辞めたのかと思っていたが――
聡美は仰向けになって彼女のブログを開いた。
そして目を疑う。
そこには真っ暗な画像のアップと共に、ひたすら
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
【あ】の羅列があるだけ。
「いやだ!なに?」
聡美は思わずスマホを放り投げた。
なぜか全身に、鳥肌が立つような恐怖を感じたのだ。
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