第11話


 突然現れた瑠亥に邦男は面喰いながらもすぐに立て直し問いかける。


「ノックも知らんのか、これだから探索者は」


 邦男はそこまで言って瑠亥が一人であることに気が付いた。


「なぜ一人なんだ。お前を迎えに行った佐藤はどうした」


 訝しげにそう問いかけるが、瑠亥はそれを無視して再度問いかける。


「あなたが私を呼んだ人?」


 邦男はその瑠亥の態度に、ふんっと鼻を鳴らしながら不機嫌そうに答える。


「まともな会話も出来んか。まあいい、そうだ。この私がわざわざ出向いてやったのだありがたく思え」


「そう、それで要件は?」


 瑠亥は淡々と話を進める。瑠亥のその態度に邦男はさらに不機嫌になるが教養のない探索者に言っても無駄だだなとその怒りを鎮める。


「生意気なやつだ。まあいい、お前の持っているダンジョンのアイテムを全て私に差し出せ。収納系のアイテムかスキルで大量に持って帰っているのだろう?」


 邦男は不遜な態度でそう言った。


「確かに持ってるわね。それを買い取りたいということ?」


「卑しいやつだ。お前のアイテムがあれば日本は他国に対し、外交の場で有利に動くことが出来る。日本をさらに発展させることができるのだ!日本の為にと無償で差し出そうとは思わんのか!」


 邦男は話しているうちにどんどんと熱が入っていき、最後のほうには怒鳴るようにそう瑠亥に訴えかけた。


「つまり私が命がけで集めてきたアイテムをタダでよこせと、あなた議員なのよね、それは日本としての要請ってことでいいの?」


 瑠亥のその問いに邦男はかぶせるように声を上げる。


「我々をあんな腰抜けどもと一緒にするな!!これからは我ら流各党が日本を導くのだ!!」


「つまりあなたの所属する流各党の独断という事ね。それだけ聞ければ十分よ」



 興奮している邦男とは対照的に瑠亥は冷静に答える。


「なんだそのっ!!」


 まるで相手にしていないような瑠亥の態度に、激高している邦男がそのままの勢いで怒鳴りつけようとしたが、それは途中で止められる。

 いつの間に近づいたのか、邦男との距離を一瞬でつめた瑠亥は胸ぐらを掴み持ち上げた。

 そこからも早かった。先ほどホテルの自室で佐藤を焼き殺した時と同様に、喉を燃やし、声を封じた後に体全体も焼き尽くした。


 「流各党ね。ちゃんと警告したのに、まだ私の事を舐めているみたいだし、このさい見せしめになってもらいもしょうか」


 瑠亥はこの部屋に入ってから初めての笑みを浮かべると、瑠亥以外に誰もいなくなった部屋を後にした。


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 「クソッ!!あの時代遅れの老害共が!!」


 五十嵐はそう悪態をつきながらホテルの廊下を走る。


「しかもよりにもよって訪ねてきたのは、あの平塚邦男議員のようです」


 そう答えたのは五十嵐のすぐ後ろを同じように走りながら追従していた萩谷千景だ。


「最悪の組み合わせじゃないか!瑠亥さんが自室にいてくれればいいが!!」


 五十嵐と千景は平塚邦男が瑠亥の元に訪れたと言う知らせを受け、日本が瑠亥からの報復を受けるような事態を防ぐため大急ぎで瑠亥の自室に向かっていた。

 というのも瑠亥の扱いについて国での方針がまだ決定していないのだ、しかし瑠亥の持つアイテムやダンジョン内の情報は貴重すぎて失う訳にはいかない、そして瑠亥本人の戦力をまだ把握出来ていない現在の状況では、瑠亥と敵対する事は危険すぎる。

 敵対しないように友好的にダンジョンのアイテムや情報を手に入れるため、慎重に準備を進めているところだったのだ。


なのにあの馬鹿議員‼︎


そう五十嵐は心の中で毒づく。


 最初に瑠亥の対応をしたせいで、国からその後も瑠亥に対しての窓口にされるという貧乏クジを引かされるし、今日も流各党が先走って瑠亥に接触しようとしてるから力づくでも止めろとか命令もくるし、瑠亥が現れてから碌なことが無い‼︎


 などと五十嵐が不満を爆発させているうちに、瑠亥の部屋の前へと到着した。


 急ぎノックしようとしたがその手は途中で止まる。五十嵐の視線の先には、手書きで書かれたメッセージの紙が扉に貼られていた。

 それを見た五十嵐と千景はメッセージの内容を読むにつれてその顔がどんどんと青くなっていく。


「支部長、これは...」


「まずい、すぐに総理に連絡するぞ‼︎」


 五十嵐と千景は来た時と同様に足早に去っていった。

 扉に貼られていた紙にはこう書かれていた。


 【流各党の議員を名乗る者に、私のアイテムを無償で全てよこせと脅されたので、流各党を潰してきます。瑠亥】







  





 

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自由に生きたい~最強になれば常識も法律も関係ない~ 矢斬旅都 @yakirutabito

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