どうか透明にならないでください!

ふわふわうさぎ

第1話 見えないものが見えちゃった⁉

「それで、今も私の隣にいるんだけど」


「え⁉」


「寝ぼけてるんじゃないの、隣には誰もいないよ」

夢ではなかった。確かにそうだよ、隣には同い年くらいの男の子がいる。

前髪をたらして目が見えない。黒い服を着ていて、何か見覚えがあるの。

そういえば最近、幻覚に似たようなものが多発しているってテレビでやってたっけ。

天音あまね、最近SF読みすぎなんじゃないか」

桐野当真きりのとうま――私の2つ上のお兄ちゃんで、高校1年生だよ。

「ほ、本当にいるんだよ!」


「全く見えないけど、夢でも見たんじゃないか」


「今ここにいるよ」

もしかして、透明人間を見てしまったのかもしれない。でも、そんなはずない。SFに出てるような、超能力者でもないし、ごく普通の女子だし。

一回、外に出かけてみようかな。予定もないし。でもなんか見覚えがあるな……。

じっとしても変わらない。思い切って聞いてみよう。

「名前、何ですか?」


「……覚えてない」


「透明人間なんですか?」


「……恐らく。俺は中学2年生の男子。それだけは、覚えてる」

作戦成功、このままいろいろ質問をして、正体を暴いていこう。

「なんで、透明になったのか分かりますか?」


「分からない。ただ、誰かに片思いしていたことは覚えている」

そんな都合のいい事分からないよね。質問攻めしすぎたかも……。

っていうか片思いしてたって、なんでそれだけ覚えてるの!?透明人間、謎すぎる!


ベンチに座る。透明人間なら、男女で一緒にいることがバレない。

「あと、大事なことなんだけど、俺の手に触れた物も透明になる。」

とりあえず、透明くんって呼ぼうかな。それより、透明になるってことは――

「うわっ、私も透明になってる!」

透明になっただけでも驚きだけど、透明くんは私と手を繋いでいる。

そして、前髪を少しずらして、片目を見せた。どこかで見たことがある。

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