かわいい未来の王子さま

天音 花香

告白?

「好きかも」

「わかんない」

「たぶん好き」

「大好きだ」


 青いランドセルを背負った男の子が校庭に落書きをしている。


 なるほど。自分の気持ちにようやく気がついたって感じかな。

 うーん。相手は誰だろう。焼ける、どころではないなあ。


 私は男の子に声をかける。


「爽太くん! 誰が好きなの?」


 爽太くんと呼ばれた男の子は、慌てて私のほうを振り返った。とっさに消そうとしている字を盗み見る。


 「あおい姉ち」で文字は消えている。


 私は顔がニヤけてしまった。


「こ、これは、その、あの、違うんだからな! あおい姉ちゃん!」


 かわいい!

 顔がますます綻ぶ。


「ふーん? なにが違うの?」

「よ、読んだ?」

「読んでないよ?」

「ほんとか?」

「ほんとだよ〜。爽太くん。またね! 私も大好き!」


 私は笑いながら爽太くんを置いて歩き出す。


「ま、待ってよ! 一緒帰る! それで……今のほんとか?」

「さて、どうでしょう?」


 私の未来の王子さまは、落書きを消して追いかけてきた。


 かわいいかわいい王子さま。

 いつまでも変わらないでいてね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かわいい未来の王子さま 天音 花香 @hanaka-amane

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ