第一章

機械神編 神の世界

 目を覚ますと俺―――神崎輝は森の中にいた。

 どこだ……ここは?

 なんで森の中に?


「いや、そんなことより……舞は!」


 俺は周りを見渡した。

 しかし妹はどこにもいない。

 いや……いるはずだ。絶対に近くにいるはずだ。


「舞!どこだ、舞!!」


 俺は森の中を歩きながら、妹を探した。

 妹を探しながら森の中を歩いていた俺は……あることに気付く。


「ここは……地球じゃない」


 森の中には人間よりも大きなキノコや光る木が存在していた。

 俺は仕事で世界中の植物を調べたことがあるから分かる。

 

 ここは……異世界だ。


 なんでこんなところに来たのか分からない。

 だけどそんなことを考えるのは後だ。

 今は妹を探さないと。


「舞!どこだ!舞!!返事をしてくれ!」


 大声で名前を呼びながら妹を探していた時、背後からドスンという大きな音が聞こえた。

 振り返った俺は……きっととんでもない顔で驚いていただろう。


「嘘……だろう」


 今、俺の目の前には……とんでもない化け物がいた。


 ギラギラと輝く四つの目。

 白い肌に鋭い牙。

 三メートル以上はある体長に四本の腕。

 明らかに地球では見ないような生物が……俺を見ていた。

 口から涎をポタポタと垂れ流している。


 映画に出てくるエイリアンみたいだな。


「これ……やばいよな」


 化け物は口を大きく開け、


「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 耳を塞ぎたくなるような大きな声で叫んだ。

 俺は全力で走り、逃げる。


「おいおいおい、あんなの見たことないぞ!いや、異世界だから見たことないのは当然か!」


 俺は走りながら視線を後ろに向けた。

 四本腕の白い化け物は光る木を破壊しながら追いかけてくる。

 おいおい!なんて腕力してるんだ、あの化け物!!

 このままじゃあ、あの化け物に殺される。


「クソ!行き止まりか!!」


 走り続けた先にあったのは大きな青い石。

 その石は前だけでなく左右にもあり、どこも逃げられない。

 白い化け物はゆっくりと近づいてくる。

 あ、終わった。完全に人生が終わったわ。

 これ以上、逃げるのは不可能だ。


「すまん……舞!」


 俺は死を覚悟した。

 その時、


「じっとしてて!」


 上から少女の声が聞こえた。

 俺は声が聞こえた方向に視線を向けると、そこには軽鎧を纏った美しい少女がいた。

 その少女は長い金色の髪を三つ編みに編んでおり、右手には銀色に輝く剣を握り締めている。


「女神……」


 少女を見て思わず俺はそう呟いた。

 でも仕方ないだろう。

 少女は女神という言葉がふさわしいぐらい美しかった。


 金髪の少女は地面に着地し、剣を素早く振るう。

 直後、白い化け物の四本の腕が斬り飛ばされた。

 

「グアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!?」


 全ての腕を失った白い化け物は悲鳴を上げる。

 

「これで終わりよ」


 少女は剣の剣先を化物に向けた。

 すると剣先から青い紋様—――ファンタジーアニメに出てくるような魔法陣が出現。

 魔法陣から冷気が放出され、白い化け物を凍結させた。

 凍結した化け物は甲高い音を立てて砕け散る。


「あの化け物を……一瞬で」


 俺が呆然としていると、少女は剣を腰に差していた鞘に納め、声を掛けてくる。


「大丈夫?」


 サファイヤの如く美しい瞳で……俺を見つめる。


「だ、大丈夫……です。助けてくれてありがとうございます」

「怪我は……なさそうね。よかった」


 微笑む少女。

 彼女の笑顔に思わずドキッと胸が高鳴った。

 い、今まで多くの美女を見て来たけど……こんな美人な女の子は初めて見るな。


「あなた……なんでここにいるの?見たことない格好だけど……顔や神の色を見る限りこの国の者じゃあ……ちょっと待って」


 少女は俺の頬を手で触れ、顔を近づける。

 ちょ、近い近い!しかもめっちゃいい匂い!

 じゃなくて!!


「あ、あの……なにか」

「あなたから神力しんりょくを感じない」

「し、神力?」

「もしかして……神じゃないの?」

「か、神?いや、俺は……人間ですけど」

「え……えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 少女は目を大きく見開き、驚きの声を上げた。


「に、人間!嘘じゃないわよね?」

「いや……嘘じゃないですけど」

「人間……本当にいたのね!」


 少女は瞳をキラキラと輝かせながら、俺の肩や脚や腹を触ってくる。

 ちょ、どこ触ってんの!?って、そこは!!


「あの……やめてください!」

「あ、ごめんなさい。人間なって初めて見たから」

「はぁ……」

「自己紹介がまだだったわね。私はユリーナ。魔法と剣の女神よ」

「……えっと女神…様……ですか?」

「そうよ」

「……冗談抜きで?」

「冗談抜きでよ」

「……」


 俺は言葉を失った。

 女神の如く美しいと思ったら、どうやら本当に女神だった。

 え?これ……現実?夢とかじゃなくて?

 というか女神がいるってことはもしかしてこの世界……。

 

「あの~……すみません。質問をよろしいでしょうか?」

「なにかしら?」

「この世界ってもしかして……神々が住んでいる……とかだったり」

「えぇ、そうよ。この世界はゴットワールドの一つ、聖神界。分かりやすく言うと神が住む世界ね」

「……」


 俺は静かに顔を上に向けた。

 空には地球では絶対に見ないような……ファンタジーアニメでしか見たことない巨大な竜が飛んでいる。

 ハハハ……神の世界……か。


「マジか」


 後書き

 読んでくれてありがとうございます。

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