青い闘志の芽吹き/箭嶋 仁武

「って感じなんだけど、仁武ジンブはどう思う?」

 信坂魔術高専の学生寮にて。ルームメイトの飯碕イイサキ綴希ツヅキに問われ、仁武は携帯情映魔器タブレットから顔を上げる。

「良いんじゃないのか。これなら魔術詳しくない人間にも分かりやすいし、間違ってるようなとこも多分ないだろ」

「なら良かった。これでアップしちゃおう」


 彼は学業の傍ら、ブログやら小説やらを情報魔網ウェブ上に公開しているのだ。文章を書くのが好きという趣味によるものだが、使命感にもよる活動だというのは先の記事の通り。


「また綴希が書き続けるの、親父も喜ぶぞ」

「それは何よりだよ、武岳ブガクさんみたいな人が報われてほしくて始めたから」

 魔術警備隊とは、先天的な適性を持つ人員で構成された準軍事組織である。それゆえに過酷に挑んで人を守り、それゆえに多大な報酬と尊敬を得るのが妥当とされてきた。

 ただ、平等や軍縮、格差是正と非武装高福祉を理想とする昨今の世情とは、相性が悪い。行政の実働部隊であるがゆえに政治批判の的になりやすく、特殊な環境であるがゆえに注目も集まりやすい。それは養成機関である魔術高専も同様だ、年頃の男女が集まるためよりセンシティブでもある。


「けど今は、ウォーズを盛り上げたいって方が最優先かな。とうとう出場学年だし?」

 綴希の言うように、MAXウォーズをはじめとする戦闘型魔術スポーツへの出場が可能になるのは3年次からだ。つまり仁武たちにとっては夢の舞台へ挑むシーズンの到来である。


「本気でウォーズ目指すんでしょ、仁武と義芭ヨシハさん」

「本気だよ。今年の信坂は強い人材が揃っているらしいからな、久々の全国制覇を達成したチームになりたいだろ?」

「そうだね。僕も気合いが入るよ、諷葉ソラハちゃんの天馬っていう隠し玉を実現に持っていかなきゃ」

「おう。行こうぜ、一緒に」

「ずっと憧れてきた舞台に、ね」


 ふと仁武は、今年入学するはずの知り合いを思い出す。義芭と仲の良い上埜カミノ深結ミユ、ダンスの上手い可愛らしい少女だ。スポーツの応援にも熱心な子だと聞いている、彼女にとってもここが母校になるのだ。


「後輩も増えるんだ、格好いいとこ見せなきゃな」

「後輩って、武術絡みの知り合い?」

「おう、その辺」

 ということにしておこう。遠い知り合いの美少女、というのは色々とよろしくない。


「綴希のご両親だって、嶺上で復興の最中だろ?」

「だね。相変わらず、年の瀬しか会ってないよ」

「直接の行き来は難しいもんな……だったら余計、勇姿は見せなきゃだろ」

「勇姿ってほどでもなあ」

「そこで卑屈になるな。MAXウォーズは全員主役、全学科が輝く祭りだって。ツ・ヅ・キ・が、書いたんだろうが」

 名前を強調しつつ、仁武は綴希の脇腹を小突く。綴希は「頑張りますよう」と笑っていた。


 ――という、生徒たちの盛り上がりだけでなく。

 大人の事情もこの競技に絡んでくるのだと、知らされたのが翌日のこと。

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