デュアル・デュエルで用いられる武具について/箭嶋仁武

 デュアル・デュエルでは、各試合ごとに自由に装備を変えられる。自分たちの特性だけでなく「今度ぶつかる選手はこの武器を使うから、俺たちはあの武器でいこう」というメタ的な読み合いも絡んでくるのだ。


「ミユミユ、デュアエルを含めた魔刃スポーツで使われる武器がどんなのかってのは頭に入ってる?」

 義芭ヨシハの質問に、深結ミユは少し考えてから。

陽駆ハルカ先輩に説明してもらったくらい、ですね」

「じゃあ言ってみてくれる?」

 

「まず武器、つまり擬魔刃ぎまじんは片手用と両手用に分けられてます。両手用の方が威力は高いけど、片手用だともう片手にシールドを持てたり、二つの武器を持つことができるので、そのチョイスはプレイヤー次第ですね」

「そう、それぞれの分類は?」

「まずは両手用が、大太刀と本太刀ほんだち、薙刀、直槍すぐやり斧槍おのやりです。片手用が小太刀、手槍、手斧。そして擬魔甲ぎまこうが4サイズの盾ですね」

「そうだね。特徴はどんなだろ?」

「特徴は……両手用なら威力が高いのは大太刀と斧槍、リーチ有利なのが直槍と薙刀、スピード有利なのが本太刀ってイメージです」


 深結の理解、ざっくりしすぎているが間違ってはない。魔刃士志望でない1年生ならこれくらいだろう。

「片手用だと、手槍は遠くから突いて、手斧は盾にガンガン打って、小太刀は……盾と一緒というより、陽駆さんの二刀流のイメージが強すぎて」

「深結さんは陽駆先輩とも知り合いだったよな」

「MAXダンスクラブの先輩ですね。学年差もあって一方的に慕っている感じですが」

 深結に限らず、この学校の女子生徒の大半は陽駆先輩にお熱である。男子も隠れファンは相当いるのだが、直央タダヒロ先輩が目を光らせているのでおおっぴらには騒ぎづらい。


「私からはこんなところです」

「はいありがとうミユミユ、ちなみに魔刃学の授業ってやった?」

「いや、これからです」

「じゃあこれで充分だね。じゃあ仁、今の説明補足して」

「俺か? えっとだな」


 てっきり義芭が説明すると思っていたので、仁武ジンブは慌てて頭の中で説明をまとめ直す。

「擬魔刃をパーツで分けると擬刃ぎじん部・非刃ひじん部、および剛利ごうり部・脆弱部に分けられるって話は聞いたよな?」

「はい。柄みたいな非刃部は脆弱部になって、擬刃部のうちでも峰とか腹は脆弱部になる、でしたよね」

「ああ。加えて、擬刃部は非刃部よりも重く作られている。実戦用の魔刃だったら霊鋼で重くなるから、スポーツでもその感覚を覚えるためにな」

「やっぱり実戦的なんですね」

「そう。だから柄の長い武器はリーチに優れるけど構造上の弱点が多い、刀身の長い武器は弱点が少ないけど重くて扱いづらい、短い武器は扱いやすいけどリーチに欠けるってバランスになってるんだ。

 ただ、柄に斬撃を入れるのって言うほど簡単じゃないから、直槍とか薙刀を使う奴は結構多いな」


 リーチに有利を感じるのは基本的な本能である。だからこそ、武術では長物への恐怖を克服する訓練も積みがちだ。

「……あの、そうなるとですよ」

 深結、ここまでの説明で何か気づいたらしい。

「斧槍って、刀身が幅広いから重いし、けど柄が長いから弱点も多いし……だいぶ不利じゃないですか?」

「そう、まさにその話をしようとしていた。センスあるな深結ちゃん」

「えへへ、ありがとうございます!」


 斧槍。170センチの柄に片刃の斧と槍の穂を取り付けた武器である。見た目通り、穂先で突くことも斧で断つこともできる。もっとも、斧の重さで重心が偏るため突き出すのは難しく、断ち切る動きが適しているのだが。

「斧槍と手斧、つまり斧系。リーチも取り回しも他に劣るけど、他にはない強みがある。それが盾を壊せる能力で、」

 仁武は話し切ろうとしたが、深結の顔を見て思い直す。

「なんて言うか知ってる?」

「破甲性、でしたか」

「当たり、ウォーズの解説とかで聞いたか」

「前に義芭ちゃんから聞きました」

「ミユミユいい子~」

 自慢げな義芭に頭を撫でられても、深結はノーリアクションで傾聴の姿勢。よって仁武も説明続行。


「デュアエルでは、刃闘士の体に有効打突が入ればそれで勝負がつく。これは小太刀みたいな軽い武器でも、ちゃんと魔力が流れていれば一撃で決まる。

 けど盾、つまり擬魔甲の耐久力は別のシステムで決まっていて、武器種や打突方法によって壊しやすさが違っているんだ」

 壊れるといっても、競技器具が本当に破壊されるわけではない。アーマーと同じ感知システムが盾にも付いており、一定以上のダメージが蓄積すると使用不可。手放さないと反則となる。

「その壊しやすさが、斧が有利ってことですね」

「ああ。重い刃で断ち割るような攻撃が有利で、軽い刃とか突く系の攻撃は不利……これはまずは覚えてほしい」

 仁武としてはこれで充分、と思ったが。


「補足するとね」

 義芭が口を挟む。

「破甲性ってのは、魔術による耐久性強化への対抗属性だよ。一方、ハードターゲットに対する破壊力に着目する場合は壊撃性って尺度になって、これは槍みたいな貫通も有利。この違いは霊鋼による物質破壊機構に由来するけど……続きも聞く?」

「それ3年生後半の内容だろ」

「義芭ちゃん、また教えて」

「はいはい~」

 今日はあっさりと引き下がる義芭、自制を覚えたのか機嫌がいいのか。仁武は話を本筋へと戻す。


「ともかく、魔甲を用いた盾には、斧みたいに重い斬撃が効くし、それ以外の武器だと攻略しづらくなるって話なんだ」

「仁先輩の本太刀だと、盾を無力化するのは難しいんですね?」

「ああ。そしてここで、今度ぶつかる直央先輩の話になる」


 タブレットに直央の試合映像を流す。右手には片手用の手槍、そして左手には。

「……この盾、デカすぎません?」

「デカすぎるよな。最大サイズの壁盾、160×90センチの長方形で25キロ」

「25!? いやそもそも、自分の身を守るにはオーバーサイズすぎますよね」

「自分だけじゃなく仲間を守る、つまり集団戦用の盾なんだ。だからデュエルみたいな一騎打ちだと邪魔で仕方ない」

「のに、ブンブン振り回してますよこの人。魔術補助あるとこんなのできるんです?」

「普通は補助あっても無理なんだけど、直央さんはパワーやばいから……重量上げだったら今の学校で一番だろうし」


 巨大な盾と、片手武器とはいえ長めのリーチを誇る手槍。それらを俊敏に操る姿は、鉄壁という言葉がこのうえなく相応しい。


「いくら盾がデカいからって、闘技路の全部を塞げるほどじゃない。けど左右も上も、抜けようとした瞬間に槍か盾かのカウンターが飛んでくる。自分より後ろに行かせない、かといって正面から行っても押し負ける、そういう戦術の人だ」

「じゃあ勝つには、反撃をすり抜ける素早さか、ガードを破れるほどの強力な攻撃が必要?」

「そう。そして前者を取っているのが今の俺たちで、後者を取り入れるべきかが今の争点」

「なので今のあたしたちの流儀で挑んで、どこまでやれるかってのを試すのが明後日の試合だね。そこで歯が立たないって思ったら、斧系の導入を検討することになるね」


 深結は頷きつつ、首を傾げる。

「ということは、ですよ」

「おう」

「そもそも先輩たちがどうしてそういう……本太刀を使ったスピーディーな戦術を選んでいるか、の話を聞きたいですよ」

「……いい生徒だな、深結さん」

「え、ありがとうふぉふぁいはふ」


 深結の律儀なお礼は、義芭のほっぺムニムニ攻撃で妨害されていた。

「さすがあたしの愛しの生徒~!」

「おら、不適切指導はやめんか」

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