魔術使いのコンビ論/箭嶋仁武
「今の演武において。
恐らく周囲からは、刃闘士がワイヤーで引っ張られているように見えたはずだ。引っ張るものが物体ではなく魔力であるという点で、その喩えは正しい。
「では連繋式魔術とは、誰か説明してくれるかな」
スタンドの一年生たちの間、真っ先に手を挙げたサイドテールの少女は顔なじみだった。今年入学の
「よっしゃ、いいよミユミユ」
その義芭は隣で得意げに呟いた。お姉さんムーブしたがる奴のことだ、鼻が高いのだろう。
「はい早かった、上埜深結学生だね」
陽駆先輩から指名され、深結は立ち上がる。まさにアイドル然としていた爽やかな可憐さはそのまま、濃緑のブレザーに袖を通した彼女は随分と大人びても見えた。
「はい。まず魔術とは、人の体に宿る非物質存在・
深結がまず触れたのは魔術の基本中の基本。みんな知っていることとはいえ、説明の入り口としては正しい。
「その宿精霊同士をバディと接続することで、バディを起点に魔術を発動する形式を、連繋式魔術といいます。ここで宿精霊を提供して魔術を発動する側を
まずは定義から、陽駆先輩は頷きつつ続きを促している。
「この発動形式の利点についてです。連繋式魔術により、魔術に伴う様々な制約をクリアすることができます。
すなわち、一人が扱える魔術には限度があることと、魔術は対象との距離が近いほど好都合ということ。これらをクリアし、発動キャパシティや距離に囚われない柔軟な魔術の運用が可能になります」
深結の説明は教科書通り、と言えばそれまで。しかし入学したての段階で丁寧に要点を押さえている証だ、真面目さが窺える。澄んだ声と溌剌とした喋りも相まって、そのまま教材のナレーションにできそうだ。
「例えば私は以前、MAXダンスを習っていました」
そして深結の説明は実体験に移る。MAXダンスといえば、魔術に適性のある女子にとって定番の習い事だ。深結と義芭、陽駆先輩も経験者。
「サポーターがパフォーマーを起点に連繋式の自己作用魔術を使うことで、重力や摩擦も操作してのダイナミックな踊りを見せるパフォーマンスです。パフォーマーは踊りに、サポーターは魔術に集中する適材適所は、連繋式ならではの分担といえます。この技術のおかげで、私もパフォーマーとして輝かせてもらいました」
かつて深結のサポーターを務めていた義芭を横目で見ると、案の定にんまりとしていた。気持ちは分かるがシャキっとしないか先輩。
「――以上になります、長くてすみません」
「はい、上埜深結学生ありがとう。教科書的な要点から実体験の具体例まで出してくれた、いい回答でした」
手を叩く陽駆先輩に続き、一同で拍手。隣の義芭は拍手にまぎれて「ミユミユかわいいよミユミユ」と宣っていた。深結は笑顔を咲かせつつ丁寧に一礼。
「そして私信だけど――えらいぞ、ミユミユ」
女子校王子様モードを発動させ、艶めいた声でウインクした陽駆先輩。憧れの先輩からの労いに、同門らしき女子生徒たちが色めき立つ。当の深結も口元を押さえて頬を染めていた。 ぱっちりとした瞳、くるくると変わる表情、軽やかに揺れるサイドテール。深結はやはり、活き活きとした可愛らしさが目を引く。
「はあ、ファンサれミユミユかわええよ」
義芭の反応も同意は同意である、一部に謎ワードこそ混ざっていたが。
そんな盛り上がりを経つつ、陽駆先輩は講師モードに切り替え。
「いま説明してくれた通り。体術に優れた奴と魔術が得意な奴は別だから、上手く分担しようって話です。あるいは、魔術は近距離向けが多いけど、前衛張れる奴は少ないってジレンマの解消だね」
仁武と義芭の組むコンビ――頭文字を取って仁義デュアル――は特にそれが顕著だ。頑強だが魔術が不得手な仁武と、精密な魔術制御を得意としつつフィジカルの弱い義芭が、互いの強みが活きるよう組んだペア。
「勿論、補助される側――
そして現代の魔技者のチーム戦術は、この連繋式魔術を基本として設計されています。そのためのトレーニングとしても考案されたのが、このデュアル・デュエル。だから実践的・実用的な意義も多くにある――た、だ!」
手を叩いて強調する陽駆先輩。
「魔技者の訓練である以上に、やるのも観るのもめっちゃ面白いスポーツです。そして楽しむためにはルールを知らなきゃいけない。
というわけでここからはルール解説です、みんなしっかり聞いてな!」
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