合戦ごっこは心を救う/箭嶋仁武
保険金や退職金のおかげで生活に困ることはなく、大勢の関係者に慕われながらの引退は華々しいものだった。また片足を失ったとはいえ、バリアフリー用の魔動器は充実しており、自宅での生活にもすぐに慣れてきた。
となると次は再就職である。貢献を称えるように武岳には多くの職場からオファーが来ていた――のだが、武岳はどうにも積極的になれなかった。
魔刃士という、強さの象徴のようなキャリアを歩んだ彼にとって。どんな名誉であれ、障害者として働くことへの抵抗は強固だったのだ。そうしてすることもなく家で過ごすうちに、塞ぎ込むことも増えていく。
全国の魔術高専によるMAXウォーズの対抗戦、全高魔戦のシーズンを迎えたのは、ちょうどそんな頃だった。
*
複合災害により壊滅的な被害を受けた
そして、MAXウォーズの信坂代表にも名前を連ねていた。
「私たちを温かく迎えてくださった信坂の皆さんに、何か恩返しがしたい。
何より、命懸けで私たちを救いにきてくれた魔技士の先輩方に、逞しい姿をお見せしたい。 その想いを込めて、頂点を目指します」
そう語ったのは、嶺上出身の魔刃戦技科学生で、かつての武岳と同じ刃将を務める
彼らは逆境を跳ね返すように、奮戦し、勝利した。
その姿は、熱闘の数々は、塞いだ武岳の心に火を点けていく。
そもそも信坂自体、武岳の現役時代をピークに成績の低迷は続いていたのだ。地元と被災地の共闘に、信坂県の熱狂は空前の域に達する。
決勝の日、公民館に特大
「私たちを守り育ててくれた全ての人に捧げるトロフィーです。
そして、今度は私たちが人を守るという、誓いの印です」
エースとしてチームを牽引した研護選手の言葉に、武岳は警備隊式の敬礼で応えた。
「俺もいじけてらんねえな」
その日を境に、武岳は活気を取り戻し、再就職に乗り出した。魔術スポーツ用品のメーカーで働きつつ、時には魔獣討伐の専門家として各所に呼ばれるのが、武岳のセカンドキャリアとなったのだが。
ともかく、仁武は思い知ったのだ。
魔刃士をはじめとする魔技士が、人の命を守るように。
実戦とはほど遠いスポーツも、人の心を救うのだと。
だから仁武は、同じ家で育った彼女に訊ねた。
「
仁武は義芭の頭脳を信用している、その答えに最も近いのが彼女だ。
仁武は義芭の言葉を信頼している、その答えに嘘もごまかしもないのが彼女だ。
「多分、仁は魔術と関係ない道を歩む方が、手っ取り早く幸せだと思う。その体力と体格を活かした道の方が挫折も苦痛も少ないと思う。それはそうとさ」
地元の快挙に湧く人々を眺めながら。いつになく熱を帯びた声で、相棒は語る。
「考えてるよ、なれるって。あんたの心技体を活かせる魔術で、あたしが補えばいい。そのビジョンはずっと前から頭に浮かんでる。
考えるんだ、なるべきだって。あんたみたいな人間が魔刃士になる道はこれからの社会に必要で、その証としてウォーズは相応しい。
願ってるよ、なってほしいって、一緒になりたいって。あたしとあんたが一番似合うの、そういう道じゃん」
その答えを聞いた瞬間に、仁武の青春の在り方は定まった。
「じゃあ、なるか、二人で」
かくして夢へと駆けだした、それから7年後の
信坂魔術高専の3年生に進級していた。
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