祖父と大好きな人形
葵流星
祖父と大好き人形
それは、私が子供の頃の出来事だった。
私の祖父は一人暮らしだった。
というのも、私の祖母は私が産まれてから、数年…
その夏の日の2年前には亡くなっていたのだろう。
祖父の家は山あいの場所ではあるが、買い物には問題がないくらいの立地だった。
どこかアメリカの街道のような街並みの建物がある場所だった。
そして、そこには私の従兄弟たちも居た。
祖父もまだ若く、父親の兄弟達との共同生活もする必要がないくらい元気であった。
私は、その日は晴れており、両親は買い物へ出かけ祖父と家に居た。
従兄弟が来ることになっており、私はそれまで家で待っていた。
だが、当時の私はじっとしていることができない遊び盛りだったので、その場にあった手頃な紙で紙飛行機を作った。
そして、私が紙飛行機で遊んでいると、祖父の家のどこかの部屋…。
飾られている人形のちょうど足元に紙飛行機が刺さってしまった。
小さな私には届かない、壁掛けの棚に置かれた人形の上だった。
その人形には、可愛らしい服が着せられていた。
金髪で青い瞳の…。
それでいて、肉感のある…。
当時の私ですら、ドギマギしてしまうようなものだった。
ただ、人の肌のような柔らかい、私がイメージしている人形とは異なり、古風でもない…。
妙な感じの素材で出来ていた。
私はジャンプして取ろうとしたが、取れず。
大人しく祖父をその場に引っ張っていき、紙飛行機を取ってもらった。
私は、喜んだのだが、祖父はその人形を強引に手に取り、大事なものだからとどこかへと持ち去った…。
ほどなくして、従兄弟が来たのだが、夏であった為、喉が渇いた私は、そこであるものを見てしまった…。
祖父の書斎で、祖父が人形を抱きしめていた。
いや…押さえつけていた。
雑多な模型で隠れていてよくは見えなかったが、祖父は人形と腰を合わせていた…。
私は、たまたま開いていた…。
よりは、経年劣化で建付けの悪くなっていたのと、カギを閉めることすら忘れた祖父の産物の隙間から、その行為が見えた。
ゆったりしているようで、小刻みに揺れていた。
私は、何かしているのだろうとその場を後にした。
その次の年に、その人形は無くなっていた。
祖父は、大事な人形だったが、欲しい人がいたので処分するよりはいいかと思って、譲ったと私に答えた。
祖父が死んでから、もう3年くらいだろうか…。
社会人になって、少し経った頃だった。
今は、祖父が人形を譲ったと言った理由がわかった。
私の彼女は、目の前に居る。
ああ、当時の私は知らなくて良かった…。
シリコンの肌をやさしく撫でる…。
終
祖父と大好きな人形 葵流星 @AoiRyusei
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