才能にのまれ、のたうつ作家志望

れなれな(水木レナ)

第1話:雑談

 少々困っていることがある。

 正確にはやっかいな同居者がいる。

 さあ、それは……


 母の長話。

 車に乗っていると、ドアにロックをしてあけてくれない。

 気が済むまで話し終えないと、出してくれない……用事で出てきたはずなのに。


 2月に引っ越しの予定なのだ。

 いらないものを片付けねばならない。

 それでブックオフに、山盛り本をもちこんだ。


 で、スズキのアルトにバッグとコンテナにつめこんだ本類を乗せ、16号線をまっすぐに来たはずなのだ。

 なのに、老人ホーム(今はこういう言い方をしないらしい)に入って終活をしている友人の話をする。

 もう何回目かのお話だ。


 それが終わったら別の話。

 もうブックオフの駐車場にいるのに、ドアを開けてくれない。

 実のお姉さんがおしゃべり好きで、電話代がかかってしょうがないと言っていたくせに、電話代がかからないわたくしの前ではよくしゃべる。


 いつもなら、さえぎって作業に移るところなのだが、ためしにどれくらいしゃべるか聞いてみた。

 地獄だ。

 内容は主に3つ。


 人のうわさ話に終活に、いつか聞いたはなし。

 延々と。

 意味が分からなくて頭に入らない。


 一向に相手の反応を待たずに、ただひたすらにしゃべりたくてしゃべっているようなのだ。

 相槌とか、リアクションとかを期待していない。

 ただしゃべりたいだけ。


 苦痛。

 わたくしは菩薩になったつもりで、じっと聞く。

 特別、反応はしなくても可。


 ようやく終わった、鍵を開けてくれた。

 もう、脱力してるから重たいものを運びたくない。

 カートを取りに行くだけだ。


 帰りに『大桜』というラーメン屋に寄った。

 1,000円のラーメンを頼む母。

 わたくしは1,360円のチャーシュー麺。


 にんにくがおいしくてね。

 豆板醤も、お酢もいいんだけれど、くたびれる日だったからね。

 もうすぐレンジも冷蔵庫も使えなくなるから、当分ラーメンがいい。

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