エクリプスの儀式[考案]

@mayomayorun

第0話

何年も前から頭の中にあるストーリーを下手くそながら書き起こしてみました。

小説を書くのは初めてです。

でもずっと頭の中に入っててもこの物語とキャラクター達は何も始まらないし終わりもないのだと思い、投稿を決意しました。

優しい目で読んで頂けると幸いです。

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15歳のアベルは、街から子どもが消えていく謎について旅をしながら調べていた。そして旅の途中で聞いた「悪魔の住む村」に関する噂を気にしていた。その村は街の近くにありながらも謎に包まれている。誰も近寄りたがらないためだ。興味本位でその村に足を運んだアベルは、村の様子をうかがうためにしばらくその周辺で過ごしていた。


だが、その夜、アベルは村の外れで、ひとりの少年を見かけた。その少年の名はリン。13歳の小柄で物静かな彼は、村の中でも目立たない存在だった。アベルが声をかけると、リンはゆっくりとこちらに振り向いた。その瞳はどこか遠くを見つめているようだったが、アベルには彼がこの村で何か秘密を抱えていることがすぐにわかった。


「君もここに来たのか?」アベルが尋ねると、リンは首をかしげて答えた。「うん、僕はここで育ったから。」


その言葉に、アベルはますます疑問を抱いた。リンは普通の少年に見えたが、村の噂には悪魔が住んでいると聞いていた。悪魔が村の人々を支配しているという話もある。しかしリンはただの子どもに過ぎないように見える。だがその夜、アベルはリンの家で奇妙な出来事を目撃することになる。


リンの家に一緒に食事に招かれたアベルは、家の中に不穏な空気が漂っているのを感じた。家の壁には奇妙な儀式の絵が描かれており、燭台の光が微かに揺れている。12歳のエーヴが家の中を跳ね回り、無邪気に笑っていた。その無邪気さの裏に、アベルは一種の不気味さを感じた。


「アベル、こっちおいで!」エーヴは無邪気に手を振った。「明日は楽しい日になるよ!」


だがその声に不安を覚えたアベルは、リンに目を向けた。リンの表情が一瞬、苦しげに歪んだ。その時、アベルは何かが違うことに気づいた。リンの目の中に、一瞬、異様な光が差し込んだのだ。


「リン、君は…」アベルが口を開こうとしたその時、家の外から足音が聞こえた。リンは慌てて立ち上がり、アベルを押しとどめるように言った。「この村には僕たちが知らないことがたくさんある。君も気をつけた方がいい。」


その夜、アベルは家の外に出て、リンとエーヴが話すのを偶然耳にした。リンは「僕、悪魔の子なんだ…」と呟き、エーヴはそれに驚いた顔をするが、すぐに目を閉じ「でも、私たちは家族でしょう?私はあなたと一緒に居たいわ」と微笑んだ


その瞬間、アベルの胸は冷たいものに包まれる。

アベルが驚きのあまり固まっているとエーヴたちに気づかれる。「ごめん。盗み聞きをするつもりは無かったんだ…僕はただ、君たちと仲良くなりたくて、その…」

エーヴとリンは「分かってる」と微笑んだ。

しかし、それ以上に衝撃を受けたのは、村の真実を知ってからだ。

「16歳になったら、君たち人間は消されるんだ…悪魔によって。」

リンの言葉にエーヴとアベルは言葉を失った。

確かにこの村には老人と、幼い子どもしかいない。

アベルがこの村に来た時から感じていた違和感はここにあったのだ。

リンの言葉によると、この村の人間は16歳になると悪魔により食べられてしまうそうだ。

悪魔は力をつけ、新たに悪魔の子どもを産み、村の人間に育てさせる。リンもその1人だった。

だがリンは人間を食べるなんて事はしたくない。一緒に過ごした唯一の家族のエーヴが大切だと言う。その目はとても真剣だった。


その時、アベルは決心した。どんな危険を冒してでも、この村から二人を連れ出さなくてはならない。だが、村には結界が張られており、逃げ出すことは極めて難しい。


翌朝。

今日は悪魔崇拝の儀式の日だ。

村全体ではまるでお祭りのように盛り上がっている。

昨日の朝までは浮かれていたエーヴもリンの話を聞いてからは深く考え込んでいた。

アベルはリンとエーヴを連れて村を脱出する計画を練り始めた。だが、村の大人たちはすでに気づいている様子だった。村の中央にある広場では悪魔崇拝の儀式が行われる準備をしているようだ。


「今夜、私たちを逃がしてくれる?」エーヴが小さな声でアベルに尋ねた。


「必ず、助ける。今夜、絶対に。」アベルは強く答えた。


夜が更け、人通りの少ない場所で、三人は再び集まった。リンは、心の中で何度も言い聞かせていた。逃げるのは、エーヴとアベルのためだ。彼らを守り、無事に外の世界へと導くことが、自分の役目だと。


しかし、その思いが胸を締め付けていた。


「リン、どうしたんだ?」アベルが心配そうに声をかけた。


リンは顔を背け、答えなかった。その表情はいつもとは違い、困惑と恐怖に満ちていた。


村の大通りからは村人達の賑わう声が聞こえる。


「僕、悪魔の子だから…」どれほど時間が経っただろうか、リンがようやく口を開いた。「一緒に逃げてもいいのかな? 僕が一緒にいると、君たちも危険になるんじゃないかって思って…」


エーヴはその言葉に驚き、リンに近づいた。彼女の目には涙が浮かんでいた。


「リン、私たち、ずっと一緒にいたいの!」

エーヴは力強く言った。

「君がどんな存在であっても、私はあなたと一緒にいたい。逃げることで何かが変わるわけじゃない。大切なのは、私たちが一緒にいることよ!」


リンはその言葉を聞いて、深く息を吐いた。心の中で葛藤が渦巻いていた。自分が悪魔の子であることで、二人に危害を加えてしまうのではないか、それでも、アベルとエーヴと一緒にいたい気持ちは強くなっていた。


「でも、僕…」リンは涙を浮かべながら言った。「僕と一緒にいることで、君たちまで危険に巻き込んでしまうかもしれない。でも、僕は…一緒に行きたい。エーヴ、アベル、君たちと一緒に行きたいんだ!」


その言葉に、アベルは静かに頷いた。「リン、君がそう思うなら、僕たちも一緒に逃げるよ。ただし、君の力が必要だ。君の魔法が、結界を解く鍵だと思うんだ。」


リンは驚き、そして恐れるように言った。

「でも、僕にはそんな力…」


その時、突然、空が割れたような音がした。

アベルたちは振り返ると、村の中央から魔法のような光が射し込んでいた。悪魔崇拝の儀式が始まったのだ。


「私たち、どうすれば…」エーヴが涙を流しながら呟いた。


「君が悪魔の子なら、結界を解く力も持っているはずだ。」アベルは力強く言った。「さあ、やってみよう。君が信じられないかもしれないけれど、僕たちが一緒にいるために、君の力が必要なんだ。」


リンは深く目を閉じ、心の中で自分を強く信じるようにと祈った。彼はゆっくりと手を広げ、呪文を口にした。すると、リンの手から黒い光が漏れ、空気が震えた。


その光が村の周囲に張られた結界へと向かうと、結界が反応し、激しく揺れ動いた。リンの顔が歪み、全身に力がみなぎる感覚を感じた。彼の体から発せられた魔力が、村の結界に浸透し、次第に結界を押し返していく。


「リン!」


その時、リンは自分の中に眠っていた力が目覚めるのを感じた。彼の瞳の中に異様な闇が宿り、体全体が震え始める。そして、ついに結界が崩れ落ち、轟音とともに森の外への道が開かれた。


「できた…」

リンは驚きの声を上げ、息を呑んだ。


その瞬間、村の中から大勢の村人たちが走ってくるのが見えた。彼らは儀式を邪魔されていると気づき、リンたちを追い詰めようとしていた。


「逃げろ!リン、エーヴ!」アベルが叫んだ。


リンは恐怖を感じながらも、エーヴの手を引き、アベルとともに走り出した。

結界が消え、道が開かれたその瞬間、村の追っ手が迫ってきたが、三人は決して振り返らなかった。


三人は、深い森を抜け、ようやく村を離れた。振り返ることはなかった。背後では、村が崩れ去る音が聞こえてきたが、彼らはもう、その村には戻ることはなかった。


「私たち、一緒にいられるんだね。」エーヴは微笑みながら言った。


リンは涙を流しながら、しっかりとその手を握り返した。

「うん、これからも…一緒にいるよ。」


新しい世界へ、三人は歩み続けた。

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