第11話:突入準備

 嫁の浮気の証拠は揃ってる。ホテルに出入りするときの写真もある。行為の途中の写真も大量にある。


 これだけあれば裁判したって100パーセント勝てるってマコトが紹介してくれた弁護士さんも言ってた。


 それでも、最後の最後に俺とマコトは「あるトラップ」を仕掛けた。


 俺は1泊2日の出張に出ると嫁に伝えたのだ。それも嫁が休みの日で翌日も休みの日を選定して。


 ちなみに、嫁のシフトはあの鷺谷果倫……嫁の友達からゲットした。あの後、マコトが鷺谷さんが不倫している事実を捉えた。


 再度コンタクトを取ってその事実を写真付きで突きつけたら、嫁と互いにアリバイ作りのために協力しあっていたことを白状した。うちは離婚するので、その幇助に当たるので鷺谷果倫さん本人には損害賠償請求することと旦那さんに浮気写真を見せることを言うとあっさり陥落したらしい。


 実際は「不倫幇助」では損害賠償請求は難しいらしい。取って数万円程度。だけど、目的はそこじゃない。嫁に俺達が浮気に気づいていることを漏らさないこと、これ以上の嫁に協力しないことを確約させ、誓約書にサインさせた。これで違反したら自分と自分の家庭が崩壊するのだから、変なことはしないだろう。


 そこまでして手に入れた嫁のシフト情報。嫁に気づかれずに手に入れる必要があった。


 俺、マコト、義両親、義妹、弁護士が近所のファミレスに待機している。家の中は複数台のカメラとマイク。リアルタイムで俺のノートパソコンに映像も音声も入っていている。


 義両親は既に意気消沈。義妹はなぜかテンション高め。


 その理由は、俺のマンションに嫁が浮気男を招いているからである。


 思い返せば、これまでも俺のシェーバーがリビングに置かれていたことがあった。俺はいつも洗面所でしか使わない。リビングに持ってくることはないのだ。嫁がどこかの毛を剃るのに試しで使ったのかな、とか思って聞きもしなかった。


 ある日は冷凍庫にストックしてた冷食がやたら減ってる日があった。餃子2袋、個数にして40個。弁当用に準備していた冷凍ハンバーグ2個、枝豆1袋、400グラム。缶ビール350ml缶が5本。俺が楽しみに取っていた地元の蔵元の日本酒、純米大吟醸百年蔵720ml4000円……。


 俺は昼食用に自分の弁当を自分で作るから冷蔵庫の中身を把握してる。突然ごっそりストックが減ったから焦ったのを覚えている。


 つまり、俺がいない日は嫁は俺達の家に浮気男を招き入れている。しかも、普段しない料理をそいつには振る舞っている。ハンバーグなんか俺が作ったやつなのに!


 そして、今日。既にその浮気男は俺達のマンションの中。もちろん、嫁も一緒だ。1日ラブラブして過ごすようだ。二人がどこかに出かけるときのためにワゴン車も準備していたのだが、これは無駄になりそうだ。


 その様子は手元のノートパソコンですべて見てるし、録画・録音もしてる。義両親もリアルタイムで見て俺の主張が間違っていないことを理解してくれたようだ。


 二人にとっては嫁は実の娘。旦那とはいえ、赤の他人である俺から言っても、どんな証拠を突きつけられても、最後の最後は娘を信じていたと思う。いや、信じたいと思っていたことだろう。


 だが、俺の復讐心は嫁を完膚なきまでに潰し、浮気相手も社会的に抹殺するところまでやってやるつもりだ。


 嫁が浮気男に抱きついたり、キスするたびにお義父さんは俺に「本当にすまない」「申しわけない」と血の気の引いた青い顔で謝っていた。


 お義母さんは「育て方を間違えました。私が悪いです」とか言ってた。


 俺は既にブチ切れていた。完全におかしくなっていたと思う。嫁が知らない男とイチャイチャしていても心は揺らがなかった。静かな風のない湖の湖面のようだった。


 昼食はウーバーでピザとチキンにしたようだ。嫁はまんまと料理ができないことをごまかした。あとは、ビールも飲んでいたからこれから車で出かけることはないだろう。


 夕飯は俺が作り置きしていた、豚バラ肉と白菜のうま煮とれんこんの磯辺揚げ、冷凍ご飯を食卓に出していた。俺の冷凍ストックがまた減った……。そうやって自分が料理ができないことをごまかしていたんだな。


 浮気男はその料理が嫁の手作りだと思って、「美味しい!」「いい奥さんになる!」とか持ち上げていた。ありがとよ。その料理は俺が作ったんだよ。逆立ちしてもいい奥さんにはなれないけどな。


 やがて、嫁と浮気男が一緒に風呂に入ってもなんともなかった。義両親は悲鳴を上げていたし、泣いていたけど、俺は多分傍から見ても無表情だっただろう。


 俺達はあのマンションに突入する。マコトが考えてくれた作戦ではまだ突入のタイミングではない。今行っても嫁は色々と言い訳するだろう。


 未遂だとか言うだろう。下手したら、全ては誤解だとか言い始めるかもしれない。俺達はぐうの音も出ないタイミングを見計らっていた。だからこそ、昼間っから室内をモニタリングしているのだ。


 そして、部屋の電気が消えた。モニタリングしている映像でも部屋の電気は消えた。しかし、かなりマコトが準備してくれたカメラは、かなりいいカメラで自動的に暗視カメラになり、見た目はグレイな映像にはなるものの暗闇でもしっかりと映像がうつっている。


「そろそろだな。準備しようか」


 マコトの声で俺達はマンションに移動して行った。

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