異世界転移 新しい世界で正義の味方になりたかった俺のクラスはアサシンでした。
Mです。
第1話
正義の味方になりたかった。
そんなものからほど遠い
そんなものからほど遠い
自惚れていたんだ。
人より優れたその力を手に入れたことに。
それを己では無く人の正義のために使おうという、そんな
人は後悔する生き物だ。
同時に学習する生き物だ。
だから、そんな過ぎた
そんな
本や映像からいろんな
所詮、
都合が悪くなれば
だから期待するな……
だから、俺が英雄に抱く理想などに……
後悔しろ……
学習しろ……
誰かのために無償でその正義を成す。
それは、ただの
力で支配する悪により強い力で正す正義。
それは、暴力を否定し、暴力で解決する我田引水。
例えどれだけ正当な
いまの
結局、
・ ・ ・
それは、何十年ぶりに訪れた日食の日。
その必要があったのかはわからないが……
もちろん、そんな事件のようなものに巻き込まれるなど知らない。
高校3年生、受験のシーズンということもあり、
その日は半日授業で、12時をまわるまえに帰宅となった。
廊下に出るとそこはなんだか賑やかで……
せっかくの半日授業だというのに、教室の窓から空を眺めたり、
帰宅する下りの階段とは逆に登りの階段にのぼっていく者たち。
丁度、12時に……日食になると、
朝からテレビのニュースも大騒ぎだった。
俺はもちろん、そんな事を関係なしに外に出る。
帰りの電車に乗るため駅へと向かう。
そのために、大きな国道のある通りに向かう。
その途中……
いや、ここ最近はずっとだった。
人影、少し離れた場所をつけてくるような……
ストーカー……いや、それはない……
さて、人と接するのを控えてきた俺に、恨みのある人間など……
よりによって、今日は例の
大通りに出ると、いつも通りの人の数、道路の車通りもそれなりにある。
俺は道路の反対側にまわる為の陸橋に向かう。
その付近に横止めされていた、白い車。
『プップーーーッ』
俺が横を通るとそれを見図る様に、車のホーンが鳴る。
「な……んだ?」
思わず、そのクラクションの音の方向を見るが、まさか自分に対し鳴らされた訳ではないよなと目線を戻そうとしたところ、運転席の窓が開く。
女優のような、整った顔、白く長い髪……
外人……?老化とか、染めたとかではなく自然な色……
そう思えた。
二十歳前後だろうか……
大人びても見えるし、自分と同い年くらいにも見える。
「……間違いないかな、ようやく見つけたよ」
そう、恐らく俺に呼び掛けている。
取り合えず、何が起きたかわからず沈黙してみる。
彼女の後続する車が迷惑そうに車線を変更し走っている。
「取り合えず、積もる話も説明しておきたいことも沢山あるんだけどさ、とりあえず、こっちにまわってこれるかい?」
当たり前のように自分の車の助手席に誘導する。
ガチャとドアを閉める。
断じて、アニメのような整った顔とその綺麗な白い髪の女性に魅かれた訳じゃない。
「にひ……苦労したよ、見た目だって結構違うのに手がかりもなしに、こんなにも毎日をひっそりと生きられていたんじゃねぇ、見つけられっこ無いじゃないか……たくっ……危険だとは思ったけど方向性を変えて正解かなぁ」
彼女はバックミラーをそのにやついた顔で一瞬目線を送ると、俺をつけていた人影を確認するとすぐに目線を反らす。
「あの……思わず助手席にまで乗った人間の言葉では無いと思うんですけど、何が目的ですか?」
俺は彼女に問いかけるが……
「にひひ」
と彼女はただにやつくように笑い、車を走らせる。
「デートをしようか」
そして、答える。
「……どこへ?」
「空でも見に行こうよ……きっと
白い歯をみせるように、カッコつけるように言う。
見た目よりもどこか子供っぽくも見える。
「お弁当は作って来てくれたぁ?ボクは君のハンバーグ弁当が食べたいなぁ」
こちらの今の状況への戸惑いも知らずひとり、へらへらと隣で喋っている。
「弁当なんてほとんど作ったことなし、ハンバーグなんて学校の授業で位しか作ったことないですよ……それに今日は午前授業だったんで弁当も持ってません」
俺はそんな冗談かどうかもわからない彼女の希望に答える。
そして、車を運転している彼女の横顔を改めて見る。
……しかし、さっきからボクって、女の人……だよなぁ
綺麗な顔、そしてそれなりに出ている胸。
「あ……そうだ」
そう言って、片手をハンドルから離して、自分の谷間に手を持っていく彼女から、その目線に感ずかれたと思い、慌てて目を反らす。
彼女は自分の胸の谷間に挟んでいただろう、エメラルド色に輝く石を2つ取り出すと、2つとも俺の手のひらに置く。
「これは?……きれいな石ですね?」
彼女は気が付くと、俺の方を見ていて……
得意のにひひと聞こえてきそうな笑みで……
「……君に渡してくれって、頼まれたのさ……わっととぉ」
そして、赤信号を見て彼女は慌ててブレーキを踏む。
「……因果を繋いだ……」
彼女はそう呟き……
「あっ……一つはボクの大事なものだからかえしてね」
そう言って、運転中だから君が元の場所に戻してとでも言うように、
シャツの胸元をカッパリと広げる。
「うっ……」
からかわれているのだろうか、俺は目線を反らしながらそっと石を置く。
けっきょく自分でその石を置くまで押し込む。
そして、彼女は再びバックミラーを確認すると険しい顔をする。
「伏せてっ」
「えっ!?」
彼女が少し力強くそう言うと、後続から近寄ってきたバイクを運転していた者が突然、運転席側の窓を警棒のようなもので叩き割る。
「ダメだ、彼女の話を聞いてはっ」
割れた窓の外からバイクの運転手が叫んでいる。
「その先にあるのは……後悔だっあんたの都合なんてそこにはないっ!!」
「つかまっててね」
彼女は車を急発進させると……信号を曲がる。
バイクもその後ろを追ってくる。
そして、そのさらに後ろをパトカーが走ってくる。
「ねぇ……止まって、話をすれば、俺も説明しますから」
この状況をきちんと説明さえすれば……
むしろ、助けになってくれるか……
しかし……
「だめだよ、時間がない……」
彼女は後、10分で12時を指す時計を確認しながら答える。
こんな状況で、それを優先するのか……
「このへんで、空がよく見える場所はある?」
「どこかの屋上とかなら……」
「どこ……一番近いのは?」
「俺の住んでるマンションなら……近くに」
「OK、ナビは頼んだよ」
彼女はアクセルを全開にしてにひひと笑い、言った。
もうスピードでマンションの裏の駐車場に侵入すると、車をぐるぐるとドリフトさせる勢いで、車を停車させる。
「なにしてるのさ、早く降りて」
車から半分身体を下した彼女が俺を見る。
「あ……うん」
追っては振り切っていたのか、特に慌てる事無くマンションの屋上を目指す。
さり気なくスマホの画面を確認する。
12時まで後、5分……
「ありゃ……ありゃりゃりゃ」
屋上に続くドアを開けようと、ドアノブを回すが施錠されているドアは開かない。
「あーーー、先に言ってよ」
彼女はそう言って、再び胸に手を入れると……
「四次元ポケットかよ……」
ぼそりと俺が呟く横で、本物なのだろうか……
拳銃を取り出す。
「あ……えっと……待って」
アニメや映画でよく拳銃で開錠するシーンは見たことあったので、少し興味はあったが、実際は飛弾とかしないのだろうか……
「なに?今から大家さんから鍵を借りてこいとかなしね?」
彼女はこちらを見るが、少し力を加えれば発砲できる
「いや……鍵を持ってます」
俺はここの住人には全員に渡されてい屋上の鍵を取り出し、
冷静に構える彼女の隣に立ち、鞄から取り出した鍵で普通に開錠する。
「あ……そう……」
少し拍子抜けしたような表情で
ドアを抜け、屋上に出る。
一応、追ってを気にして律義にドアを施錠する。
空を見上げると、真っ黒く見える月と太陽が今にも重なり合いそうな状態で……
彼女はすでに、屋上に設置されている給水タンクから屋上の天井を貫いているパイプに腰掛けるように腰をかけている。
「うーん……もう、ほとんど隠れてるけど直視するには眩しいねぇ」
彼女は空を見上げながら……
俺は再び鞄をあさり、一つしか入っていなかったが……
「はい」
取り出した黒い下敷きを彼女に渡す。
「なに……?」
不思議そうに彼女が尋ねる。
「えっと……知らない?こうして……」
太陽を見れば……
俺は、手にした黒い下敷きを右手を突き飛ばして空にかざすように、
俺と彼女と太陽の間にその視界を挟む。
「おぉ……よく見える」
「あまり、直視しないように……」
失明などの危険を促す。
黒い下地ぎを横向きに右端を俺の右手が掴んでいた反対側、
彼女が左手で掴むとそこから同時に空を覗き込む。
「さて……何から説明しようか」
ようやく彼女の方からそう切り出す。
「ごめんね、一から説明するには余りにも時間は足りないけどさ」
いつの間にか俺の顔を見つめている彼女。
「……あなたはいったい?」
「異世界人なんて言っても、今の君は信じてくれるのかな?」
彼女はにひひと笑い答える。
「何をしにこっちに来たの?」
信じたわけではない、ただ……だとすれば何をしに……
「君を探しに……会いに来た」
彼女の綺麗な瞳に俺の姿が映っている。
「……どうして?」
理由はなんだ……
「……約束したんだ……大好きな人と」
「あ……」
そんな彼女の答えに……
彼女を映す瞳の奥には別の誰かを見ていて……
「何を……」
約束したのだろう……
「ボクたちのこと、救ってほしいんだよ」
再び彼女は空を見る。
彼女のつけている12時を知らせる秒針が、間もなく天辺に到達する。
「なってほしいんだ、ボクの……」
そこで彼女は言いとどまり……
「ボク……たちの正義の味方にさ」
重なる太陽と月……
その言葉の意味も……
そのどこか寂しそうな表情も……
もう尋ねることもできずに……
俺は太陽に空いたような月の穴に落っこちるように……
もう一度、目を開くとそこは見知らぬ
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