走る

陋巷の一翁

走る

おれは狂っているのか、それとも狂っていないのか。

けれどもそんなことはどうでもいい。

走る。走る。

どこまでも走れるから走る。

疲労を感じないから走る。

苦痛を感じないから走る。

情熱がつきることが無いから走り続ける。


この行為に意味は無い。本当のところ意味は無い。だがおれは走り続け、走り続け、走り続けるだろう。走ることはおれの欲望の全てであり、肉体はそれを支えてくれ、だからおれはいまもこうして走っている。いや実際、この行為には意味は無い。だが。


……足がもつれた。転んだ。初めての静止。だが立ち上がり少しの血を吐くと、おれはまた走り続ける。

痛みを感じた。

傷を感じた。

苦痛も感じた。

だが俺は走り続ける。苦痛を追い越し、痛みを追い越し、情熱すら追い越した。情熱の先は祈りだった。


「なぜ、おれが走り続けることを許すのですか」


問いかける。問いかけながら走るのはやめない。やめない。絶対に。転んだ。また転んだ。でも走り始める。また様々なものをおれは追い越していく。追い抜いていく。けれども祈りだけはつねにおれの先の方にあった。それすらも追い越したいと願う。


追い越した先に答えがあると思った、追い抜いた先に救いがあると思った。だからおれは走り続ける。転んでもなお走り続ける。走り続ける。走れ。


加速していく。加速していくのを感じる。もう転びはしないことを信じる。いや転んでも良いのかもしれない。足が地に着いていないことを感じる。体が宙に浮かんでいることを感じる。いやもう、何も感じない。けれども走っている。それを信じる。信じ続ける。祈り続ける。祈りの答えはおれのなかにすでに。


だから、走り続けるおれを命と呼ぶだろう。

走り続けるおれを人類とも呼ぶだろう。

祈りの先にある物を希望だとも言うだろう。

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走る 陋巷の一翁 @remono1889

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