第6話


 深夜、タクトは部屋に戻り、スマホの画面を見つめていた。


 そこには、ナオが送ってきたアプリが表示されている。


 [GATE SYSTEM - ONLINE]


 (本当に……これで行けるのか?)


 手が震える。

 だが、迷っている時間はない。


 タクトはスマホを握りしめ、画面をタップした。


 ——アクセス開始。


 次の瞬間、スマホの画面がまばゆい光を放った。


 「——っ!」


 視界が歪む。


 周囲の音が消え、タクトの意識が沈んでいく。


 どこまでも続く暗闇。

 しかし、その先に——


 「タクト……?」


 聞き覚えのある声が響いた。


 タクトは、ゆっくりと目を開けた。


 そこには、約束の地が広がっていた。




 *



 タクトはゆっくりと目を開けた。


 そこは、現実とは違う世界だった。


 見渡す限りの青い空。

 どこまでも続く白い草原。

 澄み切った風が吹き抜け、懐かしい感覚が胸を満たしていく。


 (……ここは……?)


 立ち上がると、遠くに一本の大きな木が見えた。

 それはまるで世界の中心にそびえるかのように、どっしりと根を張っている。


 「……知っている。」


 タクトは呟いた。


 この場所を、知っている。


 幼い頃、早織と二人で描いた地図。

 あの時、彼女が言った言葉——


 「ふたりだけの世界を作ろう。」


 (……約束の地……本当に……。)


 だが、現実には存在しないはずのこの場所に、タクトは今、確かに立っている。


 「タクト……?」


 突然、背後から声が聞こえた。


 心臓が跳ねる。


 ゆっくりと振り返ると、そこには——


 龍野早織が立っていた。

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