Ep7 ODIN AND MIRAGE
「というわけで、実践訓練です!」
ローズ先生が衝撃の発言をした。
「これから学園の敷地内にある訓練場に行き、一定数の魔物を討伐する
中には普通の魔物数頭分の強さを持つ魔物もいるんで、それらを倒したら
先生は満面の笑みだが、僕らにとってはそうは行かない。訓練場とはほぼ自然のままの森をそのまま結界で覆ってその中に魔物を解き放っただけの施設だ。そんな視界も通らずなおかつ戦闘を余儀なくされる状況では、アズラエルを襲う刺客が来ないわけがない。
しかし、そんな授業をあえて見過ごしたレーレライのやりたいこともわかるっちゃわかる。「皇太子が襲われる」というとんでもなく危ない状況を逆に捉え、わざと敵戦闘員をおびき出して捕獲する好機としたのだ。表に出ないから問題ないが、もしこんな酷い作戦を正規軍で実行したら大炎上は間違いないだろう。
ただ万が一僕とは別にアズラエルに張り付いている王室の近衛兵が対応しきれない場合、すぐに対応するようにとレーレライに念を押された。
「3人一組で班分けをしてくださーい!」
アザゼル先生の声で、クラス全員が席を立ち、思い思いの相手と班を組む。僕は相変わらずいろんな女子に引っ張られるが、またもアズラエルが助けてくれた。
「君は周りにチヤホヤされたらやりづらいだろう。僕と組まないか」というのだ。くそぅ、イケメンだぜ。
さてと、あと一人だが・・・
「私達とチームを組みませんか」
僕が声をかけたのは、ラミィ・フォン・ミゲルだった。序列が高いので最初こそチヤホヤされていたが、本人が地味だったり髪がボサボサに伸びていて表情が読めなかったりで、今ではクラスメートに距離を置かれていた。今日もぼっちで元の世界での俺に重なって見えたので、誘ったのだ。
「!」
少し面食らった様子だ。
「は、はい…」
「じゃあ決まりだな」とアズラエルもOKを出したので、これで僕のチームは決まりだ。
「結構広いんだな」
僕がそうつぶやくほど訓練場は広かった。10キロかける10キロくらいの面積のイメージだ。
「それはそうと、君たちは何ができるんだ?それが分からなきゃ作戦の立てようがない」
アズラエルが聞いてきた。
「僕は、走れますね」
「私は…隠れる、かなあ…」
ラミィが珍しく自分から口を開いた。
「なんて、全く役に立ちませんよね…」
条件や隠れる度合いにもよるが、使いようによっては意外と…なんてことを思ってるうちに、最初の魔物を見つけた。「シルヴァ・ディーア」という鹿のような魔物だ。森の中では一番スタンダードな魔物で、ノリ的には鹿に近い。というか魔法が使える鹿だ。
「任せてくれ」
アズラエルがそういったので僕たちは気づかれないよう近くの茂みに隠れた。
『
そう呪文を唱えると、アズラエルの右の指先に金色の魔法陣が展開され、そこから槍のような稲妻が飛び散った。稲妻はまっすぐシルヴァ・ディーアに飛んでいき、ディーアの回避行動や防御魔法も虚しくターゲットに突き刺さり、超高電圧で一瞬のうちに感電させた。
「うわあ…」
僕はその威力にドン引きした。
「僕も負けてられませんね」そうつぶやき、近くに獣道をいくつか探した。
「ここでいいかな」
まだ新しいフンがあった道に狙いを定め、僕は身体強化魔法を1割ほど起動した。クラウチングスタートの姿勢で下半身に力を溜める。すると、足の周りに青い稲妻が飛び散った。
『
それっぽい呪文をとなえ、足の力を一気に開放する。その瞬間僕はものすごい勢いで跳躍した。獣道にそって跳び、途中の木を足がかりにしてさらに方向転換と加速をかけた。その姿はまさに、森の中を飛んでいるようだった。
「いた」
獣道を歩くディーアを1匹見つけ、素早くSTVSを鞘から抜いた。
「ごめんな、苦しませないから」
そう言ってディーアの鎧にも使われるほど丈夫な皮膚を通りすがりに後ろから一撃で切り裂き、頸動脈を断った。
「まさかここまで速いとはね」
あとから息を切らせて追いついたアズラエルが言った。
「でも、イズはまだ本気じゃないだろ」
その何気ない、しかし的を射ているアズラエルのつぶやきに一瞬肝が冷える。
「まあ、とりあえず2匹ってとこかね」
ディーアのスコアは1匹あたり控えめの1なので、もう少し難易度の高い魔物を捕まえないと勝てない。
「あ…いました…」
消え入りそうな声でラミィが話した。その指差す先にはシルヴァ・ラットというリスのような小さな魔物がいる。
「ああこいつか…捕まえるのが難しいんだよね」
声を潜めてアズラエルが言った。
ラットは外敵に対して敏感で、捕まえようとしても先に察知されてしまう。とても難易度が高いので、スコアは5に設定されていたはずだ。
「私なら…」
おもむろにラミィは立ち上がると、胸の前で腕をクロスさせて呪文を唱えた。
『
ラミィの周りに紫色の魔法陣が展開され、次の瞬間ラミィが消えた。というか、認識できなくなった・・・・・・・・・。
「周りからの認識を完全に阻害する魔法か。なるほど、こりゃいいな」
僕がそうつぶやくうちにいつの間にかラミィはラットを捕まえたらしく、次に姿を表したときには両手に気絶したラットを3匹も抱えていた。
しかし、その影では自らの縄張りを荒らされた魔物が爪を研いでいた。
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