第2話 黒髪巨乳生徒会長とエッチ その2

「気持ちよかった……」


 本当に満足しきったという顔で、真っ裸の紫乃は生徒会室のソファに横たわっていた。日はもう落ちて、ほとんどの生徒が下校している時間帯。俺たちは、都合三時間ほども絡み合っていた計算になる。


「うん。晴れ晴れ。なんか、心のつかえがとれて、解放されたって感じる」


 ソファにへたり込んでいる俺の横から、寝そべっている紫乃が野に咲く花のような微笑を送ってくる。


 先ほど俺を誘惑していたときとは全く違う、かといっていつもの学園優等生の作り笑いでもない。何かに満たされて幸せの中にいるというような、まだ見たことのない紫乃の表情だった。


「やってしまった……」


 欲望に流されてしまったと口にした俺に対して、紫乃がくすっと笑ってきた。


「何言ってるの? 巨乳美少女JKとエッチ、気持ちよかったでしょ? ちなみに、初めての私はものすごく気持ちよかった」

「…………」


 俺は、じろりと、紫乃を見やった。


「そんな顔しない。私の役に立てたんだから、誇っていいのよ。人を一人、満足させて幸せにしたのよ?」

「そうなのか……?」

「ええ」


 紫乃は、はっきりとうなずくと、ぽつぽつと話し始めた。


「両親から期待されるがままに、周囲に言われるがままに、良い子を演じてきたわ。紫乃は賢くていい子ねって。みんな紫乃ちゃん紫乃ちゃんって慕ってくれて」

「…………」


 俺は、黙って紫乃の言葉を聞いていた。


「でもいつしかそれが重荷になって。どいつもこいつも……私の上っ面しか見ていない。本当の私のことを何も知らないくせにって」

「そういう……もんなんじゃ……ないのか?」


 合いの手を入れた俺に、紫乃が感情をむき出しにしたセリフを発する。


「ウザい。みんなウザい。そんな気持ちと、そんなことを思っちゃいけないっていう感情の板挟みになって」

「そう……だな……。紫乃、ずっと前から、そんな顔をしてた気がする」

「光也だけだった。私に期待せずに、あこがれもせずに、ただただダルそうに答えてきたのは」

「…………」


 昔の事を思い出していた。ほんの一年前の、入学式の最初に紫乃にあった日のことだ。


 学園の生徒たちに囲まれた紫乃は、確かに「見た目」だけは光り輝いて見えた。でもなんでだろうか。その笑顔が作り物のような気がしたから、中学までは目立たないモブ生徒として過ごしてきた俺だったのだが、そのときばかりは最初の会話で聞いてみてしまったのだ。


「なんか、無理して笑ってないですか?」

「…………」


 そのときの紫乃の驚いて固まった顔が、思わず目の前に浮かんだ。


「あのときから、ずっとずっと光也の事を狙ってたの。この男なら仮面の下がバレても大丈夫なんじゃないかって。だからクラスが一緒だと分かったときは、部屋で飛び跳ねて喜んだわ。知らないでしょう、あなたは?」

「そんな……なのか……」

「ええそう。種明かし。私は光也のことをずっとずっと虎視眈々と狙ってたの。警戒されないようにさりげなくクラスで近づいて、生徒会に誘い込み、この日を待ってたの」

「こんなレ○プまがいのでよかったのか?」


 と、紫乃はにっこりと笑って、言い放ったのだ。


「大満足。これからよろしくね、またストレス発散をお願いすると思うから」

「俺たち、まだ恋人同士じゃないよな。セフレ……っていうのか?」

「恋人でもセフレでもないわね。強いて言うなら、ストレス発散用の人間バ○ブ……かしら?」

「人間……」


 言葉を失った俺に対して、紫乃がウソウソと、笑った。


「言葉は悪かったけど、気持ちよかったでしょ? 私のストレス発散相手。悪くないんじゃない?」

「それは……」

「カラダの相性はよかったでしょ?」

「よかった……というか、俺は童貞だったんでわからない。わからないくらい気持ちよかった」

「正直でよろしい」


 紫乃は、またにんまりと笑ってくれた。


「もう教師が見回りにくるわ。着るものを着て、ここを出ましょう」


 そう言った紫乃にうながされて制服きた。それから生徒会室を後にして校舎から出た。


 帰り道の下りスロープや、公園脇の国道、駅前まで紫乃とずっと会話していたんだが、そのときの内容は覚えていない。家に帰って部屋のベッドに横になって、そのまま疲れに任せて寝落ちしてしまった俺なのであった。

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