第17話 誕生日にアレンジオムレツサンドを作ろう!
「ふぁー。よく寝た」
玲奈は目を覚ますと、ぼんやりと天井を見つめた。
今日は休み。
特に予定も入れていないし、雑誌でも読んで過ごそうか。そう思いながらベッドから出た瞬間──
「栗さーん! 朝ごはん作ったんで、来て!」
チャイムが鳴り、元気な声が響いた。
「……え?」
玲奈は状況がよくわからないまま、寝癖だけ手早くヘアクリームで直して彩夏の部屋へ行った。
テーブルの上には、サンドイッチと卵スープが並んでいた。
「おはよう栗さん!」
エプロン姿の彩夏が満面の笑みで出迎える。
「これ……彩夏が作ったの?」
「そうだよー! 栗さん、今日が誕生日でしょ? サプライズで朝ごはんを作る作戦大成功! いえーい!」
サンドイッチの断面には、ふわふわの卵、トロリととろけたチーズ、そして鮮やかな緑のほうれん草が見える。
「美味しそうだね。今日が誕生日だなんて、私自身忘れてたよ。ありがとう。……オムレツサンド作ったの?」
「そう! 最初の頃に教えてもらったたまごサンドを、あたしなりにアレンジしてみたんだ!」
玲奈は驚きつつも、ひとつ手に取ると、サクッと軽いトーストの食感と、チーズのコク、ほうれん草の優しい味わいが口の中に広がった。
「……美味しい」
思わず呟くと、彩夏がほっとしたように笑う。
「よかったぁ……! かなり練習したんだよー」
「……そっか」
玲奈はもう一口かみしめながら、じんわりと胸が温かくなるのを感じていた。
引っ越してきてそうそう、彩夏が鍋をまるこげにした日が懐かしい。
「成長したなあ、彩夏」
「えへへ。栗さんのおかげだよー」
「もう教わる側じゃなくなったんじゃない?」
「うーん、でも覚えることはまだたくさんあると思うんだ。だから……これからも、教えて!」
彩夏の真っ直ぐな言葉に、玲奈は思わず吹き出した。
「しょうがないなぁ。じゃあ、次は何を教えようか」
「んー、そうだなぁ……次は栗さんが一番好きな料理を教えて!」
玲奈は少し考えてから、にやりと笑った。
「それじゃあ、昼は私が作るよ。誕生日だからって、ずっと甘えてるわけにはいかないしね」
「わーい! じゃあ、それまでに買い物に出かけてお腹すかせようよ! ホールケーキ買っちゃお!」
「二人でホールケーキは流石にでかすぎじゃない?」
「いーのいーの。だって誕生日だよ!? 何食べても許されるって!」
二人で笑いながら、また一緒に食卓を囲む。
料理が繋いだ縁は、これからもずっと続いていく。
玲奈は笑って、できたてのサンドイッチをもうひとつ頬張った。
END
おつめし! 〜干物女とオシャレ女子はおつとめ品でごはんを作る〜 ちはやれいめい @reimei_chihaya
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