第14話 新じゃがのバター醤油焼きを作ろう!

 もうすぐ春が来る。と、スーパーに陳列された野菜たちを見て玲奈は思った。


 ふきのとう、菜の花、春キャベツに新じゃが。生鮮品の顔ぶれで季節の移ろいを感じる。

 年中並んでいるニンジンや茄子、長ネギももちろんいるけれど、今の時期は旬の野菜を食べたいものだ。

 野菜を吟味していると、先輩に声をかけられた。


「栗田さんも買い物? 春めいてきたわよねぇ」

「私は春キャベツにするか新じゃがにするか悩んでます」

「いいわね! うちの子はボリュームたっぷりにしないとすぐに腹ぺこになるから困ったものよ。うーん。モヤシでかさ増しして肉野菜炒めにしようかしら」

「食べ盛りの学生さんがいると大変ですね。ママさんとしてもおつかれ様です」

「ちゃんと美味しいって言ってくれるからいいんだけどね。ふふふ」


 ニコニコ笑いながら、先輩はキャベツとモヤシをかごに入れて精肉コーナーに歩いていった。


「さて。彩夏もいつも食べ盛りだから、腹持ちいいもん作ろうかな」


 玲奈はお値引きコーナーにちょこんと乗ったキズあり新じゃがを買うことにした。


 帰宅して夕飯の支度をしていると、勝手知ったる人の家で彩夏がやってきた。


「栗さんただいまぁ! 今日は何を教えてくれるの?」


「新じゃがのバター醤油焼きよ」

「皮むき手袋装備!」

「大丈夫、今回のは新じゃがだからこのままいける」


 玲奈は小さめの新じゃがを皮ごと半分に切り、バターを溶かしたフライパンでじっくり焼いていく。表面がこんがりしてきたところで、醤油をじゅっと回しかけると、甘じょっぱい香りが部屋いっぱいに広がった。


「これは間違いなく美味しい……!!」


「ほら、できたよ」


 彩夏がホクホクのじゃがいもを一口。


「ん〜っ!! バターと醤油の組み合わせ、最強!!」


「でしょ? 新じゃがは皮が薄くて柔らかいから、皮ごと食べるのが正解」

「これ、お酒飲みたくなるやつ。ずるいよずるい。栗さんの教えてくれるやつ酒に合うのばっかりだぁ……」

「ふっふっふ。白ワインを買ってあるんだが、飲むかな?」

「飲む飲む飲む飲む! 白米もつけて!」

「ほいきた」


 ついでにフライパンにたまごを入れて、目玉焼きもつけちゃう。バター醤油味の目玉焼きだ。


「きゃー! きたー! 白米のお友だちぃ!」

「テンションたっか!」


 ごはんにとろりとたれる、半熟よりやや固めの黄身。そこにバター醤油をかけてレンゲでかき混ぜていただく。


「おいひい、おいひいよう。お芋も目玉焼きもうまー!」

「本当に美味しそうに食べるわよね、彩夏は。作りがいがあるわ」


 予想通り彩夏は山盛り白米を頬張って、フライパンを空にする勢いで食べた。

 こうして、二人の春らしい晩酌が始まったのだった。

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