第18話 先祖の想い
グレィスですっ。春の陽気がポカポカ気持ち良い季節に、新しいお友達が出来ましたっ。
遠くの方からやって来たアーダーさん。彼女の父はずっと昔にグラスさんに救われた人でしたっ。
引っ越してからはアルブルタウンのカフェで華麗な踊りを見せてくれたり、時には冒険家としてわたしと一緒に頑張ってくれる事もありましたっ。
……今朝、ご飯を食べている時に、お母さんが言いましたっ。
「グレィス、今日は一緒に来て欲しい所があるの」
「どこへでしょうかっ」
「それは後で説明します。ひとまず、広場へ行きましょう」
お母さんはわたしをどこへ連れて行くのでしょうかっ……。気になりながらも、わたしは町の広場に一緒に来ましたっ。
そこにはグラスさんと、ヴェーチェルさんがいましたっ。
「おはようございますう」
「皆、息災で何よりだ」
「今日はこの二人と、ある場所まで行くの」
「どんな場所でしょうかっ、気になりますっ」
「着いたら、あらためて教えますからね」
「それじゃあシビル……シルビアさん、行きましょお」
「グレィスは私が送り届ける」
バサアッバサアッ……!!
わたしはヴェーチェルさんに抱えられ、お母さんはグラスさんに抱えられ、森の向こうへと飛んで行きましたっ。
「それにしてもすごい景色ですっ」
「遠足に行くつもりでリラックスしていると良い」
「グラス……行くんだよね、あの場所に」
「はいですう……でももう心配は無いですう」
しばらく飛んでいると、また森が見えてきましたっ。
「あの森、こんなに綺麗になったんだな……」
「はい、みんなでチカラを合わせて森を蘇らせたんですう」
「鳥もリスもいっぱいいますっ!」
「ここはだいぶ昔荒れ放題だったが、近年整備されて美しい森になった」
こうしてわたし達は目的地に辿り着き、地上へと降り立ちましたっ。
「着いたわ、ここが『シビルズ村』よ」
「シビルズ村……っ?」
シビルズ村……確かっシビルって、お母さんが昔グラスさんと暮らしてた時の名前だったようなっ……。
この村には草が豊かに生えていて、花壇には沢山のお花が咲いていて、人が住んでいる建物もいくつかあり、向こうにはビースト族の子供が人間の大人と仲良く遊んでいるのが見えましたっ。
「なんでビースト族の子供が人間の大人と一緒にいるのっ?」
「この村は親を亡くした子供達を種族関係なく保護している所なの」
ヴェーチェルさんはこの村についてさらに説明しましたっ。
「ここはおよそ27年前、恐ろしい仮面を付けた人間を憎む集団によって破壊された村だった。シルビアは当時この村に住んでいた子供だったが、両親は奴らに潰され、命からがら逃げ出したのだ」
「それから2年経って、森の中を彷徨っていた所をわたしグラスが保護して、色々あって現在に至るんですう」
「そうだったのですかっ……」
「ええ……ここが私シルビアの本当の故郷。大好きだった両親を潰した奴らもその後、内部の反逆によって壊滅し、その後似たような者達が現れる事も無かった」
「つまり、お母さんの両親がいた所……なのねっ」
「結局奴らは『我々の種族こそ世界を制する』みたいな考えで、特殊なチカラの無い人間を潰していたんだろうか……今となってはもうどうでもいい事だけど」
ヴェーチェルさんとお母さんから告げられたこの村の昔話。そんな悲しい事があって、お母さんは長い間ひとりぼっちだった所をグラスに救われて、今わたしはここにいるっ……。
「
「そうなんですねっ……」
「全てが片付いた後、私はグラスも含めた有志を募り、この村を一から作り直す事にした」
「家の残骸は全て撤去して、新しい家を作って、田畑も耕して人が暮らせるようにしたんですう」
「それで、この村で孤児を育てる人達も種族問わずに集めた。かつてのシビルと同じように両親を喪った子供や親に捨てられた子供などを見つけ次第、この村の人達が引き取って今こうして世話をしている」
この村で暮らしている子供の保護者も人間ばかりではなく、他の種族の大人もいますっ。
「やがてこの村で育った子供は大人になり、ここでまた新たにやって来た孤児を育てるか、或いは新天地を目指して旅立つか……だ」
「シビルちゃんみたいな悲しい思いをする子供達が一人でも多く救われてほしいんですう」
「こんな所があったんですねっ……初めて知りましたっ……!」
「グレィス、最後にひとつ来て欲しい所がある」
わたしはお母さんに案内されて、わたしと同じ背丈のある石碑の所に来ましたっ。
「これはっ……」
「かつてこの村に住んでいた人達の慰霊碑だ。私の家の残骸の跡地に建てられた」
『かつてこの地に生きた人達よ、安らかに。
シルビア・ブレイバル』
そう刻印された石碑の周りには、沢山のお花が供えられていましたっ。
「彼らは今を生きる者達をここから見守っている。グレィスも挨拶するといい」
「私も、両親に感謝を捧げるためにここに来ました……」
「あれっ、お母さんっ?」
するとお母さんは懐から、『dear Glaice』と書かれた鞄を肩にかけたテディベアのぬいぐるみを取り出しましたっ。
「あっ、それってっ……!」
「このオルゴールの入ったぬいぐるみも、ここにあった私の家で見つかったの……さあグレィス、この石碑に祈りを捧げて下さいね」
「分かりましたっ」
お母さんはテディベアのオルゴールのネジを巻きましたっ。するとっ……。
♪〜〜〜♪♪〜〜〜〜♪〜♪〜♪〜〜〜〜
綺麗なオルゴールのメロディが流れましたっ。
「とうさん、かあさん、また会えたね……」
オルゴールの音と共に、わたし達は石碑の前で黙祷しましたっ。
オルゴールの音が止まると、わたし達は再び前を向きましたっ。
「…………では、そろそろ帰りましょう」
「みんな元気に過ごせると良いですねえ」
「ここで暮らす者達も時折アルブルタウンを観光する事がある。機会があれば話を聞いてあげるといい」
「分かりましたっ!では、行きましょうっ!」
バサアッバサアッ……!!
わたし達は再び空を飛んで、アルブルタウンまで帰っていきましたっ。わたしはまたひとつ世界の一部を知ったのでしたっ。
「……ところでヴェーチェルさんっ、ムソーン君はお元気でしょうかっ?」
「今も打倒ポースを目指して修行をしている所だ。気持ちは分かるが、息子の思いはあまりにも強い」
「近い内にまた、勝負を挑む感じでしょうかっ?」
「そうだろうな……ポース殿にも伝えておいてくれ」
・・・
アルブルタウンに帰って来たわたしとお母さんは、お父さんと一緒に別の家に住んでいるお父さんの両親、つまりはお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会いに行きましたっ。
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃん、こんにちはっ!」
「エイリーク、ただいま帰還しました」
「ご無沙汰しております」
「エイ坊達も元気そうで何よりだな!」
「孫の活躍も聞かせてくれると嬉しいわ」
この日はしばらく、一家団らんのひと時を過ごしていましたっ。わたし達の親の親のそのまた親も、色々な想いを子に受け継いで、今この世の中を生きているんですっ。わたしも将来は母親として子供に今までの事を沢山教えてあげたいなと思いますっ!
第19話へ続く。
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