第16話 そのチカラは、世界の一部

 グレィスですっ。わたしとグラスさんがポース君の故郷に伝わる、星のドラゴンが引き起こした災い、『星竜禍』のお話を聞いてからしばらくの時が過ぎ、季節は少しずつ暖かくなってきましたっ。


 ポース君は両親の付き添いで、色々な種族の集落へ行って彼らの生き方を学んだり、星のチカラを上手く使うための修行をするようになりましたっ。


 ビースト族やマリーン族やインセクト族など……色々な種族の生き方やチカラに触れる事で、ポース君は色々な事を学んだみたいですっ。ただ、バード族の集落だけは行かなかったというか行けなかったというか……あそこには、ポース君を宿敵と睨むムソーン君がいますからねっ……。


 わたしはわたしでっ、アルブルタウンのお店の手伝いや、遠い所で見つかった珍しい素材を凍らせて持ち帰ったりして色々頑張っているんですっ!


 そんな毎日が続いた、ある日の晩っ……。


「グレィス、急ですまないが、明日は俺の依頼に付き合ってくれないか」

「どうしたんですかっお父さんっ」


 父エイリークが突然わたしに話を持ちかけますっ。


「最近、森林に現れてはやりたい放題に悪さをするという大型の猛獣をたおしてほしいという依頼だ。報酬は良いが、俺のチカラだけでは勝てるかどうか分からない……」

「……それでっ、わたしの氷のチカラが必要だって事なんですねっ!」

「作戦はこうだ。俺が奴を引き付けて釘付けになっている所にグレィスが背後から忍び寄ってその掌の中の氷の魔力を思いっきり放出するんだ」

「……言っておくけどっ、これは危険も伴う事なんだよねっ……」

「最後に聞いておくが、今回ばかりはタダでは済まないという事だ。グレィス、こんな父の事を手伝ってくれるか……?」


 わたしは答えましたっ。


「今までわたしに冒険の楽しさを教えてくれたお父さんなんだからっ!今度はわたしが冒険っていいなと思い出させてあげるんだからっ!」

「一体どこの誰に似たんだか……出発は明日の朝早くだ、しっかり準備しておくように!」

「はいっ!」


 これ以上無い危険な依頼っ……わたしとお父さんは明日の支度を済ませて眠りにつきましたっ。


・・・


 翌日、わたしとお父さんは猛獣が現れるという森林の中を進んでいましたっ。


「ガキの頃から楽しんでた冒険ごっこから、本物の冒険をするようになり、今日は娘も一緒とは、生きてりゃ色々あるもんだなあ……」

「わたしも、あの日、あんなチカラをわたし自身が持っていただなんて信じられなかったっ」

「グラスに守られたシルビアと、俺の勇気が合わさって生まれたのがグレィスなんだからな……」


 なんて話をしているとっ……!


「……待て……向こうにいるのは……!」


 お父さんが向こうに何かの気配を感じて眼が鋭くなりましたっ。


ザワッ……ザワッ……


 その先に、確かに話に聞く『猛獣』はいましたっ。昔わたしとポース君を襲った奴の二倍以上はありそうな体格のっ……!


「間違いない……あれが今回の標的だ……今から俺が正面から奴を誘き寄せる、グレィスは注意深く奴の背後に近付き、氷のチカラをお見舞いしろ」

「了解ですっ!」


 お父さんは背負った剣を抜き、猛獣の前に立ちました!


「俺はアルブルタウンの勇者、エイリーク・ブレイバル!!!」


 勇ましく名乗りを上げるお父さんっ、男の子っていくつになってもこんな調子なのかなっ……なんて考えている余裕もなくわたしは猛獣の背後に回り込むように走り回りましたっ。


 森の中は草や枝や木が走るのを妨げるように点在していますがっ、わたしだって幼い頃からの冒険ごっこで鍛えた土地勘があるんですっ!障害物をかき分けて標的に近付きますっ!


グオオオオオ!!!ガキン!ゴキン!


 向こうから猛獣の重く低い咆哮や鉤爪がお父さんの剣を響かせる音が聞こえてきますっ……奴は思った以上に強力なんでしょうねっ……!


「こんなの……氷竜グラスの方がまだ強いって感じだな……オリャア!!!」


ズバシュッ!


 お父さんの剣が猛獣の顔を斬りつけますがっ、それでも怯まずに猛獣は鉤爪を振るっていますっ……今わたしは、まっすぐ走れば奴の背後という所まで来ましたっ。ここでやらなきゃ、お父さんが危ないっ……だからわたしが……やらなきゃ!!!


「俺は最後まで諦めない!俺は勇者だから!!!」


 猛獣が両腕を振り上げ、お父さんにトドメを刺そうとした所にっ……!!!




「わたしだって、勇者ですっ!!!!!!」




ドシュピシャキィィィイイイイン!!!!!!




 わたしは猛獣の毛だらけの背中に、ありったけのチカラを込めて押し付けましたっ……!


 猛獣は、両手をあげた格好のまま、氷の彫像となりましたっ……!


「……討伐完了ってやつだな」

「お父さんっ……お疲れ様でしたっ!」

「さて、帰るか」


・・・


 その後、氷の彫像となった猛獣はグリュー院長の所に運ばれて、貴重な標本として生物研究に役立てられたそうですっ。


「これ、氷が溶けたら目覚めちゃうんじゃないか、心配だわ〜」

「フロース、多分大丈夫だと思うよ〜〜。あ、エイリークさん、これ今回の報酬だよ〜〜〜」

「また、チカラが必要なら言ってくれ」


 多額の報酬を受け取った父を見るわたしっ。


「それにしてもすごい報酬だねっ!今夜は豪華なご馳走が食べれるかなっ!」

「俺は必要以上の贅沢はしない主義だからな……でも、娘のワガママぐらい聞いてやってもいいか」

「それじゃあっ大きなオムライスが食べたいですっ!」


 その晩わたし達は家族揃って美味しいオムライスをお腹いっぱい食べましたっ。わたしが初めて大きな猛獣を仕留めた日を、両親は涙ながらに喜んでくれましたっ。今日のお母さんが作ったオムライスは特別塩気が強かったですっ……。


「二人とも無事で、本当に良かった……」

「シルビア、俺も同じ気持ちだよ。グレィスよ、一緒に戦ってくれたおかげで今日も俺達はこうしていられる」

「……今日は、今までで一番怖かったっ……けどっ……わたしっ、頑張ったからっ……」

「だからグレィスにひとつ言っておく。グレィスの持つチカラは…………!」


   * * * * * * *


 あれからさらに数日後、ポース君の13歳のお誕生日がやって来ましたっ。


 その日の晩、わたしはポース君の家で夕飯を食べましたっ。わたしの家の誕生日の料理とは違っても、とても美味しかったですっ。


「ポース君っ、お誕生日おめでとうっ!」

「ありがとうグレィスちゃん……そうだ、実はどうしても見てほしいものがあるんだ、一旦外に出てくれる?」


 わたしはポース君に連れられ、家の外に出ましたっ。その様子をポース君の両親も見守っていますっ。


「ポース、いよいよ見せるんだな?」

「これまでの成果、グレィスさんに見せて下さい」

「分かった……じゃあ、行くよ……」

「何をするのかなっ……」


 ポース君は、夜空に向かって右手の人さし指を向けて、横にひゅんと振ったっ。


・ 。

☆∴。 *

  ・゚*。★・

   ・ *゚。   *

     ・ ゚*。・゚★。

      ☆゚・。°*. ゚

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           * ☆ 。・゚*.。

              * ★ ゚・。 * 。

                ・  ゚☆ 。


ジュウウウウウウウン!!!!!!


 空にきらめく流星の一筋っ。


 ポース君のチカラ、星のチカラは触れた者を跡形もなく消失させるっ。


 その光は綺麗だけど、怖いっ。


 でもっ、ポース君の放った光は、優しさの光でもあったのっ。


「ポース君っ……本当にスゴイよっ……!」

「まだまだこのチカラを制御するために、沢山の事を勉強する必要がある。あと二年でこのチカラをぼくが思う正しいチカラに育てていきたい」

「……そうだっ、わたしこの前さ、お父さんからこう言われたんだっ、生まれながらに持っていた不思議なチカラとか才能とかの話なんだけどねっ、最初は誰でもそのチカラに戸惑う事だってあるんだけどっ、そのチカラを大切に育てればっ、この世界をもっと良い所にする事が出来るんだってっ」

「それって、ぼくのこのチカラの事だよね?」

「そうだよっ!そしてわたしは気付いたのっ!生まれながら持っていたスゴイチカラはっ、ポース君のチカラもっ、グラスさんのチカラもっ、アルブルタウンに住むみんなのチカラもっ、わたしのチカラもっ…………!」




「 世 界 の 一 部 な ん だ か ら っ ! ! ! 」




「世界の、一部……」

「だからこれからもっ、それぞれのチカラをこの世界のために役立てようっ!これはわたしとポース君とっ、この世界に生きるみんなとの約束だよっ!!!」

「……うんっ!!!分かったよグレィスちゃん!!!」


 生まれながら持っていた特別なチカラは、この世界を形成する一部なんだって、あの日の夜にお父さんから言われたのっ。わたし達はこれからもっ、このと共にこの世界を生きていく事を誓ったのっ。


 わたしとポース君の物語は、まだまだ始まったばかりだからっ、これからもっ、わたし達アルブルタウンのみんなの事を……どうか、見守ってくれると嬉しいなっ!!!




   * * * * * * *




 ある日の夜明け。アルブルタウンに足を踏み入れる誰かの姿。


「ここがアルブルタウンかー!憧れのあの子に会えるかなー!アハハッ!」


 第17話へ続く。

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