第4話 わたしとぼくの生きる世界
グレィス・ブレイバル14歳。
ポース・ホープスター12歳。
アルブルタウンに、春が来た。
多種多様な種族の民が集まり発展した町、アルブルタウンに住む人間の少女グレィスと、遠い大陸からやって来たドラゴンの少年ポース。
この町での二人の一日が始まる。
・・・
「お父さんっ、お母さんっ、おはようっ!」
「おはようグレィス、今日もグラスの手伝いに行くんだって?」
「うんっ、ポース君も一緒だから楽しみっ!」
「ポースとも仲が良くて何よりだ。まるで昔の俺とシビルみたいだな」
「あの時は楽しい事もあれば恥ずかしい事もあったけどね……」
「恥ずかしい事って何っ?」
「面白くない話だから知らなくていいぞ……」
わたしっ、グレィス・ブレイバルっ!アルブルタウンに住む14歳っ!お父さんのエイリークは町が誇る冒険家で宝探しをしたり大きな怪物を退治したりで大活躍してるのっ!幼い頃から当時はシビルと呼ばれていたお母さんと一緒に冒険ごっこをして、15歳の時に二人で山に登ってっ、頂上にある緑の石を手に入れて下山してっ、二人は正式な冒険家になったのっ!その後二人は結婚してわたしが産まれたのっ!ある事情によって氷竜のグラスさんのチカラの一部を受け継いだ上でねっ……。
「私もグレィスと同じぐらいの歳の時は良くグラスの仕事の手伝いをしたんだよ」
「知ってるよっ、グリューさんの使う薬草を採りに行ってたりしてたよねっ!」
「私とグラスが一緒に過ごしてた話のほとんどを覚えているのもすごいよ、グレィスは」
お母さんのシルビアは子供の頃森で一人ぼっちだった所をグラスさんに助けられて育てられてっ、お互いを支え合う事を条件に一緒に暮らしてたのっ。悲しい事に本来住んでいた所は家族もろとも悪い奴らに滅ぼされちゃってたけどっ、両親の思いを受け継いで強く生きてっ、わたしをこの世界に生み出してくれたのっ!わたしが6歳の時にお母さんから貰ったオルゴール入りの鞄に『dear Graice』と書かれているテディベアのぬいぐるみは、わたしの大切な宝物なのっ!元々お母さんの両親が託してくれたものだと聞いてっ、感動したのを覚えているよっ!
朝食を食べて支度をしたらっ、みんなの待っている所へ行くよっ!
「それじゃっ、今日も行ってきますっ!」
「今日も冒険家として名を上げに行くからな!」
「二人共、気を付けていってらっしゃい」
こうしてお父さんはいつもの冒険にっ、わたしはポース君とグラスさんの待っている所へ向かったのっ。小さい頃はポー君と呼んでたけどっ、今はポース君って呼んでるよっ。
「おはようっ!グラスさんっ!ポース君っ!」
「おはようございますう」
「グレィスちゃん、おはよう」
アルブルタウンの広場でっ、グラスさんとポース君に会いましたっ。いつもの優しい口調のグラスさんっ。ポース君はグラスさんが今朝迎えに来てここまで連れて来たみたいっ。
「グラスさんっ、今日は何をするのっ?」
「今日はこの町のカフェからのお仕事ですう。最近発見された、美味しいフルーツが実る木から果実を採りに行きますう。収穫したら、それでお店の新メニューを作るんですう」
「美味しいフルーツ、ぼくも食べてみたい」
「それじゃっ、行ってみよーっ!」
・・・
わたしとポース君はグラスさんの案内で森のどこかにある美味しいフルーツの実る木が沢山生えている所にやって来たのっ。
「ここがそのフルーツが沢山生えている所ですう」
「見た目はリンゴに似ているねっ」
「でも普通のリンゴよりも甘くてジューシーで、引力を発見したある科学者もビックリする美味しさだって話題になっているんですう!」
「一個ぐらい、食べてもいい?」
「一個ならいいですけど、後で美味しいアイスを作りますからねえ」
こうしてわたし達はフルーツ集めのお仕事を始めたのっ。
「思ったより沢山実っているねっ」
「籠に入る分だけ持ち帰るって約束ですよお」
「あっ、あんな高い所にも木が生えてる……」
高い所にもフルーツの木が生えている事に気付いたポース君がグラスさんに聞きましたっ。
「ちょっとだけ飛んで、あのフルーツ採っていい?」
「大丈夫ですよお、これは将来空を飛ぶための訓練になりますからねえ」
「じゃあ、行ってくる」
バッ!
ポース君は高い所にあるフルーツの木に向かって飛んだっ。ポース君の背中にはまだまだ小さいけど翼が生えていてっ、ほんの数秒ぐらいなら飛行する事も出来るんだっ。
「これぐらい、採れればいいかな」
フルーツを収穫するとっ、ポース君は沢山のフルーツが入った籠を背負ったままゆっくりと降りてきたっ。
「ポース君、今日も上出来ですう〜!」
「ありがとう……一個食べてみるね」
ポース君は採れたてのフルーツを一個食べましたっ。
パクッ
「わあっ……口の中が、黄金の泉に満たされていくような感じ……ここが世界の桃源郷だったんだ……!」
「なんて的確な言い方……わたしも食べたくなりますう……」
「こっちも食べてみよっか!」
見事な食レポを披露するポース君の前でっ、わたしとグラスさんもそのフルーツを食べてみましたっ。
パクッ
パクッ
「すっごーいっ!今までに食べたフルーツの中でも最高の領域に達してるみたいだよーっ!」
「世の中にはこんなに美味しいものがあったという事を、またひとつ勉強した気分ですう!」
「でも、ここで全部食べたらダメだからね。ちゃんと持ち帰らなきゃ」
「そ、そうだねっ!それじゃあ戻ろっか!」
「はいですう、この後はみんなに美味しく味わってもらうんですからねえ!」
フルーツの美味しさを全身で感じた後でっ、わたし達はアルブルタウンにあるカフェに行きましたっ。
・・・
わたし達はカフェの店長さんにっ、収穫したフルーツを届けましたっ。
「これがっ、みんなで集めたフルーツですっ!」
「おお、これは実に美味しそうだ、見ただけで分かる、アルブルの新名物になりそうだ」
「では皆さん、これで美味しいアイスを沢山作りますよお!」
わたし達は三角巾とエプロンを着用してっ、フルーツを持って厨房へ行きましたっ。
「今日は採れたてのフルーツでアイスを作りますよお」
「分かりましたっ」
「ぼくも、頑張ってみるよ」
わたし達は採ったフルーツをすりおろしたり角切りにしたりしてっ、それを濃厚なクリームの中に入れましたっ。
「さて、これで準備は万端。それではグレィスちゃん、一緒にやりますよお!」
「はいっ!やってみますっ!」
「あのチカラを使うんだ……上手くいくといいね」
わたしとグラスさんがフルーツの入ったクリームの容器に手を当ててチカラを込めると……!
シュピャキィイイン……!!!
容器の中のクリームは冷えて固まって、美味しそうなアイスクリームになりましたっ!このやり方はっ、わたしがこのチカラを持っている事を知ってから一年ぐらい経った頃にグラスさんから教わりましたっ!
「良く出来ましたあ!それではこのアイスをみんなにお届けしますよお!」
「みんなの喜ぶ顔が楽しみだよっ!」
「ぼくも運ぶの手伝うね!」
わたし達は出来上がったアイスクリームをカフェのお客さん達にお届けしましたっ!
「本日の新メニューですう!」
「皆さん、食べてみてくださいねっ!」
「きっといい味だと思うから」
お客さん達はアイスクリームを食べてみると、沢山の喜びの声が聞こえてきましたっ。
「すげー美味い!一体どんなフルーツを入れたんだ!?」
「フルーツのビビッドな甘みをバニラアイスが優しく包んでいる感じ!」
「この衝撃は24年前に味わったかき氷にも匹敵するぐらいじゃ!」
「いや〜〜〜研究続きで疲れた頭脳に染み渡るよ〜〜〜!」
「グラスさんとグレィスさんのチカラ、こんなに役立っているのですね〜♪」
みんなで作ったアイスクリームは沢山の人達に好評でっ、わたしとポース君のチカラの秘密を研究するグリューさんとフロースさんも気に入ったみたいですっ。
「みんな嬉しそうな顔して、こっちも嬉しいですう〜♪」
「ぼくの味わった幸せをみんなが楽しんでいるね」
すると、わたし達の前に耳と尻尾の付いたビースト族の少女が駆け寄って来ましたっ。
「あっ、もしかしてキミ達がここのアイス作った感じ!?」
「はいっ、そうですけどっ……」
「めっちゃ美味しい!気に入った!ありがとね!」
「こちらこそっ、喜んでくれて嬉しいですっ!」
「アッシ、最近この町に越して来たプレアリーって言います!よろしくお願いします!」
「わたしはグレィスといいますっ。こっちがグラスさんとポース君っ」
「プレアリーさん、よろしくお願いしますう」
「こっちこそよろしく!よろしく!」
「グイグイ来るね」
「アッシなりにアルブルタウンの暮らしを楽しみますんで、よろしくお願いします!そんじゃ!」
プレアリーちゃんは改めて感謝を伝えると、ものすごい速足で両親のいる席に戻りましたっ。
「なんだかすごい圧の強い感じの子でしたねえ。あの感じはライオンのビースト族でしょうかあ」
プレアリーちゃんのお母さんと思わしき人が、グラスさんの方を向いて笑顔を見せてくれましたっ。
「あら……あの人はもしかしたらエルバちゃん……」
「そういえばっ、グラスさんがお母さんと一緒に暮らしてた頃、ビースト族の集落にも遊びに行ったんだったよねっ!今度そのお話も聞かせてくれるかなっ!」
「もちろんですう、その時はシルビアさんも一緒にお話してもらいますからねえ」
「改めて考えても、ここの人達はみんな楽しそう……」
みんなが思い思いに過ごしていると、もう家に帰る時間になりましたっ。
「さて、帰ったらグレィスちゃんの家でお夕飯ですよお!」
「はーいっ!」
「はーい」
この後グラスさんはカフェの店長から報酬を受け取りっ、わたし達はブレイバル家に集まって夕飯にするのでしたっ。
「これが、今日みんなに振る舞ったフルーツアイスクリームですう!」
「父さんと母さんも食べてみてっ!」
わたしは両親に今日作ったフルーツアイスを食べさせましたっ。
パクッ
パクッ
「こ、これは美味いっ!今まで冒険した所でもここまで美味しいものは食べた事が無かった!」
「美味い……!この中に入っているフルーツを、みんなで採りに行ったんだよな」
「そうだよっ、ポース君も大活躍したよっ!」
「沢山実ったフルーツで、こんなに美味しいものが作れるなんてすごいよ、ぼくの父さんと母さんにも食べさせたいな」
「アイスはまだありますから、是非持ち帰って食べさせて欲しいですう」
父さんと母さんが作った料理と、今日のフルーツアイスを食べながらっ、わたし達はこれまでの事を語り合っていましたっ。
「こんな感じで過ごせていたわたし達ですけど、あらためて考えてみるととても目まぐるしい日々でしたねえ……」
「私とグラスが出会って、なんやかんやあってグレィスが生まれて、ポースが両親と共にここに来て、その二人がとんでもないチカラを持っていたんだからな」
「わたしもっ、あんなチカラを持っていたのを知った時はすごく怖かったっ……」
「グレィスさんのチカラはグラスさんと同じ氷のチカラで、ぼくの持っていたチカラはグリューさんの研究によると、最近になって『星のチカラ』なんだったって分かったんだよね……」
お母さんはあの時の事をこう振り返りましたっ。
「まさか私の子供が部分的にとは言えグラスの持つ氷のチカラを持っていると知った時はただ驚くしか無かった。けどそれは、グレィスはそのチカラを正しく使えればグラスにも勝ると劣らない活躍が出来るって事だ。ポースも同じようにね」
「グレィスもポースも、来るべくしてここに来たって事でいいんだよな」
お父さんも続けて言いましたっ。するとグラスさんがこうまとめますっ。
「そうですねえ、グレィスちゃんとポース君にはきっとこの先、わたしもシルビアさんも経験した事が無いスゴイ事が待っているかもしれないですう」
「それって、何っ?」
「今はそれが何かは分かりませんが、わたしみたいなドラゴンには何かがありそうな気がすると思うんですう」
「だよな、グレィスもポースもきっと運命の導きがあって良い出会いが沢山あるはずだ、なあグラス!」
「もちろんですうシルビアさん、これからもこの二人をみんなで支えていきますよお!」
「ありがとう。ぼくはこれからも頑張るからね」
「わたしも将来は沢山の人達を支えられる事がしたいなっ!」
「グレィスとポースの新たな冒険はこれから始まるってな!」
こうして、我が家の夕飯の時間は終わりっ、グラスさんはポース君を抱えて両親の所まで運んで行きましたっ。そしてわたしは満足の表情でベッドの上で眠るのでしたっ……。
* * * * * * *
次の日の朝。
グラスさんはポース君を連れて来て、家の前に来ましたっ。
「今日はお休みの日なので、小高い丘へピクニックに行きましょうねえ」
「わたしも楽しみにしてたよっ!ねっポース君っ!」
「うん、楽しみ」
「それじゃあみんなで行きましょう」
「お母さんっ、行ってきますっ!」
「いってらっしゃ……いや、待ってくれ」
すると、お母さんがグラスさんに向かって歩み寄りましたっ。
「なあグラス、今日は私も連れて行ってくれるか?」
「シルビアさん!?」
「お母さんっ!?」
「今まさに私の中の『俺』が久しぶりにグラスと一緒に行きたいと言っている」
「……わかりましたあ!今日は昔のようにわたしが抱えて飛びますからねえ!」
「ああ、よろしく頼む」
グラスさんはお母さんをお姫様抱っこすると、その大きな翼で飛びましたっ!
バサアッ!!!
「くうう!この腕に来る感覚、今も変わらないですう!」
「ああ、俺もだよグラス!やっぱお前は最高のドラゴンだ!」
「シビルちゃん……それじゃあ、行きますよお!グレィスちゃんとポース君も走って付いて来てくださいねえ!」
「わかったっ!それじゃあ行くよっ!!!」
「うん!行こうよ!みんなで!!!」
わたしとポース君はっ、お母さんを抱えて空を飛ぶグラスさんを追って小高い丘に向かって走って行きましたっ!
こうして、わたしグレィスとっ。
ぼく、ポースの暮らす。
この世界の日々は、これからも続いていく。
第5話、本編第1章へ続く。
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