ニアリーイコールで結ぶ
青井優空
第1話
双子だからって一緒にしないで、と思っていたけれど、意外と似ていたな、なんて今になって俯瞰的に考えることができるのはどうしてだろうか。
花に囲まれて口端一ミリすら動かさない片割れを見て、そんなことを考える。
「双子だからって一緒にしないで。お姉ちゃんとわたしは全然違うの!」
最初にそうやって声を上げたのは、私じゃなくて妹だった。それに反抗するように、先に攻撃したのは向こうだ、と言い訳しながら私も声を張り上げた。だからか、双子仲はあまりよくなかった。両親がため息を吐いているところは今でも目を閉じると浮かんでくる。
私達は見た目があまりにもそっくりだった。それに加えて、好きなものや得意なこと、趣味から普段の癖まで同じだった。気持ち悪い、と誰でもない私が言った。すると、妹は、それはこちらのセリフだと顔を真っ赤にして吐き捨てた。
私達はいつもセットで扱われた。両親の粋な計らいにより、名前まで似ていたので、名字でまとめて呼ばれることが多かった。それがどれほど苦しかったか、今はもう覚えていない。
私達が唯一違うところと言えば、頭のよさだろう。妹はとにかく賢かった。ひらがなを読むのも数字を覚えるのも、妹の方が早かったと母が言った時、私は顔から火が出るかと思った。私は勉強ができなかったのだ。今までいろいろな分野で伯仲していると思っていたし言われていた。だからこそ、悔しかった。
高校まで同じような人生を辿っていたけれど、私は遠くの専門学校に行くために家を出た。妹は近くの国立大学に行くために家に残った。その理由さえも私にとっては恥で、誰にも明かせなかった。
正月や長期休暇になれば、たびたび家に帰ってきたけれど、私達の仲が回復するなんてことはもちろんなかった。
今になって思う。いや、今になったからこそ思う。もうちょっとだけ寄り添えばよかった、と。私は勘違いしていたのかもしれない。私と妹は同じ人間で、なにを言っても許される、と。だから、たくさん余計なことを言って傷付けたのかもしれない。もっと早くに私と妹は似ているところは多いけれど別の人間だと気付いていたら、なにか変わっていただろうか。気付けるほどの頭が私にはなかった。
私達はイコールではなく、ニアリーイコールで結ばれていた。どうして、そのことに気付けなかったのだろうか。
もう二度と目を覚まさない妹の顔は私にそっくりで、それでも私とは違う。喧嘩することももうないと思うと、胸の中に風がスーッと通っていったような気がして、それがどうしようもなく悲しかった。
ニアリーイコールで結ぶ 青井優空 @___aoisora
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