「ダブルアナル・セッックスッッ」
今日も、そして、下校の時間が来た。
適当な挨拶をいくつか、交わして。今日一日という学校時間に、自身を
学業時間ではなく学校の時間というのが
また初夏の気配が遠ざかった、雲遠い青空が窓の外に望める。
そんな景色に気を取られていたからだろう、このときはつくづく、気が抜けていた。
「うわっぷ」
どこかラベンダーに似た香りが、ふわりと薫った。
互いの姿が死角になる教室の入口で、同級生の一人とぶつかってしまったのだ。
程々の勢いがあったというのに。体に、柔らかい感覚がかかる。
「わっ、――ご、ごめんね?」
ごめん、気が抜けてた。
互いに言葉をかけて、それで終わりであれば、よかったのだけれど――。
おそらく、ちょうど、通学バッグにそれを入れようとしていたところだったのだろう。
パサリと、一冊のノートが――あるページを見開きの形で表にして、床に落ちた。
「…………!?」
「
「…………。……………………見た?」
「――ごめん、見ちゃった」
「……ひっ、秘密にっ、してくれる……?」
「ん。きっと秘密にする。墓の下まで持っていくよ。絶対、約束」
「あ、ありがとう……。……じゃ、じゃあねっ。また、明日……」
「うん。――ふとした時にも、口漏らすような真似なんてしないから。だから、今日のことは、なかったことに。気に病まないでね。ぶつかってごめんなさい」
「ありがとう……。じゃ、じゃあね! わ、私もぶつかって、ごめん!」
そうしたやり取りのあと、
…………今見たものは、確かに意想外に、衝撃度の多分な、絵であった。
多少刺激的な絵。
だけど――違う。
あの絵を見て俺を襲った衝撃は、多少なんてものでは、なかった。
生易しいものではなかった。
見開きで開かれたノートの、左隅に描かれていた絵。
それは。
物騒な双剣を手にした女……おそらく後ろ姿を見せた
夢で見た内容、そのまま――……?
――――と、しばらく棒立ちになって。
これはいったいどういうことかと考えていたのだが……。
しかし、一度冷静になってみれば、それは別段、奇妙でも不思議でもない、大仰でもない事だと、気付けた。
おおかた、今流行っている、なんらかの漫画のワンシーンであるのだろう。あるいは小説、映画、もしくは、アニメか――。
そして俺も、街中とか、動画広告やら、ふとした
心情は落ち着いたけれど……しかし、残念な気持ちもあった。
あの女のイカしたキャラクターが、タネを明かせば、どこかの創作の模倣であったことが……妙に、残念だった。
とても残念な気分だった。
そういうことがあって、その日は、あんまり明るくない気分で、帰路を歩いた。
青空を見上げて、「あーあ」と、心の内で愚痴こぼす。できれば知りたくなかった、裏の事情ってやつを、知ってしまったような気分だった。
「人生、そんなもんだよ」と、
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