第4話

 ――夜明け前、“遺跡の街”ラインの一角で、剣を振るう音が静かに響く。

 金属の刃が鍛錬用の木剣を弾き飛ばし、静寂の中に甲高い音が鳴り響く。

 まだ日が昇る前、踊る子鹿亭の訓練場にはアルヴィスの姿があった。

 月明かりが剣の刃を照らし、薄暗い朝靄の中で彼の影を長く伸ばしていた。


「……はぁっ……!」


 彼は荒い息を吐きながら、再び剣を構えた。

 朝の冷たい風が肌を撫でるが、彼の体はすでに火照り、額には汗が滲んでいる。


 このままではいけない。もっと素早く、正確に。


 アルヴィスは、過去の戦いを思い返していた。

 ナイトフットバルーン戦で感じた自分の技の限界――あの時、強敵の連撃を避けきれず、確実に仕留める一撃を繰り出せなかったことが悔やまれる。


「次は……絶対に、躱して、決める……!」


 彼は剣を持つ手に力を込め、ゆっくりと足を運び始める。

 アルヴィスが鍛錬しているのは、単なる剣技ではない。

 それは移動の最適化、つまり、敵の攻撃を最小限の動きで避け、最大限の一撃を叩き込むための動きを習得することだった。

 地面に白い粉で線を引き、限られた範囲の中で高速移動の訓練を繰り返す。


「一撃、回避、反撃――!」


 頭の中で想定した敵の攻撃をイメージしながら、足を踏み出す。


 右に回避、素早く旋回、そして斬撃。

 しかし、動きが遅れれば、自分が狙われる。


「違う、これじゃ遅い……!」


 再び、踏み込み。

 今度は、回避しながら反撃の体勢を整える。

 余分な動作を削ぎ落とし、まるで水の流れのように動きをスムーズにする。


 鋭い一撃が木剣の的を寸分違わず貫く。


「……ッ、よし……」


 動きが研ぎ澄まされるほど、無駄な動作が減り、攻撃と回避が同時に行えるようになっていく。


 アルヴィスは次に、自分の得意とするフェイント技術を磨くことにした。

 前回の戦闘では、敵の動きを惑わすことはできたが、その後の攻撃が決定打にならなかった。

 彼は訓練場の木製の人形を相手に、何度も攻撃のフェイントを試みた。


「一撃目を囮にし、次の一撃を……!」


 片足を踏み込みながら、フェイントを入れつつ剣を繰り出す。

 しかし、そのままではただの小細工で終わってしまう。


「もっと、重く、強く……!」


 再び構え、今度はフェイントの直後に一気に踏み込み、力を込めて振り下ろす。


 ガギィィン!!


 鋭い音とともに、木製の人形が大きく揺れる。


「……悪くない」


 これなら、確実に一撃で仕留められる。

 息を整えながら、アルヴィスは天を仰いだ。

 空には、夜明けの気配が色濃く広がってる


 ――まだまだ、やれる。もっと、強くなる。


 剣を握る手に力を込める。

 彼はただ戦うだけではなく、仲間たちを守るための力を求めていた。

 そして、これから始まる冒険が、さらなる試練を与えてくることも分かっていた。

 一通りの鍛錬トレーニングを終えたアルヴィスは、布で体の汗を拭う。

 

「アルヴィスさーん! 朝食の時間ですよー!」

「ああ! ありがとう! 今行く!」


 宿の看板娘アリアに声を掛けられ、明朝の鍛錬を終えたアルヴィスは食事についた。

 それから装備の点検を終えて、宿を出る。


「……行こう」


 ギルドハウスの方へと歩きながら、アルヴィスは次の戦いを見据えていた。





 ギルドのロビーには、朝の穏やかな陽光が差し込み、木製の床に柔らかな影を落としていた。

 中央広場にある風の旅団ギルドハウスの外では商人たちの呼び声が響き、活気のある街の一日が始まろうとしている。

 ガスパールは新たな装備として流水の砥石を手に入れ、さらに一頭の馬を購入した。

 毛並みが美しい逞しい馬は、力強い瞳を持ち、彼の旅の相棒にふさわしい風格を漂わせる。


「ふふふ……馬を買いました」


 ガスパールは満足そうに馬の首を軽く撫でる。馬は誇らしげに鼻を鳴らし、鬣を揺らした。

 これからの冒険で、移動の自由度が大きく広がるだろう。ギルドハウスの入り口に馬を繋ぐ。

 馬を買うことを事前に聞いていたアルヴィスがそれに気付き近づくいてきた。


「おっ! ガスパールさん、馬買ったんだな!」

「ええ、必要になる場面も増えると思いましてね」

「確かに…長距離の移動には重宝しますし、荷物も運べるしね」


 アルヴィスが馬の首筋を優しく撫でると、馬はヒヒーンと嘶いた。


「良いね。キミもこれからよろしく頼むよ」


 アルヴィスの言葉に、まるで応えるかのように馬が前足を軽く踏み鳴らした。

 そこで癒しの衣を借りたセラフィアがやってきて姿を見せる。


「おはよう、セラフィアさん」

「ええ、おはようございます。素敵な馬ですね」


 澄んだ声が響いた。

 彼女の長い紫銀の髪が朝日を受けて柔らかに揺れ、淡い光を纏っているようにも見える。

 ふわりと微笑みながら、セラフィアはガスパールの隣に寄り、馬へと視線を向けた。


「ありがとうございます」


 ガスパールは礼を言いながら、彼女に少し体をずらし、馬へ近づきやすいようにする。


「ガスパールさんが選んだ馬ですからね、きっと頼れる子でしょう?」


 セラフィアの言葉に、ガスパールは少し考えるように馬の頭を撫でた。


「そう願いたいですね……」


 彼の言葉を聞いて、セラフィアは興味深そうに馬の顔を覗き込む。


「ふふ、凛々しい顔をしています。名前はもう決めたのですか?」

「……実は、まだなんです」


 ガスパールが少し困ったように口元を緩めると、セラフィアは少し意外そうな顔をした。


「まあ、そうなのですね? こうして見ると、とても気品がある子ですし、何か立派な名前が似合いそうです」


 彼女はそっと馬の額に手を添え、優しく撫でる。

 その動作はまるで聖女が祝福を与えるかのように静かで穏やかなものだった。

 すると、馬は気持ちよさそうに鼻を鳴らし、セラフィアの手に頬をすり寄せるような仕草を見せた。


「……気に入られたようですね」


 ガスパールが少し驚いたように言う。

 セラフィアは小さく微笑みながら、そっと手を引いた。


「動物とは、心を通わせることが大切ですから」


 彼女の声はどこまでも穏やかで、まるで春のそよ風のようだった。


「私も、少し乗せてもらえますか?」

「……え?」


 ガスパールが思わず固まる。

 セラフィアが馬に乗るという意外な展開に、一瞬、思考が追いつかなかった。


「いえ、ちょっと試してみたくて……ダメでしょうか?」


 彼女はふわりと首を傾げ、柔らかな笑みを浮かべる。


(……断れるはずがない)


 ガスパールは苦笑しつつ、手を差し出した。


「……では、お手をどうぞ」

「ありがとうございます」


 セラフィアは躊躇うことなくガスパールの手を取ると、彼の補助を借りながら、軽やかに馬へと跨った。

 その仕草は流れるように美しく、まるで昔から乗り慣れているかのようだった。

 そんな二人をアルヴィスは微笑ましく眺める。


「……乗り心地は?」


 ガスパールが尋ねると、セラフィアは嬉しそうに微笑んだ。


「とてもいいですね。歩かせてみても?」

「もちろん」


 ガスパールが馬の手綱を軽く引くと、馬は穏やかに歩き出す。

 セラフィアは風を受けながら、その背で心地よさそうに目を細めた。


「これは……良いですね」


 彼女の言葉に、ガスパールは心の中でふっと笑う。


(……意外と楽しんでるんだな)


 普段は慎ましやかで落ち着いている彼女だが、こうして馬に乗ると、どこか開放的な雰囲気を纏っているように見えた。

 まるで本当に風に乗っているように、自然に馴染んでいる。


「へえ、意外と様になってるじゃないか」


 軽い調子の声が飛んできた。


 アルヴィスだった。

 彼は腕を組みながら、興味深げにセラフィアの乗馬姿を眺めている。


「セラフィアが馬に乗るなんて、ちょっと意外だったな」


 セラフィアはその言葉に、くすっと小さく笑う。


「私も、こんなに乗り心地がいいとは思いませんでした」

「このままどこかへ走って行く気じゃないだろうな?」

「ふふ、それも悪くないですね」


 冗談めかして言うセラフィアに、アルヴィスは肩をすくめる。


「まあ、それは後にしておいてくれ。そろそろ準備に入るぞ」


 彼の言葉に、セラフィアは名残惜しそうに手綱を引いた。

 馬は軽く鼻を鳴らしながら歩みを止め、ガスパールがそっと手を差し出す。


「降りるのをお手伝いしましょうか?」

「ありがとうございます」


 セラフィアはその手を取り、軽やかに馬から降りる。

 その優雅な動作を見ながら、アルヴィスは小さく笑った。


「さて、それじゃあロビーに集合だ。次の冒険の準備をしないとな」


 ギルドのロビーは、朝の賑わいを見せていた。

 各テーブルでは冒険者たちが集まり、依頼の確認や装備の手入れをしている。

 壁に貼られた依頼掲示板には、新たな討伐や探索の依頼が追加され、冒険者たちが興味深げにそれを眺めていた。

 大規模ギルドである風の旅団には、神殿からルーミスへと直接依頼が渡り、ギルドメンバーが受けられるよう依頼が用意されている。エコーやヘネッド、シオンなどは別の依頼に向かうため、今回は不参加。朝から出かけているようだ。

 いつものテーブルに集まったのはガスパール、セラフィア、アルヴィスの三名。


「さて、奉納に必要なのはあとは何だったかな」


 アルヴィスがそう言って椅子に腰掛けると、セラフィアがリストを広げて確認する。


「奉納に必要なものは、残るところ新鮮野菜だけですね」

「それが手に入れば、次元の歪の先へ進める……ということですね」


 ガスパールが槍を立てかけながら静かに頷く。


「しかし、鮮度の問題があるのですよね……普通の市場にあるものでは駄目みたいですし」


 一度試しに置いてみたが弾かれた。市場のものも鮮度が良いはずだが、買っただけのものではダメなのだろうか?

  セラフィアが心配そうに言うと、アルヴィスが顎に手を当てた。


「そうだな。長く保存されたものじゃなく、採れたての新鮮なものが条件らしい」


 それに対し、ガスパールが馬の手綱を軽く引きながら言った。


「ならば、農家から直接譲ってもらうのが確実ですね。農場に向かい、状況を聞いてみましょう」


 セラフィアがリストを閉じ、立ち上がる。


「では、準備を整えて出発しましょうか」

「そうだな。各自、装備や道具の確認をしておこう」


 各自、冒険の準備を進める。

 ガスパールは槍の穂先を慎重に確認し、鞘に納めると、持ち歩く砥石を用意した。


「槍の状態は問題なし。新たに買った水の砥石も持っていきます」


 アルヴィスは背中の剣を軽く抜き、刃の輝きを確かめる。


「こっちも異常なし。剣の具合も確かめながら行くか」

「もしもの時のために、ポーションは多めに持っていきますね」

「頼もしいな。こっちも毒消しを持って行こう。毒を持った敵がいるかもしれない」


 アルヴィスが微笑むと、セラフィアは静かに頷く。


「念には念を、ですね」


 因みに毒消しは毒消し草と違い調合されたポーションのことだ。

 各自がアイテムの確認を終えると、ギルドハウスを出て西門へ向かう。

 通りを歩くと、すでに街は活気づいていた。

 市場には新鮮な魚や果物が並び、行き交う人々の笑顔が溢れている。


「市場の活気がすごいですね」


 セラフィアが周囲を見渡しながら言うと、アルヴィスが軽く肩をすくめた。


「こうして見ると、やっぱり普通の市場の野菜じゃ駄目ってのが惜しいな」

「ですが、農地に行けば、もっと良いものが見つかるかもしれませんよ」


 馬に乗ったガスパールを先頭に、一同は西門を抜け、青空の下を進む。

 

 ガスパールの馬の足音が、ぱから、ぱからと軽快に響く。やがて、目の前に広がるのはのどかな農村だった。

 果実園、野菜畑、そして遠くには放牧された牛や羊たちの姿も見える。


「のどかな景色だ……砂と岩ばかりだった故郷とはなにもかも違う…」


 ガスパールは遠くを見つめながら呟いた。

 彼が奴隷として剣闘士をしていたクラン=ベルは数年前までは水の都と呼ばれた場所。しかし、突然の干ばつが街を襲い、今では広大な砂漠が広がる地となってしまっていた。

 農場の様子を見渡すと、農民たちが忙しそうに働いている。

 アルヴィスが手を挙げて近づき、野菜の取引ができるか尋ねる。


「申し訳ないねぇ、ちょうど市場に卸したばかりで、今は余ってないんだよ」


農民の答えに、一同は顔を見合わせる。


「平和だな。良いことだ」


 ガスパールが微笑むが、アルヴィスは腕を組みながら考え込んだ。


「お野菜どうしましょう…?」

「買う……というわけにはいかないだろうし、一旦戻ろうか。となると、あの遺跡の調査は一時足止めだな」


 後日、大神殿の隣に併設された依頼所に向かった。

 カウンターには、猫耳族アウリクの受付嬢フィリスがいた。


「風の旅団の皆さんですね。本日はどういったご用件でしょうか?」


 フィリスは書類を整理しながら微笑む。


「ええっと……ちょっと新鮮な野菜を仕入れないといけなくてね。手に入りそうな依頼とかあるかな? もしくは売ってる場所とかあれば良いんだけど」

「それでは、ミッションの方を確認してみますか?」


 彼女が記憶を頼りに書類に手を伸ばすと、一枚の依頼書が出てきた。

 フィリスは一度見たものは忘れないという驚異的な記憶力の持ち主で、冒険者が求める依頼もこうしてすぐに見つけ出してくれる。時折ドジでおっちょこちょいなところも見せるが、それもまた愛嬌として皆から愛されている。


「害虫駆除の依頼が新たに近郊農家から出ています。もしかすると、お礼に新鮮野菜を分けてもらえるかもしれませんね。こちらの依頼を受けますか?」

「ああ、これを受けるよ」


 フィリスが説明を続ける。


「どうやら、蜂の被害で農家さんが困っているようです。より詳しい話は直接農家に出向いて聞いた方が早いでしょう」

「蜂…ですか」


 セラフィアが少し眉をひそめる。小さな害虫とはいえ、大群ともなると厄介だ。


「さっそく状況を農家さんに聞きに行こう」


 アルヴィスが頷くと、一同は依頼所を出て改めて農家へと向かう。

 ガスパールが手綱を握り、セラフィアを馬の前に乗せる。


(……思ったよりも距離が近いな)


 若干、頬が熱くなるのを感じながらも、目的地へと馬を進めていった。

 一方、アルヴィスは歩いてついてくる。


「……俺だけ徒歩かぁ」


 ぼやきながらも、彼は先導役として馬の前に駆け抜けてから農地へと歩みを進めて行った。








 小さな農村の入口で馬を降りると、のどかな風景の奥に広がる野菜畑が見えた。

 だが、異変はすぐに分かった。遠くからでも聞こえる、ブゥゥン……ブゥゥン……という不穏な羽音。


「おお、あんたらが依頼を受けてくれた冒険者さんか?」


 農場主の老人が、汗を拭いながら駆け寄ってきた。

 彼の顔には疲労の色が濃く、畑を見つめる目には焦りが滲んでいた。


「はい、風の旅団所属アルヴィスです。よろしくお願いします」

「いやあ、まさか害虫が農地を荒らすとはな……」


 ガスパールが馬から降り、礼儀正しく頭を下げる。

 その隣ではセラフィアが優雅に馬を降りるのを手伝われ、静かに微笑んだ。


「ありがとうございます」


 ガスパール、紳士かな? セラフィアは自分の頬が熱くなるのを感じつつも、すました顔で礼を言った。

 どうやら問題の害虫は、農園の奥に発生しているらしい。


「どうか農作物を守ってくれ……!」

「規模はどの程度か分かりますか?」

「蜂……と聞きましたが……大群なのでしょうか?」


 アルヴィスとセラフィアが尋ねると、農場主は深刻な表情で答えた。


「大量だ……」

「……」


 ブゥゥン……ブゥゥン……沈黙の中、羽音が聞こえる。

 嫌な予感がする。


「蜂……」


 ガスパールは手元の槍を見つめ、戦い方を思案する。小さな標的をどうやって効率よく仕留めるか。


「大丈夫さ。ガスパールさんの槍なら小さな蜂でも正確に穿てるよ」

「……過ぎた評価です」


 アルヴィスの励ましに、ガスパールは謙虚に答えるが、しっかり槍を握り直していた。


「現場を見て判断しましょう。案内をお願いします」


 依頼主の案内を受けて野菜農園の方に向かうと、空気が一変する。

 周囲に漂う甘く腐ったような匂いと、ぶんぶんと絶え間なく響く羽音。

 視界の先、20メートル先には無数の蜂の群れが宙を舞い、野菜畑の上空を埋め尽くしていた。

 蜂にやられたであろう農作物が無惨な姿を見せているが、まだ一区画だけで済んでいるようだ。昨夜にやられた部分のようで、今日の被害はまだ出ていないらしい。

 とはいえ、このまま放置すれば被害は拡大するだろう。今のうちに対処すれば、農家の被害も最小で済む。


「それでは、お願いしますじゃ」


 依頼主はそう言うと、アルヴィスたちに対処を任せ建物の中に避難する。


「任せて。それにしてもこれは……思ったよりも数が多いな」


 アルヴィスが眉をひそめる。

 セラフィアが蜂の様子を見て識別をし、その結果を伝えてきた。


「……風属性の動物ですね。毒を持った攻撃を得意とする普通の蜂ですね」

「なるほど……」


 その瞬間、蜂の群れがこちらに気づいた。


 ブゥゥゥゥゥゥン……!!


 一斉に羽音が高まり、殺意に満ちた無数の翅が空を切る。


「っ、来るぞ!!」


 ガスパールが身構える。


 蜂の大群が突撃してくる。鋭い針が光を反射し、毒々しい光沢を放っていた。


「さっさと駆除しちゃおう!」


 アルヴィスが両手剣を振りかぶる。


「せいやっ!!」


 刃が風を切り、一閃が走る。

 次の瞬間――。


 蜂の大群が吹き飛んだ。


「……一瞬でしたね。さすがです、アルヴィス」


 ガスパールが戦いに参加する前に、戦闘が終わってしまった。


「…竜巻のようでしたね」


 セラフィアが呆れ混じりに呟く。

 辺りには転がる蜂の残骸。


「ただの蜂だし、こんなもんか」


 アルヴィスが剣についた汚れを払い、依頼主のもとへ報告に向かった。


「農家さん、終わりましたよ」


「おお!? もう!? しかも被害も出ていないとは……流石ですじゃ!」


 依頼主は驚きながらも大喜びし、報酬とは別に人数分の採れたての新鮮野菜を差し出した。


「それじゃ、また風の旅団をよろしくおねがいします」


 一同は農場を後にし、街へと戻った。



 

 大神殿横の依頼所に戻って来た一同は受付嬢のフィリスの元へ足を運ぶ。


「お疲れさまでした、風の旅団の皆さん。依頼の方は、無事に完了しましたか?」


 彼女が微笑みながら迎えると、アルヴィスが軽く頷き、依頼の書類を差し出した。


「害虫駆除、完了したよ。畑を荒らしていた蜂の群れを全滅させた」

「確認させていただきますね」


 フィリスは手早く書類をめくり、内容を確認する。

 その間、セラフィアが静かに付け加えた。


「農家の方も、安心して作業を再開できると言っていました」

「それは何よりですね!」


 フィリスの耳がピクリと動き、嬉しそうに微笑んだ。


「害虫駆除の依頼は、あそこの農地では定期的に発生するみたいですし、また同じような依頼が出るかもしれませんね」


 彼女が書類に記入しながら言うと、ガスパールが考え込むように顎に手を当てた。


「なるほど……それなら、他の団員にも声をかけて、交代で駆除に行ってもらうのがいいかもしれませんね」

「確かに、それは良い案ですね。定期的に管理できれば、農家の被害も減るでしょう」


 セラフィアが頷くと、フィリスが満足そうに微笑んだ。


「風の旅団さんなら頼もしいですね! また依頼が来た際は、よろしくお願いします」

「もちろんだ」


 アルヴィスが軽く笑いながら答え、フィリスが報酬の袋を手渡す。


「では、依頼達成の報酬金になります!」

「ありがとう!」


 アルヴィスが代表として報酬金を受け取る。

 依頼所への報告を終えた一同は手に入れた新鮮野菜を奉納するために、再び遺跡へと向かった。

 ガスパールはセラフィアを馬の背中側に乗せ、アルヴィスが前を歩く。


 遺跡の入口を抜けると、空気が急激に冷たくなった。


 カチカチ……

 ガキン……ギギギ……


 金属と骨が擦れる不吉な音が、静寂の中に響く。

 闇の中から、錆びた鎧を纏うスケルトンソルジャーたちが、ゆっくりと姿を現した。

 最近何度も戦って来た相手。だが、群れの中に明らかに異質な存在がいた。


 一体だけ、鎧の傷が少なく、構えに迷いがない。

 生前は高名な剣士だったのかもしれない。


「……来る!」


 アルヴィスが一歩前に出た瞬間、スケルトンソルジャーたちが一斉に剣を構え、襲い掛かってきた。


 アルヴィスは迷いなく敵陣へ突撃。

 振りかぶった剣が閃き、鋭い一撃が先頭のスケルトンソルジャーの肩口を抉る。

 骨の繋ぎ目が砕け、スケルトンソルジャーの体がぐらつく。


 しかし、その瞬間――後方のスケルトンソルジャーたちがすかさず包囲し、四方から刃を突き出してきた!


 アルヴィスは足を素早く運び、背後の敵の刃を紙一重でかわす。

 さらに剣を横薙ぎに振るい、二体をまとめて弾き飛ばした。


「掴まっていてください、必ず守りますから」

「ありがとうございます、頼りにしております」


 セラフィアがガスパールの腰にしっかりと手を回し、馬上で姿勢を安定させる。


 ガスパールが手綱を引くと、馬が力強く蹄を鳴らし、突進。

 そのまま、砥石で炎を纏わせた槍を振るう。


 炎の穂先がスケルトンソルジャーの胸を貫き、黒焦げの亀裂が広がる。

 ガスパールは槍を引き抜くと、翼を大きく広げ、前方に折り曲げた。

 セラフィアの体を庇うようにして、スケルトンソルジャーたちの攻撃を遮る。


「……そこまでして戦わなくても大丈夫ですよ。でも、ありがとうございます」


 セラフィアがそっと彼の翼を撫でる。

 羽根の柔らかさと、ほんのりとした温かさを感じながら、彼女は静かに微笑んだ。


 ガスパールが敵を押しのけて距離を取ると、前線のスケルトンソルジャーたちは一旦下がり、中央の一体――明らかに動きが異なるスケルトンソルジャーが前へ出た。


 鎧の僅かな継ぎ目から、微かに黒い霧が漏れ出している。

 そして、その瞳孔の奥には、微かな理性の残滓が光っていた。


「……これは、他の個体とは違うな」


 アルヴィスが剣を構え直す。

 スケルトンソルジャーは間合いを見極めるように慎重に動き、剣を引いた。


 一瞬の疾走――剣閃がアルヴィスの目の前を斬り裂く!


「ッ!!」


 アルヴィスはすんでのところで後退し、剣で受け止める。

 衝撃で地面が裂け、飛び散った石片が舞う。

 通常のスケルトンソルジャーの動きとはまるで違う。


「こいつ、生前は相当な戦士だったんじゃないか……!」


 アルヴィスが息を整えながら言うと、ガスパールも槍を構えた。


「……慎重にいきましょう」


 アルヴィスが一気に踏み込み、剣を振るう。

 スケルトンソルジャーは軽やかに躱し、反撃の一撃を繰り出す。


「おっとっと!」


 アルヴィスは素早く身を引き、紙一重で回避。

 ガスパールが間髪入れずに突撃!

 槍の穂先が一直線に突き出される。


 しかし――スケルトンソルジャーは、ギリギリのところで体を捻り、槍の一撃を躱した。


「……さすがだな」


 ガスパールが目を細める。


 しかし、わずかな隙が生まれた。

 スケルトンソルジャーが再び剣を振り上げる――その瞬間!


 アルヴィスの一閃が、スケルトンの胴体を断ち切る。

 ぐらついたスケルトンの動きが鈍ったその時――


「終わりだ」


 ガスパールが、一気に槍を突き立てた。

 炎を纏った鋭い刺突が骸骨の骨を穿つと、スケルトンソルジャーの体がガラガラと崩れ、動かなくなった。



「……しぶとかった」


 ガスパールが息を整えながら呟く。


「本当にね」


 同じくアルヴィスも剣を仕舞いながら答える。


「生前は名のある戦士だったのかもしれませんね」

「たしかに他の個体より身のこなしが違っていたね」


 まだアンデッドの中でも最底辺に分類されるスケルトンソルジャーだから勝てたものの、あの身のこなしのまま上位種として現れていたら、倒されていたのは此方だったかもしれない。


 セラフィアは馬から降り、ドロップ品の回収を始める。


「ブロードソードですね。どうしますか?」

「じゃあ、俺のウェポンケースに入れておくよ」


 アルヴィスが受け取り、剣を収納する。

 戦いの余韻を感じつつ、一同は再び奉納の場へと向かう。


 神秘的な台座の上には今まで奉納したアイテムが淡く光り輝いている。

 古エルダ文字で奉納するアイテムの指定が書かれており、残りは新鮮野菜を5個。

 手に入れた3個を奉納し、残り1個となる。


「まだ足りないようですね」


 セラフィアが奉納台を見ながら呟く。


「あと少しか」


 アルヴィスが未だ埋まらない奉納の空間を見つめる。


「また明日、依頼を確認しにいこうか」


 そうして一同は一時帰宅し、改めて翌日、依頼所へ向かう。





 翌日、依頼所に再び訪れたアルヴィスたちはフィリスに声をかけた。


「こんにちはー! 今日も依頼ありますか?」


 受付カウンターでは、いつもの猫耳族アウリクの受付嬢フィリスが書類を整理していた。

 彼女はアルヴィスの声を聞くと、ピンと耳を立て、にこりと微笑むと、手慣れた様子で書類をめくり、すぐに一枚を抜き取る。


「近郊農家さんから害獣駆除の依頼が来ていますよ」

「また農家関連か。今度は何が問題なんだ?」

「今度は果実園がやられたようですね。被害はそれほど大きくありませんが、放置はできませんね」

「農家さんも大変だね」


 アルヴィスが腕を組んで考え込むと、ガスパールが静かに頷いた。


「昨日訪れた時も忙しそうでしたし、丁度忙しい時期なのかもしれないですね。被害が広がる前に対処しないと」


 セラフィアが書類を見ながら付け加える。


「どうやら今回はかなりの数がいるようです」

「ま、それも問題ないさ。行こう」


 アルヴィスが軽く肩をすくめ、三人は依頼書を受け取って農地へと向かった。


 馬の軽快な足音が地面を叩く。


 ぱから、ぱから。うまぼいーん。


 ガスパールの馬にセラフィアが同乗し、アルヴィスが先頭を歩く。

 街道を進むにつれ、空気は徐々に静かになり、周囲には農場の広がる風景が見えてきた。


「おお、先日に続き、すまないね」


 先日と同じ依頼主が、一同の姿を見て駆け寄ってきた。

 顔には疲労の色が浮かび、何度も深いため息をついている。


「いえ、食糧は大事ですからね」


 アルヴィスが代表として話を促す。


「果実園がやられたんだ。狼の大群が押し寄せてきてな……」

「狼?」


 アルヴィスが目を細める。


「ああ、どうやら四十匹はくだらんらしい」


 その数に、ガスパールが一瞬たじろいだ。


「四十匹……? それはまた多いですね。被害は?」

「まだそれほど出ておらんが、腹を空かせればすぐに食い尽くされるだろう。そうなる前に、どうかやつらを討伐してくれ!」

「…随分多いですね。案内をお願いしても?」


 セラフィアが案内を頼み、それに従い農場主が果実園へと一同を連れて行く。

 果実園に到着した頃には、空が赤く染まり始めていた。


 遠くに広がる果樹のシルエットが風に揺れ、穏やかに見えるが、その裏には異変が潜んでいた。


 ――静かすぎる。


 アルヴィスが剣を抜きながら、周囲を警戒する。


「……気配を感じます」


 セラフィアが小声で呟いた。


「……間違いなく、いるな」


 ガスパールが槍を握り締め、馬を止める。

 目視できるだけでも、こちらを警戒するよう固まるウルフの姿がある。

 アルヴィスが一歩踏み出した、その時だった――


 アオオオオオオオオオオオオオオオオ……アンアンアオーーワンッ!!


 遠吠えが森の奥から響き渡った。


 林の影から無数の赤い瞳がゆらりと光る。

 次の瞬間、影が一斉に動き出した。


「囲まれたな……!」


 アルヴィスが低く構える。


 ウルフたちは、最初に見えていたよりもはるかに多い。

 しかも、ただの野生動物ではない。統率が取れている――つまり、知能を持ち、連携して狩りを行う個体ということだ。

 セラフィアがウルフを観察し、識別をしていく。


「これは……厄介ですね。ウルフ同士で連携を行なっているようです。それにあの遠吠え……増援を呼ばれれば大変なことになります」

「数だけじゃなく、連携まで……か。微妙にヤバいな」


 ウルフたちの赤い瞳が光る。

 鋭い爪が土を掻き、低く唸る声が響く。

 彼らは、獲物を仕留める機会をじっと伺っている。


 アルヴィスは剣を構え、目を細めた。

 風が草を揺らし、次の瞬間――


「ガスパール! セラフィアを守ってくれ!」


 鋭い号令が響く。


「了解!」


 ガスパールが馬を操り、セラフィアを庇うように構える。

 セラフィアも魔法を準備しながら、慎重に戦況を見守る。


「さて……」


 アルヴィスが、ゆっくりと息を吐いた。

 ウルフたちが、一斉に前足を蹴り上げた瞬間――アルヴィスが先に動いた。


 一歩踏み込んだ瞬間、アルヴィスの姿が霞む。

 狼たちが驚きの唸りを上げる間もなく、最前列の個体が一閃で首を斬られた。


 血しぶきが舞う。

 だが、アルヴィスは止まらない。


 剣の軌跡はまるで旋風のように、次々と敵を切り裂いていく。

 ウルフたちは即座に対応しようとするが、彼の動きが速すぎる。


 右へ回避――即座に反撃。

 背後からの攻撃を予測し、振り向きざまに一撃。


「ッ!」


 鋭い牙が襲いかかるが――


 アルヴィスは体を低くし、ウルフの腹の下をくぐり抜けるようにして回避!


 そして、逆手に持ち替えた剣を振り上げ――


 シュバァッ!!


 ウルフの腹部が一瞬で切り裂かれた。


 ウルフたちの動きが変わる。

 アルヴィスの戦闘スタイルを解析し、より広い範囲から同時に襲いかかる形を取る。

 だが――


「その程度か」


 アルヴィスの口元が、僅かに上がる。

 彼は、すでにウルフたちの動きを読み切っていた。

 左のウルフが牽制し、右の個体が本命の攻撃を仕掛ける――


 その瞬間、アルヴィスは斜め前方へ跳躍。


 左右同時に動いたウルフたちが、まるで仕組まれたかのように自らアルヴィスの剣の範囲へ飛び込んでしまう。

 刃が二体を切り裂き、血飛沫が弧を描いた。

 

 残ったウルフたちが焦りを見せる。

 目の前で、わずか数十秒の間に仲間たちが倒されていく。

 それでも、群れは最後の突撃を仕掛ける。


「悪くない」


 アルヴィスは、剣を逆手に構えた。

 次の瞬間――。


 ウルフたちが一斉に襲いかかる。


「けど、詰めが甘かったね」


 アルヴィスの剣が風を切り、狼の影を斬り裂いた。

 一瞬の沈黙――


 次いで、全てのウルフが同時に崩れ落ちた。


 辺りは静寂に包まれていた。

 ウルフたちの息遣いも、もう聞こえない。


「……終わったな」


 アルヴィスは剣を払うと、倒れたウルフたちの遺体を確認する。


 「……やっぱり、アルヴィス一人で十分でしたね」


 ガスパールが馬の上で苦笑しながら言うと、セラフィアも微笑んだ。


「戦いの様子がまるで舞のようでした……本当にお見事でしたね」


 アルヴィスは肩をすくめると、倒したウルフたちのドロップ品を回収し始める。


「動物の牙が大量に手に入ったな。……それと、食べられそうな肉も」


 セラフィアが肉の鮮度を確認し、軽く頷く。


「これなら、問題なく調理できますね」


 アルヴィスは満足げに頷きながら、ドロップ品の回収を終えた。


 依頼主の元へ戻り、ウルフ討伐の報告を終えると、農場主は驚きながら目を見開いた。


「……まさか、本当にあの数を一人で!? さすがですじゃ!」


 農場主は大喜びし、報酬金と新鮮な果実を差し出した。


「おおっ、美味しそうだな!」


 アルヴィスが果実を受け取り、手のひらで転がす。

 見るからに瑞々しく、甘い香りが漂っていた。


「これは後で皆でいただきましょう」


 セラフィアが微笑みながら、果実を抱える。


「また何かあれば呼んでください」


 アルヴィスが軽く手を振り、農場主と固く握手を交わした。

 こうして、害獣駆除の依頼は無事に完了した。





 後日、アルヴィス、ガスパール、セラフィアの三人は、再び依頼所へと足を運んでいた。

 フィリスがにこやかに出迎えてくれる。


「がんばりますね」


 セラフィアが小さく微笑みながら言い、依頼掲示板を眺める。

 アルヴィスも横から覗き込みながら、目ぼしい依頼を探す。


「さて、今日は何があるかな……」


 その時、ガスパールが一枚の依頼書に目を留めた。


「……『踊るベジタブル』?」


 その奇妙なタイトルに、アルヴィスとセラフィアも興味を持ち、書類を覗き込む。


 ライン西側の農地では、新鮮な果実や野菜が手に入る。

 だが、時折“妖精のいたずら”によって、それらの野菜が突如魔物と化してしまうことがあるらしい。

 

「農家は本当に大変な仕事らしい……」


 ガスパールがため息をつく。


「それにしても、立て続けに問題が起こって大変だ……」


 アルヴィスも同意しながら、書類を手に取る。

 どうやら今回の依頼は、畑から逃げ出し魔物化した野菜“ベジリス”を討伐し、被害を抑えることが目的のようだ。


「早速、依頼主から詳しい話を聞こうか」


 こうして、一同は近郊農家へ向かうことにした。

 農地へと向かうと、( ゚Д゚)馴染みの依頼主が彼らを迎えた。

 背中を丸め、帽子を深くかぶりながら、彼は困ったような表情を浮かべている。


「よく来てくれましたのじゃ。あの厄介な“ベジリス”がまた暴れ回っておる」

「ベジリス……野菜が魔物化した姿、でしたね」


 セラフィアが頷きながら、話を促す。


「そうですじゃ。やつらは勝手に畑を抜け出しては、踊ったり、驚かせたり、爆発したり、茂みに隠れたり、爆撃してきますのじゃ」

「……爆撃?」


 セラフィアが混乱しながら聞き返す。


「爆発するんですか!?」


 アルヴィスが驚いて前のめりになる。


「うむ、タイプによる」

「はあ、タイプ……」


 ガスパールは難しそうな顔をしながら、依頼主の言葉を反芻する。


「ベジリスは大きく野菜タイプと果実タイプに分かれる。それぞれ特性が違うのじゃ」

「……つまり、敵によって戦い方も変わるってことですね」


 セラフィアが理解しながら頷いた。


「さて、今回逃げたのはなんじゃったか……確か、一種類だけだったと思いますじゃ」

「それなら、すぐに追跡できそうですね」


 ガスパールが視線を巡らせながら言う。


「ひとまず周辺を探索しよう」


「わかりました。すぐに見つけ出しましょう」


 こうして、一同は果実園から情報を集めながら、逃げたベジリスの行方を追うことにした。

 聞き込みの末、ガスパールが地面の痕跡を確認しながら言った。


「多分、あちらに……」

「わかった。行こう」


 アルヴィスが前に出る。

 ガスパールの馬に同乗するセラフィアが周囲を警戒しながら、その後を追う。


 森の奥に足を踏み入れると、何かがうごめく気配があった。

 そして――


 ワシャワシャワシャ……!!


 野菜たちが踊っていた!?

 キャベツの葉が揺れ、ニンジンが地面をピョンピョン跳ね、カボチャがゴロゴロと転がりながら暴れ回っている。

 彼らはまるで生き物のように意思を持って動いていた。

 情報では一種類だけとの話だったが、どうやら仲間を増やし群体を形成したようだ。

 

「……これはまた、奇妙な光景ですね」


 セラフィアがその中から一際大きな力を宿すベジリスを見抜く。

 群体の中央で音頭を取っている葡萄のような存在、それがリーダーのようだ。


「爆発するって話だし、あんな見た目でも注意しよう」


 アルヴィスが鋭く警戒を促す。


「了解、注意します」


 ガスパールが頷き、槍を構えた。

 セラフィアがさらに特性を見抜く。


「これは……地属性。どうやら葡萄の房を飛ばし、爆撃してくる個体のようですね」

「爆撃……ってことは、避けるだけじゃダメだな」


 アルヴィスが剣を握り直す。

 リーダー以外の個体は周りを囲んで踊っているだけのようだ。


「今回はこちらに任せてください」


 ガスパールが腰から砥石を取り出し、槍の刃に水の魔力を纏わせる。


 ゴオォッ!!


 水流が穂先を包み込み、透き通るような青い輝きを放つ。


「行きます!」


 ガスパールが馬の手綱を引き、勢いよく駆け出す。

 セラフィアがしっかりと彼の腰に掴まりながら、魔法の準備をする。

 ガスパールの襲撃に気付いたベジリスが葡萄の房を爆撃のように飛ばしてきた!


 しかし――


「させるか!」


 ガスパールが槍を突き出し、直撃の寸前で房を切り裂く!

 さらに、そのまま勢いを乗せた一撃が、ベジリスの胴体へと突き刺さった!


「おー、一撃か」


 ガスパールが貫いたベジリスをそっと降ろすと、突然粉々に砕け散る。

 リーダーが倒れたことで周りの群体も砕けていく。

 そうして野菜くずだけが残された。


「……」


 い、いらねえ!


 ガスパールが無言で野菜くずを見つめる。


「……まあ、こういうこともあります」


 セラフィアが苦笑しながら彼を慰める。


「……せめて馬の餌にしよう」


 アルヴィスがため息をつきながら、野菜くずを袋に詰める。

 ギルドハウスに戻った一同は、倉庫へ野菜くずをぶち込み、ロビーのテーブルに腰掛けた。


「なかなか集まらないですね、新鮮野菜」


 ガスパールが溜め息混じりに言う。


「ほんとだな……」


 アルヴィスが頭を掻きながら頷く。


「……直接農家に交渉してもいい頃合いかもしれませんよ」


 ガスパールが疲れた顔で提案する。


「確かにそうかもしれないね」

「そうですね……」


 実績を積むために依頼にこだわっていたが、直接交渉して融通して貰うのが一番かもしれない。







 朝日が差し込み、ギルドハウスがゆっくりと活気づいていく。

 今日もまた、冒険者たちが依頼所へ足を運び、仕事を探している。

 そんな中、アルヴィスたちは旅団の援助金を受け取り、ロビーへと集まった。


「ここ数日は新鮮野菜を探しているんですよ」


 ガスパールが、合流したヘネッドへ説明する。


「あ、おはようございます! 野菜を取りにいかれてたんで……やんすね!」


 ヘネッドが、ピンと立った狼耳を揺らしながら答えた。

 

「農家さんの依頼でもらえるんだけど、なかなかね……」


 アルヴィスが苦笑しながら肩をすくめる。


「はい……」


 セラフィアが少し疲れた様子で頷いた。

 ここ最近、新鮮野菜を求めて害獣駆除や害虫駆除を続けていたが、まだ十分には集まっていなかった。


「一先ず今日の依頼を確認しようか」


 そう言いながら、一同は依頼所へ向かうことにした。

 依頼所に到着し、掲示板に目を向けると、様々な仕事が張り出されていた。

 中にはゴブリン退治の依頼もあったが、今回はスルーすることに。


「特に目ぼしいものがなければ、農地に直接交渉しようかと思ってたんだけど……」


アルヴィスが目を細めて依頼書を確認する。


「また害虫駆除の依頼が出ていますね」


 セラフィアが、張り出された紙を指で示した。


「今日も今日とて、蜂退治……か」


 ガスパールが槍の柄を軽く叩きながら呟く。


「蜂でやんすか……?」


 ヘネッドがやや不安そうに呟く。


「まぁ、何度も受けてるから勝手知ったるってやつさ」


 アルヴィスが前向きに笑いながら、紙を手に取った。

 こうして、一同は農地へと向かうことになった。




 ガスパールの馬の後ろにセラフィアが同乗し、その隣をヘネッドが、足並みを揃えて小走りでついていく。


「はい、ついて行きます……行くでやんす」


 ヘネッドが、慣れないながらも必死についていく。

 一方、セラフィアはすでに馬上の乗り心地に慣れている様子で、涼しい顔をしていた。

 対するガスパールは、まだ慣れないのか、微妙にぎこちない姿勢で手綱を握っている。


「……少しずつ慣れていけばいいですよ」


 セラフィアが微笑みながら、そっと声をかけると、ガスパールは少しばかり気恥ずかしそうに頷いた。


 農場に到着すると、依頼主である農場主が出迎えた。


「おや、はじめましてですな」


 彼はヘネッドを見て、軽く頭を下げる。


「わしは多分村長ですじゃ」

「多分ってなんですか……?」


 アルヴィスが半ば呆れながらも、苦笑いを漏らす。


「今日は別の仲間もご一緒してます」


 そう言いながら、アルヴィスがヘネッドを紹介した。


「えっと、初めまして。わた、あっしはヘネッド。よろしくお願い、するでやんす!」


 ヘネッドが少し緊張しながら自己紹介する。

 依頼主は、彼女の特徴的な口調や、手にした弓を興味深そうに見つめた。


「ヘネッドさん、どうか害虫を頼みましたじゃ」

「はい、頑張ります……頑張るでやんす!」


 小さく拳を握りながら、ヘネッドが力強く頷いた。


 野菜園へ向かうと、耳をつんざくような羽音が響いてきた。


「……随分近いですね」


 セラフィアが、空中を舞う黒い影を見ながら言った。

 ガスパールが翼を広げ、セラフィアを包むようにして警戒。

 ヘネッドが弓を構えるが、蜂とガスパールが近すぎるため、下手に撃つと味方を巻き込む可能性があった。


「巻き込んでも構わん。うまくやる」


 ガスパールが低く言い放つ。


「……わかりまし、わかったでやんす!」


 ヘネッドが矢を連射!

 ガスパールが翼で風を起こし、それを蜂の群れへと吹き飛ばす。

 さらに、アルヴィスが大剣を振るい、矢を蜂へ向かって弾き返す!

 しかし――


「なんだこいつら……!?」


 蜂たちは予想を超える速度で動き、全ての矢を回避した。

 明らかに統率が取れている!


「ダメか……!」


 ガスパールが驚愕する。


「それじゃ、俺が」


 アルヴィスが、蜂の逃げ道を読んで待ち構えていた!


 ザシュッ!!


 蜂たちが矢を躱した直後――

 その先にいたアルヴィスが、巨大な剣で一閃し、蜂の群れを一掃した!

 蜂の群れを殲滅し、辺りが静寂に包まれる。


「ありがとうございます。さすがですね」


 ガスパールが感心する。


「す、すみません。昨日さぼっちゃったからでしょうか……」


 ヘネッドがしょんぼりと呟く。語尾もそのせいか普通の口調になってしまっている。


「誰しも休息は必要ですよ」


 ガスパールが優しく慰める。


「……終わったな」


 アルヴィスが剣を軽く振り、刃についた蜂の体液を振り払う。

 戦闘の余韻を感じながら、ヘネッドはそっと弓を下ろした。


「す、すみま……すねえでやんす……もうちょっと狙いをつければよかったんですけど」


 彼女は、先ほどの戦いで矢を外したことを気にしているようだった。


「気にするな。蜂の動きが予想以上に速かっただけだ」


 ガスパールが翼をたたみながら、落ち着いた声でフォローする。


「むしろ矢が飛ぶ方向を利用できたので、助かりましたよ」


 セラフィアも微笑みながら言葉を添えた。


「……そ、そうでやんすか?」


 ヘネッドは少しだけ顔を明るくして、ほっと息をついた。


「さて、ドロップ品を回収しよう」


 アルヴィスが戦場を見渡しながら、蜂の残骸へと歩み寄る。

 蜂の体は、ほとんど原型をとどめていなかった。その中から使えそうな素材を慎重に選別する。


「これは……羽根……これも……羽根……」


 い、いらねえ!

 けれどいつか何かに使えるかもしれないと、ギルドの倉庫に入れる為に一度携帯品として収納した。


「おお、さすがの手腕ですじゃ。こちら、守っていただいた野菜ですじゃ」


 依頼主は深々と頭を下げる。


「これで、作物を安心して育てられます」

「害虫被害が落ち着けば、収穫量も増えるでしょう」


 セラフィアが微笑みながら言う。


「遠くから見ていましたが、嵐のように舞う矢はまるで絶景でしたぞ」

「あ、あはは。ざっとこんなもんでやんすよ! ……はぁ」


 その全てを躱されたヘネッドが再びしょんぼりした顔になるのを見て、アルヴィスが軽く肩を叩く。

 顔を上げたヘネッドがぱんぱんっと自分の頬を叩き気合を入れ直す。


「さすがの手腕ですじゃ。こちら、守っていただいた野菜ですじゃ」


 報酬金と共に野菜園から収穫してきた新鮮野菜を手渡してくれる。

 それを手にとったガスパールがアルヴィスとセラフィアと顔を見合わせてから微笑んだ。


「ありがとうございます、大事に使いますね。こちらとしても受けて助かる依頼でした」


 はて、使う? 一瞬混乱するも、何かの聞き間違いだろうと依頼主は微笑み返す。


 一同は農地を後にし、依頼所へ達成報告を行なう。

 その後、ギルドハウスに戻り倉庫へと足を向ける。


「これでようやく、目的の物が揃ったね」


 アルヴィスが、安堵の表情を浮かべながら言う。


「はい、奉納に行きましょう」


 セラフィアが微笑みながら応える。


 倉庫の扉を開けると、そこにはこれまで集めた数々の素材が丁寧に保管されていた。

 アルヴィスは蜂の羽根を専用の箱に入れ、慎重に保管する。


「蜂の羽根も何かの素材としても使えるかもしれない……あとで加工の相談をしよう」


 そう言いながら、彼は手を払って倉庫を閉める。

 

「そういえば……」


 ヘネッドが、ふと何かに気づいたように声を上げる。


「キマイラとかナイトフットバルーンの触手も、揃ったって聞いたでやんすけど……」


 彼女は目を丸くしながら、アルヴィスとガスパールを交互に見た。


「いつの間にそんなもん集めたんでやんすか!?」


 驚きのあまり、耳がピンと立つ。


「ふふっ、色々と大変でしたよ」


 セラフィアが、どこか懐かしむような笑みを浮かべる。


「まあ、色々あったが……何とかなったってとこだな」


 ガスパールが槍の柄を軽く叩きながら、淡々と答えた。


「それにしても、奉納に必要なものって……改めて見ると、結構とんでもないよな」


 アルヴィスが肩をすくめる。

 薬草にキマイラの素材、ナイトフットバルーンに触手、ブロードソード、そして新鮮野菜。

 まるで冒険譚の一幕のようなラインナップだ。


「確かに……普通の人はこんなもの集めようともしないでやんすね」


 ヘネッドが苦笑しながら頷く。


「ともあれ、これでようやく奉納ができるわけだ。行こう」


 アルヴィスが手を叩き、一行は次元の歪へと向かった。





 次元の歪を超えた先。

 穴の向こう側には、いつものようにスケルトンソルジャーたちが待ち構えていた。


 しかし、今日の彼らは違う。

 まるで、過去の戦いを記憶し、経験を積んでいるかのように、より洗練された動きで剣を構えている。


「……日に日に強くなってないか?」


 アルヴィスが剣を構えながら、低く呟く。


「気のせいじゃないでやんすね……あっしの勘が、何か嫌な予感を告げているでやんす」


 ヘネッドが弓を番え、目を細めながら言う。

 それでも、今度こそは良いところを見せる!


 ヘネッドは矢を構え、フェイントをかけながら照準を合わせた。

 鋭い視線が、敵の動きを追う。


「……今度こそ当てるでやんす!!」


 矢が放たれ、真っ直ぐスケルトンソルジャーの頭部へ向かい――直撃。

 矢は見事にスケルトンの頭蓋を貫いた。


「よし!」


 ヘネッドが手応えを感じた瞬間、倒れたスケルトンソルジャーが、ゆっくりと起き上がる。

 その暗い眼窩がアルヴィスを睨みつける。


「まだ立ち上がるのか……!?」


 アルヴィスがすかさず剣を振り上げる。


 一閃、一閃――さらに一閃。

 今度こそは倒せたかと思ったが、それでも、スケルトンたちは、まるで戦闘経験を積んでいるかのように、立ち上がる。


「……こいつら、難敵すぎる!」


 アルヴィスが息を整えながら、構えを解かない。

 ガスパールが炎熱の砥石を取り出し、ジャベリンに炎を宿す。馬を駆り、槍を振りかぶる。炎の一閃がスケルトンソルジャーを焼き尽くし、ついに一体が完全に崩れ落ちた!



 だが、残るスケルトンソルジャーたちは、明らかに今までと違う動きを見せた。

 ガスパールが敵を薙ぎ払うと、別の個体がすぐさま反応し、鋭い剣撃を繰り出す!


「ッ!」


 ガスパールは素早く馬の手綱を引き、槍で敵の剣を弾いた。


 しかし、次の瞬間――!


 ガキィン!!


 背後に回ったスケルトンソルジャーが、セラフィアを狙って剣を振り下ろす!


「……!?」


 セラフィアが振り向く。


 間に合わない――っ! 

 

 セラフィアが目を見開いたそこに、一枚の羽根が舞う。

 ガスパールが翼を大きく広げ、セラフィアを護るように展開したのだ。


 その瞬間、スケルトンソルジャーの剣が羽根を叩いたが、岩を斬るかのように刃は滑る。


「……ノーダメージ、か」


 アルヴィスが安堵の息をつく。

 しかし、これすらも陽動だった――


 残るスケルトンソルジャーが、セラフィアへ渾身の一撃を繰り出す!

 まるで、お前はこいつを護るだろう? とでも言わんばかりに。


「……!」


 ガスパールが即座に反応し、盾を振るう。

 渾身の一撃を受け流し、反動を利用して馬と共に距離を取る!


「…ありがとうございます」


 セラフィアが落ち着いた声で礼を言う。


「仲間ですから」


 ガスパールが静かに返す。


「はい…良い仲間に恵まれました」


 セラフィアが柔らかく微笑んだ。


「ヘネッド、トドメを!」

「今度こそ……これで終わりでやんす!」


 アルヴィスの声を聞いたヘネッドが、スケルトンソルジャーへ矢を番え、狙いを定める。

 矢が放たれ、スケルトンソルジャーの眼窩を正確に射抜いていく。

 スケルトンソルジャーたちはついに崩れ落ち、完全に動きを止めた。


「ふぅ、毎回ここを通る時は精神力を使います……使うでやんす」


 ヘネッドが弓を納め、額の汗を拭う。


 ガスパールがスケルトンのドロップ品を拾い集める。


「死者の鋭牙二個、死者の牙六個……」


 ガスパールが収納しながら呟く。


「日に日にスケルトンたちは動きがよくなっている気がします。いずれ手に負えない敵になるのでは…」


 彼の言葉に、全員が黙り込む。


「そうなると怖いね……」


 アルヴィスがぼそりと呟く。


「……彼らも成長するんでしょうか?」


 セラフィアが困ったように眉を寄せる。


 明らかに、今までのスケルトンとは違っていた。

 まるで、戦いを学んでいるかのような動き――。

 偶然ならばまだ良いが。これで次来た時も強くなっていたらと考えると、背筋がゾッとした。




 奉納エリアの祭壇に、新鮮野菜の最後の二つをそっと置く。

 全員が息を詰める中、ガスパールが静かに口を開いた。


「さあ、これで何が……」


 彼の言葉に、ヘネッドが興味深そうに祭壇を見つめる。


「何が起きるか……自分の目で見られるとは、ありがたいです」


 彼女が感慨深げに微笑む。


「この先には、一体……」


 アルヴィスが呟いたその瞬間だった。


 ——ゴォォォン……。


 どこからともなく、低く響く音が鳴り渡る。


『時空歪の奉納完遂を確認……』


 その瞬間、身体の奥底から力が溢れ出るような感覚が走った。

 まるで、今まで持っていた力が解放されたような、そんな感覚。


「……なんだか強くなった気がする?」


 アルヴィスが首を傾げ、周囲を見渡す。


「他に……何も起こってないよね?」

「なにも…」


 ガスパールも警戒しながら辺りを見回すが、異変はない。


「…特には」


 セラフィアも困惑しながら答える。


「そう……ですね。なにかを得た感じはしますけど……するでやんすけど」


 ヘネッドが腕を組みながら、慎重に言葉を選ぶ。


 奉納エリアを後にし、一同は北東の部屋へと歩みを進める。

 その途中で、アルヴィスが懐に違和感を覚えた。


「……?」


 手を突っ込むと、そこには見覚えのない鍵があった。

 それを取り出した瞬間、冷たい金属の感触とともに、微かに漂う魔力が指先を包む。


「奉納によって手に入った鍵……?」


 アルヴィスは不思議そうにそれを見つめる。

 鍵を確かめながら北東へ向かうと、そこには巨大な封印が施された扉があった。

 しかし、その封印は完全ではなく、半壊している。


「この厳重な封印の先……一体何が……!」


 ガスパールが慎重に観察する。


 奉納の影響で封印が緩んだ可能性もあるが、得た鍵の存在を考えると、以前倒したキマイラの影響ではないかとも考えられる。

 もしそうなら、まだ別のボス級の敵が残っている可能性が高い。


 部屋を出た一同は鍵のかけられていた北のエリアへ向かう前にナルトの回収をすることにした。

 アルヴィスが4個、ガスパールが2個、セラフィアとヘネッドが3個ずつ回収する。


「たくさんとれました……とれたでやんす」


 ヘネッドが感心しながらナルトを手に取る。


 さらに、奉納後に残った新鮮野菜と、以前手に入れた果実もあったため、一度ここで休憩を取ることになった。

 アルヴィスとヘネッドが、新鮮野菜と果実を口にする。


「ナルト、いりませんか?」

 セラフィアが、手に入れたナルトをアルヴィスへ差し出す。


「えっ、俺もう10個も持ってるんだけど……」


 アルヴィスが少し困った顔をする。


「……でも、遺跡の敵への対策として、備蓄しておいた方がいいかもしれないな」


 そう言いながら、彼は受け取ることにした。


 休憩を終えた一同は、北のエリアへと向かう。以前調べた時は鍵がかけられ奥に進めなかった扉だ。扉の前で、アルヴィスは手にした鍵を差し込んだ。


「この鍵で……よし! 開いた」


 鍵を回すと、カチリと重厚な音が鳴り、扉がゆっくりと開く。


「……!」


 ガスパールが槍を構え、警戒する。


「先を……見ますか?」


 セラフィアが慎重に尋ねる。

 一同が頷き、中へと足を踏み入れた。


 扉の先に広がっていたのは、神聖な雰囲気を湛えたエリアだった。

 壁には装飾が施され、床には淡く光る魔法陣が描かれている。


 そして――


 どこからともなく、美しい旋律が流れていた。


「美しい場所ですね……」


 ガスパールが、思わずその光景に見入る。


「この音楽はどこから……?」


 アルヴィスが音の出所を探すが、奏者の姿は見えない。

 ヘネッドも警戒しながら周囲を見回すが、どこから音が流れているのかは分からなかった。


「歪み……ですね」


 セラフィアが、中央にある次元の歪を見つめ、ぼそりと呟く。


「罠があるかもしれません……」


 ヘネッドが慎重に近づき、手慣れた動きで調査を行う。


「えっと、あっしの見立てによると、罠はなさそうです……でやんす」

「それじゃ、行ってみようか」


 アルヴィスが先導し、一同は歪の向こう側へと足を踏み入れた――。






 歪の先。

 そこには、赤々と燃え盛る村の光景が広がっていた。

 建物が焼け落ち、瓦礫と灰が散乱している。

 しかし、不思議なことに人の気配はない。


「……村?」


 アルヴィスが目を細め、燃え上がる家屋を見つめる。


「おかしいですね……炎に包まれているのに、誰もいない」


 セラフィアが違和感を抱きながら呟く。


「まるで……誰かが燃やした後みたいです……みたいでやんす」


 ヘネッドが、警戒するように弓を握りしめる。


「何かいる……?」


 目を細めたガスパールの視線の先、灰の中、反射する輝きがある。

 それは水晶でできていた。人型のそれ――クリスタルゴーレムの煌めく外殻は、まるで宝石のように光を反射し、威圧的な存在感を放っている。

 そして、その後ろには、オルゴールを奏でるゴーレムが三体。静かに、しかし確かに旋律を奏でていた。


「オルゴーレム……!?」


 アルヴィスが眉をひそめる。


「厄介ですね。あの旋律を放っておけばクリスタルゴーレムが強化されかねません」


 セラフィアがすぐに分析する。

 その証拠に、ゴーレムの青白い輝きは、オルゴーレムの旋律に合わせるように脈動していた。


「やれなくはないかもしれないけど……問題はオルゴーレムの呪歌だ」


 ガスパールが冷静に状況を整理する。


「クリスタルゴーレムの行動を加速させる……連続でこられるとマズい」

「それなら、オルゴーレムを優先して倒すしかない……!」


 アルヴィスが剣を握りしめる。


「……とはいえ、撤退も考えるべきか?」


 一瞬、歪へ戻る選択肢が頭をよぎる。


 しかし――


 ゴウン……!!


 ゴーレムたちが動き出す。


「……耐えるしかないですね」


 ガスパールが歪を背にしながら言う。


「……やれるだけやってみるか」


 アルヴィスが、静かに剣を構えた。


「ヘネッドとは距離をとる! 一か所に固まるな!」


 アルヴィスが指示を出し、それぞれが散開する。


「ゴーレムにはビームを撃つやつが多いから……範囲攻撃を避けるためにもバラけるんですね……でやんすね!」


 ヘネッドが、すぐに間合いを取りながら弓を構える。

 馬上にセラフィアを乗せたガスパールはその場から動かず、ゴーレムとの間合いを見計らっていた。


「これをまとめて切るのは厳しそうだ。魔法の砥石があるガスパールさんが要だ!」

「……努力はします…!」


 全員が構えたその次の瞬間―― クリスタルゴーレムの眼が強く輝く。


「……来る!!」


 純粋な魔力を凝縮したクリスタルビームがガスパールへ一直線に放たれる!


「防御の要を潰しに来たか……!!」


 ガスパールが槍を構えながら目を見開く。


「プロテクション!!」


 セラフィアが即座に魔法障壁を展開する。

 しかし、光のバリアが粉々に砕ける。


「くっ…!」


 直撃したガスパールが、盾と魔法障壁で威力を軽減しつつも、大きくのけ反る。


「ガスパールさん!!」

「まだ……戦える……!!」


 即座に態勢を立て直し、クリスタルゴーレムを真っすぐ見据える。

 ヘネッドが上質の素材で作られた矢弾、ファインアローを取り出し装填。ゴーレム全てを標的に収め一気に解き放つ! 全てのゴーレムに命中するも、クリスタルゴーレムにはほとんど傷がついていない。

 

「まずは、オルゴーレムを沈める!!」


 アルヴィスが一歩踏み出し、剣技を放つ構えを取る!

 スラッシュブロウ――素早い連撃が、オルゴーレムたちを正確に切り裂く! 同時にクリスタルゴーレムにも斬撃を浴びせたものの、こちらはやはり今一つ。

 オルゴーレムたちが揺らぎ、音楽が乱れ、停止する。


「よし……何とか周囲は片付いた!」


 アルヴィスが息を整えながら剣を構え直す。

 自分が乗っていてはガスパールが思い通りに動けない。邪魔になることを避けるため、馬上から降りたセラフィアは一度身を隠すことにする。


「がんばってください!」


 そう言いながら、手をかざす。

 ヒールの魔術が発動し、淡い光がガスパールの傷を包み込み、癒していく。焼けるような痛みが和らぎ、彼は深く息をついた。


「ありがとうございます…!」


 ガスパールは炎熱の砥石を使い、槍に炎を纏わせる。槍の先端が赤く燃え、灼熱の力を帯びていく。馬を駆り接敵したガスパールは素早い刺突でクリスタルゴーレムに攻撃を繰り出す! 確かな手応え、しかし致命傷には程遠いが、ヘネッドとアルヴィスがつけた傷より大きな傷が入る。


「やはりこれならば効く!」


 もう一度追撃と馬を旋回させたその刹那――

 

 ズォォオン!!


 クリスタルゴーレムの身体がふわりと浮いた。


「飛んだ……!?」


 アルヴィスが即座に距離を取る。


(飛ぶのか! この巨体で!?)


 驚愕するガスパール。

 燃え盛る炎の中、巨大な水晶の塊が空へと浮かび上がる異様な光景。それは神秘的であると同時、この場所の支配者が自分だと言わんばかりに圧倒的な姿。

 空中で拳を振り上げたクリスタルゴーレムが、ガスパール目掛けて一撃を放つ!


「くっ……!!」


 ガスパールが即座に回避しようとする。

 だが――速い!! 巨大な拳が、彼の防御を突き破るかのように直撃する!


「ウオオオオーーッッ!!」


 馬上からガスパールの身体が吹き飛び、空中で激しく回転する!


(まずい……!)


 そのまま地面に叩きつけられるかと思われたが――


「プロテクション!!」


 セラフィアが咄嗟に魔法障壁を展開!

 それがクッションとなりダメージを軽減することに成功する。

 受け身を取りつつ勢いを利用しバックステップ! ガスパールがいた地点に上空から飛来したクリスタルゴーレムの拳が叩きつけられる。一歩遅れていれば直撃していた――。

 躱したガスパールを追うようにクリスタルゴーレムが再び飛来。そこにセラフィアを降ろした馬がやって来てガスパールは掴みあがるように騎乗。クリスタルゴーレムから距離を取るもあちらの方が速い……! ジャベリンを巧みに使いこなしクリスタルゴーレムの拳をいなすギリギリの戦い。ガスパールとクリスタルゴーレムは衝撃を利用しながらぶつかり合い、その度に火花が散り、激しい音が響き渡る。オルゴーレムの旋律が止まった場所で、戦いの旋律を奏で続ける。

 

「激しいぶつかりあいだ……通るかわからないけど……俺の全力をぶつける!」


 アルヴィスは燃え盛る建物の屋根へ飛び乗る。そして――剣を構え、クリスタルゴーレムの動きを見極める。


「アルヴィス……!!」(来てくれたか!)


 ガスパールがクリスタルゴーレムの攻撃を受けながらも、声を張る。

 アルヴィスは深く深呼吸。剣に意識を全集中し、研ぎ澄まされた感覚でクリスタルゴーレムを捉えた。


「そこだッ!」


 屋根を蹴り上げクリスタルゴーレムへ渾身の力を込めた剣を振り抜く!

 斬撃は複数の真空波を発生させ、斬り付けた場所をより深く抉るように切り裂いた。

 

「後は頼んだよ! ガスパールさん!」

「ああ!」


 駆ける馬の勢いを利用し、ガスパールは大きく飛び上がる。背中の翼が大気を切り裂き、追い風を纏いながら、槍を一直線に構える!


「逃がすかッ!」


 炎熱を纏った槍が、クリスタルゴーレムの胴を貫く!

 砕け散る水晶が、炎の光を受けて宝石のように煌めきながら舞い散る。

 クリスタルゴーレムはよろめきながらも、腕を振り払い、ヘネッドの放った矢を弾きながら逃げる。


「しぶといですね……!」


 ヘネッドが眉をひそめる。

 クリスタルゴーレムは逃げることをやめ、そのまま空中での決戦の構えを取る。


「……きみもその気か……! いいだろう!」


 ガスパールが槍を握り直し、真正面から対峙する。

 

 次の瞬間――


 ゴウンッ!!


 クリスタルゴーレムが、空中で巨大な拳を振り上げた!

 ガスパールが咄嗟に盾を構えそれを受け止める! もう一方の手に炎熱を纏わせたジャベリンを握りしめ、体を捻り回転! 衝撃を受け流しクリスタルゴーレムを刺突する。

 クリスタルゴーレムに罅が入るが、それでも尚倒れない!

 息も絶え絶えのガスパールにすかさずセラフィアがヒールの魔術を使い傷を癒す。

 再びの衝突。クリスタルゴーレムの拳を空中で屈むように躱し槍での刺突!


「倒れろ……ッ!」


 建造物を利用し死角に入ったアルヴィスが呟く。


「……行けるか?」


 ヘネッドの放った矢がクリスタルゴーレムに飛来! クリスタルゴーレムは煩わしそうにそれを振り払うが、そこに確かな隙ができる。


「みなさん、応援してます……してるでやんす!」


 アルヴィスが建物を蹴り上げながら屋上へ駆け上がり、さらにそこから飛翔するようにクリスタルゴーレムの上へ出る!

 落下の勢いを利用し凄まじい斬撃を加えるも、クリスタルゴーレムは逆にその勢いを利用しアルヴィスを地上へ叩きつけんとする!


「届かないか……!」

「……っ!」


 すかさずガスパールが下に入りクッションになるように抱き留める。

 その背にセラフィアのプロテクションがさらに入り、ダメージを最小限に抑える。


「たすかった!」


 地上で態勢を立て直したアルヴィスは剣を手にさらなる追撃をかけようとするも、体がよろける。


「くそっ! もう力が入らないか……」


 剣を杖にやっと立ち上がり、その間にガスパールは空へ舞い戻りクリスタルゴーレムの相手をしていた。

 二つの影は空で何度も何度もぶつかり、その度に水晶は砕け、血がそれを染め上げた。

 長い長い攻防の末――。

 ガスパールは炎の槍でクリスタルゴーレムを穿ち貫き、そのまま捻り互いに回転しながら地上へと落下する!


「やった……?」


 アルヴィスが呟いた。

 

「ガスパールさん!」


 落下地点へ急ぐアルヴィス。セラフィアとヘネッドもその場へと合流すると、槍を引き抜いてクリスタルゴーレムを足で押し倒す勝者の姿があった。


「おわっ…………た……」


 そのままがらり崩れ落ちる。

 

「お見事でした」


 その巨体を支えるように、セラフィアが声をかける。


「す、すごいです! あ、すごいでやんす!!」


 飛び跳ねるようにヘネッドが喜びの声を上げ、戦闘の終わりをようやく実感することができた。


「いいや……一人ではどうにもできませんでした。こちらこそ感謝したい……ありがとうございました。これで俺は……もっと強く……!」


 彼の言葉に、アルヴィスが手を差し出す。


「ああ、まだまだ強くなれるよ。俺たちは」


 ガスパールがゆっくりとその手を取り、アルヴィスの支えで立ち上がる。

 全身に戦いの疲労が残るが、それでも彼の瞳には確かな成長の実感が宿っていた。


 アルヴィスが、ガスパールの倒したクリスタルゴーレムの残骸を慎重に解体していく。

 剣を振るい、繊細な動きで砕けた結晶の間から、輝く大宝石を取り出した。


「……これは凄いな」


 炎の光を受けて、虹色に輝くそれは、中々の高額で売れる良品だった。

 だが、アルヴィスは微かに唇を噛む。


(……傷をつけすぎたか。もっと良いものが手に入ったかもしれないな)


 そんな彼の思いを知ることなく、ヘネッドが驚いたように覗き込む。


「おお……高級品ですね……あ、高級品でやんすね!」

「うん、けど……まだ上の品質があったかもしれない」

「いや、十分すぎる戦利品ですよ。無事に勝てただけでも御の字です」


 セラフィアが柔らかく微笑みながら言う。

 その後、ガスパールとセラフィア、ヘネッドもそれぞれオルゴーレムの解体に取り掛かる。

 彼らが手に入れたのはゴーレムの宝石と鉄の塊。

 それぞれ回収したものを収納し、再び集まった。


「さぁ……って。流石にこれ以上の探索は危険だ。いったん帰ろう」


 アルヴィスが慎重に言葉を選びながら言う。

 しかし、誰もが何かを感じていた。


 まるで、遠くから何かが目覚めるような……封印が解かれ、新たな力が解き放たれたかのような感覚。

 ガスパールが静かに頷く。


「そうしましょう……」(きっと、あの封印が……)


 彼の言葉に、セラフィアも少し考えた後、小さく「はい……」と答える。


「ちょっとだけ、あっちの方を見に行ってもいいですか?」


 ヘネッドが、村の端へと向かいながら言う。

 アルヴィスも興味を引かれ、後を追う。

 

 だが――


 バシュッ!!


 突然、目には見えない何かがヘネッドを弾き飛ばした!!


「!?」


 彼女はとっさに体勢を立て直し、驚愕した表情を浮かべる。


「……なんですか!? まるで見えない壁にぶつかったみたいです!!」


 アルヴィスが試しに手を伸ばすと、何かが見えない力場に阻まれるように跳ね返された。


「どうやら、この場所からは戻ることしかできないようだな」


 ガスパールが慎重に観察しながら言う。

 確かに、村の外へ向かう道には異様な気配が漂っている。

 それはまるで、ここから先に向かうことを禁じているかのようだった。


「……やっぱり、一度ギルドへ戻ろう」


 アルヴィスが決断する。


「また敵がいたら全滅しかねないしな」


 ガスパールも同意し、一同は次元の歪へと足を向ける。

 炎の村を後にし、歪の先にある、元の世界へ戻っていく。






 夜の帳が下りた街並みを抜け、一同はギルドハウスへ帰還した。

 燃え盛る村での激戦を終え、今はようやく一息つける時間――。


 風の旅団ギルドハウスの扉を開けると、ロビーには暖かな灯火が揺れ、いつもの空気が広がっていた。


「……ただいま戻りました……でやんす」


 ヘネッドがホッとしたように息をつきながら、軽く手を振る。


「よう、無事だったか?」


 ギルドのロビーで女の子にちょっかいを掛けていたギルドメンバーの一人、ラッパァンがアルヴィスの肩を叩きながら声をかけてくる。


「なんとかね」


 それを軽くあしらいながら苦笑い。

 ラッパァンはもうすぐ別のギルドに移籍する予定の先輩は女遊びが大好きだけど、たまーに頼りになる、そんな男だった。


「おおっと、もうこんな時間か。それじゃあな!」


 どうやらその移籍先のギルドとの会合があるようで、ラッパァンは風の旅団を後にする。

 嵐のように去った男を見送りながら、他のメンバーも椅子に座り深い深い息を吐いた。


 セラフィアが疲れた笑みを浮かべる。


「激戦でしたね……」


 彼女の言葉に、アルヴィスも頷いた。


「さすがに疲れたよ……今日はゆっくり休ませてもらおう」


 彼は椅子にどかっと腰掛け、剣を横に置くと、大きく息を吐く。

 戦いの緊張感から解放され、身体の芯まで疲労が染み渡るようだった。


 戦いの記録をギルドに報告し、手に入れた戦利品を整理する。

 アルヴィスたちは、ドロップしたアイテムを確認しながら、必要なものと売却するものを仕分けていった。


「ゴーレムの大宝石は……いい値がつくな」


 アルヴィスがそれを手に取り、光にかざすと、宝石の表面が美しい輝きを放つ。

 それを見たヘネッドが満足そうに頷く。


「1500Gはなかなかの稼ぎでやんすね!」

「うん、悪くないな」


 アルヴィスが換金用に仕分ける一方、ガスパールは小さな袋を手に取り、納品先を確認する。


「……死者の牙、だな」


 彼はそれを手にしながら、アデス武具店へと向かう。








 アデス武具店の扉をくぐると、カウンターの奥では職人たちが忙しなく動いていた。

 鍛冶の槌の音が響く中、店主のアデスが振り向く。


「おう、確かガスパールか。何か用か?」

「死者の牙を持ってきた。武具加工の材料になるんだろう?」

「おお、助かるぞ。こいつがあれば、強靭な刃を作れる」


 アデスは受け取った牙をじっくりと観察し、満足そうに頷く。


「毎度毎度すまねえな。また何か良いもんがあれば持ってきてくれや。お前たちのような戦士が持つにふさわしい武具にしてやる」

「期待してる」


 ガスパールは短くそう答え、店を後にする。


 ギルドハウスへ戻ると、アルヴィスたちはロビーのテーブルで軽い食事を取っていた。

 疲れた身体に、温かいスープが心地よく染み渡る。


「ふぅ……」


 アルヴィスがマグを傾けながら、しみじみと呟く。


「無事に帰って来られて良かったです……でやんす」


 ヘネッドがパンをちぎりながら笑う。


「本当に。……今日の戦いは、色々と考えさせられることが多かったですね」


 セラフィアが穏やかに言う。


「そうだな。でも、俺たちは強くなっている……それだけは確かだ」


 ガスパールが槍を横に置きながら、静かに言葉を続けた。


 やがて、ギルドの灯りが落ち、静寂が訪れる。

 戦いの疲れを癒すように、それぞれがベッドへと向かい、今日という日を締めくくる。


 外では、星々が夜空に瞬き、風が静かに街を包み込んでいた。


 それぞれの思いを胸に、一同はしばしの休息を取る――。

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