エピローグ

 デスゲームを終え、ケイシーが正式に僕らのチームに加入した。


 チルトのルールで、チルトに入る前日に泊まっていたホテルには戻れるため、僕たちはラブホテルへと戻ってきていた。


 ケイシーがこの部屋を見るなり、凜に馬乗りになって何かを問い詰めていたが、それもさっき終了した。


 ケイシーは今、お風呂に入っている。もちろん透明な壁なので、僕はお風呂と反対側を見ている。


「ケイシーちゃんと何もめてたの?」


「この部屋ではオオカミは出現するのかについてでありんす」


「オオカミ? もしかして僕が襲うとでも思われていたの?」


 ケイシーにそんな風に思われているとは思わなかった。そういえば胸を触ったことまだ謝っていなかった。きっとそれが原因だ。あとで謝ろう。


「少し違うでありんすけど、まあそんなところでありんす」


 実際は、ケイシーが凜と凡がそういう関係なのかと問い詰めていただけである。


「そういえば、お嬢はどうして痛みを感じなくなったの?」


 ゲーム中で聞けなかった疑問を凜に投げかけた。


「言ったでありんしょう。能力の代償だと」


「いや、違くて。そんな大きな代償を受けるほど、誰に幸運を与えたの?」


 凜は思い出そうとしているのか黙った。


「……。覚えていないでありんす。そんなことよりどれだけ妾のこと知りたいんでありんすか。このロリコンが」


「イッタァァァァ!」


 僕が脛を抑えて叫んでいるときに、凜はぼそっと呟いた。


「確かに変でありんすね」

 



 チルトの深い階層のある部屋には二人の人物がいた。


 二人の前にはモニターがあり、そこにはちょうど今、起き上がった凡が映し出されている。


「そういえば、里奈。今回は随分と思い切った行動に出たようでありんすね。ヘリオットまで出して」


 凜と同じ口調。いや、凜が同じ口調をしていると言ったほうがいいのかもしれない。声を発したのは凜よりも何年も長く生きている大人の女性。


 女性に里奈と呼ばれた人物は凜と同い年くらいの少女だ。


「私は主様の計画のためと思って行動しただけですよ。実際『軽減のハンカチ』がなければ露光凜は死んでいましたよ」


「他人行儀な言い方でありんすね。それに妾は死んでも問題なかったんでありんすが。死んでいたらそこまでの実力、いや、運のなさだったということでありんしょう。妾はてっきりがここに来ることを阻止しようとしたのかと思ったんでありんすがね。ピエロのヘリオットを送り込んだのも、姉を可哀想に思い、里奈が泣いていることを表していたんでありんしょう」


 まるで全てがお見通しと言わんばかりに、女性は後ろに仕えている里奈へと視線を向ける。


「そんなことありませんよ。私の家族を破壊した糞姉なんて死んでしまってほしいくらいです。ヘリオットさんを送り込んだのは偶然ですよ」


「そうでありんすか。病気で死ぬはずだった里奈を助けたというのに、ここまで恨まれるとは里奈の姉も不憫でありんすね」


 女は里奈から視線を外すとモニターに再び目を向けた。


「まあ、生き残ったのは悪くないでありんすね。続々と『特別スピッツァル』が集まってきんしたし、そろそろ楽しくなりそうでありんす」


 女のつぶやきと共にモニターの電源は切れた。

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平凡ギャンブラー気づけば、命がけの奴隷ギャンブラー ゼータ @zetaranobe

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