The Evil

陽菜花

プロローグ

昔、どこかの海に一つの美しい島がありました。


主に島の北部は裕福な暮らしをする人々が、南では貧しい人々が集まりがちでした。

それに怒った南の住民は島の国王に訴えました。


訴えを聞いた国王は南の住民を助けようとしましたが、北の住民がそれに反対し、デマが起こるようになりました。

南の住民も黙ってみていられず、北の住民に反抗します。


ついには、北と南同士の争いにまで発展し、手が付けなくなってしまいました。


北の住民は王家直属の魔法使いを、南の住民は森の魔法使いを呼び出しました。



魔法の戦いが始まったのです。



――戦いの結果、北側が勝利しました。



王家の魔法使いにより、島は二つに分けられました。

北側はどんどん裕福になり、南側はさらに貧しい生活を強いられ、次第に北に対し恨みを持つようになりました。


さらに、戦いに負けた森の魔法使いは杖を没収され、処刑されてしまいました。

これを知った南の住民はとても悲しみました。


最後に、王家の魔法使いは分かれた南の島に強力なバリアを張り、二度と南の住民が北の島に入れないようにしました。

南の住民は恨みどころか、今の惨めな生活に対し我慢するようになってしまったのです。



そして、70年後。


今でも南の住民は貧しい生活をしています。

戦いに敗れた森の魔法使いを「英雄」と称え、その子孫であるキャリバン家を畏れています。


北では森の魔法使いを倒した王家の魔法使いと、処刑した王家を「英雄」とし、神のような存在になっていました。


北の住民は自分勝手で、貧乏嫌い、偉そう。

南の住民は野蛮で、汚く、品がない。

といった概念がいつしか生み出され、誰もこの問題に違和感を感じず、解決しようとしなかったのです。

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