第3話

雪の言葉に、私の表情が曇る。




「…いくら話しても無駄だと思う…」


「何度でも話すよ。貴女と一緒になりたいから」




嬉しいことを言ってくれる…


けれど、もう…




「父も母も、私と貴方の仲を良く思ってないし…」


「分かってる。でも、何もしないよりは…」




雪の黒い瞳が、私を捉える。


彼の澄んだ美しい瞳に、私が映る。



でも私は彼の視線を逃れるように、背を向けた。





「私には許嫁がいるそうなの…だから、父と母は貴方を認めない…」






名しか知らない許嫁。


顔も見たことない許嫁。



だが、家柄が良く、父と母は彼のことをとても気にいっていた。





「俺じゃ…ダメなんだね…売れない小説家の俺じゃ…」





雪の悲しみに満ちた声。


その声に、胸が締め付けられる。

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